ジョブ型雇用は日本で定着するのか――「日本的ジョブ型」の現在地

人生100年時代
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日本企業で「ジョブ型雇用」が議論されるようになってから数年が経ちました。
2020年前後には、多くの企業が導入を検討し、日本の人事制度が大きく変わるのではないかという期待もありました。

しかし現在の状況を見ると、ジョブ型雇用は急速に普及したとは言い難く、制度の導入や効果については評価が分かれています。むしろ日本企業では、従来型の雇用慣行と組み合わせた「日本的ジョブ型」ともいえる形に落ち着きつつあります。

本稿では、日本企業におけるジョブ型雇用の導入状況と、その現実について整理します。


ジョブ型雇用とは何か

ジョブ型雇用とは、本来は職務内容を明確に定めた「職務記述書(ジョブディスクリプション)」に基づいて従業員を雇用する制度を指します。

企業は、
・どのような職務を担当するのか
・どのようなスキルが必要か
・どの程度の責任を負うのか

といった内容を明確に定め、その職務に対して人材を採用します。

この仕組みは欧米では一般的であり、企業の人事管理は「職務」を中心に構築されています。
これに対して日本企業では、長く「人」に着目した人事管理が中心でした。新卒一括採用で人材を採り、配置転換を繰り返しながら育成するという仕組みです。

ジョブ型雇用への転換とは、単に職務記述書を導入するだけではありません。
採用、人材育成、配置転換、評価、処遇など、人事制度全体を職務中心に組み替える大きな改革を意味します。


導入は進んだのか

2020年前後には、多くの企業がジョブ型雇用の導入を検討しました。

ある調査では、300人以上の企業において
・導入済み 18%
・導入検討 約40%

となり、半数以上が導入に前向きでした。

しかしその後の調査では状況がやや変化しています。
2025年の調査では

・導入済み 約29%
・導入予定 約11%

となり、導入に積極的な企業の割合は約40%にとどまりました。

導入企業は増えているものの、制度への関心はやや低下しているとも解釈できます。

企業の中には、自社の業種や戦略にはジョブ型人事が適さないと判断し、導入しないという選択をするケースも増えています。


多くは「ハイブリッド型」

実際に導入されている制度を見ると、欧米型のジョブ型とは大きく異なります。

多くの企業では

・賃金は職務価値に応じて決定
・しかし新卒採用は継続
・異動も一定程度実施

というように、日本型雇用の仕組みを残した制度になっています。

このような制度は「日本的ジョブ型」とも呼ばれます。
完全なジョブ型ではなく、日本企業の慣行と組み合わせたハイブリッド型の人事制度です。

背景には次のような要因があります。

・労働法制
・労働組合との関係
・従業員の雇用意識
・新卒採用中心の人材市場

これらの要因により、日本企業が欧米型のジョブ型へ全面的に移行することは容易ではありません。


期待された成果は出ているのか

ジョブ型雇用には次のような効果が期待されていました。

・専門人材の活用
・生産性の向上
・役割意識の明確化

しかし実際の調査を見ると、成果は必ずしも明確ではありません。

ある調査では

・十分に機能していない 約43%
・機能している 約27%

という結果が出ています。

一方で、次のような効果は確認されています。

・職務内容の明確化
・専門スキルの活用
・役割意識の強化

しかし同時に、次の課題も指摘されています。

・異動やキャリアパスの設計が難しい
・他の職種のスキルが身につきにくい

ジョブ型制度は専門性を高める一方で、柔軟な人材配置や長期育成との相性が必ずしも良くない可能性があります。


働き手の意識の変化

働き手の意識にも興味深い変化があります。

調査では、ジョブ型雇用に

・賛成
・どちらかといえば賛成

と答えた割合は約53%でした。

ただし前年の調査では約64%であり、支持率は低下しています。

また年齢別に見ると、若い世代ほど支持率が高い傾向があります。

若い世代は

・自分のキャリアを主体的に選びたい
・専門スキルを活かしたい
・会社より仕事の内容を重視する

といった価値観を持つ傾向があり、ジョブ型雇用を「キャリア自律」を実現する制度として評価していると考えられます。


結論

日本企業におけるジョブ型雇用は、急速に普及したとは言い難い状況です。
また導入された制度も、欧米型のジョブ型ではなく、日本型雇用とのハイブリッド型に落ち着くケースが多く見られます。

企業側は制度改革の難しさを認識しつつあり、導入への熱意はやや落ち着いてきています。一方で働き手の側は一定の関心を持ちながらも、制度への期待はやや冷静になりつつあります。

ジョブ型雇用は、人材の専門性や生産性を高める制度として期待されてきました。
しかし日本企業の組織や雇用慣行の中で、その目的をどのように実現していくのかは、まだ模索が続いている段階といえるでしょう。

今後は制度の形式だけでなく、働き方やキャリア形成のあり方を含めた議論が求められます。


参考

日本経済新聞
2026年3月9日朝刊
守島基博「ジョブ型雇用の現在地(下)」経済教室

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