繰越欠損金がある会社は役員借入金をどう整理するか 債務免除との組み合わせ

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多額の役員借入金を抱えている会社が、その解消方法として債務免除を検討する場合、重要になるのが「繰越欠損金」です。

経営者が役員借入金の返済を免除すれば、会社は現金を支出することなく負債を減らすことができます。

その一方で、会社には債務免除益が発生します。

債務免除益によって法人税負担が増える可能性があるため、役員借入金を整理するときには、会社にどれだけ繰越欠損金が残っているのかを確認することが重要です。

資料でも、債務免除を行う場合には、繰越欠損金があるうちに実施することが考えられると説明されています。

繰越欠損金とは何か

会社が赤字になった場合、その赤字が必ずその事業年度だけで終わるとは限りません。

税務上の一定の要件を満たせば、その欠損金を将来の所得と相殺できる制度があります。

これが繰越欠損金です。

資料の図表2では、赤字を最大10年間繰り越し、将来の黒字と相殺できる税務上の制度として説明されています。

例えば、ある事業年度に大きな赤字が発生し、その後の事業年度に利益が出た場合、繰り越していた欠損金を利用することで、課税対象となる所得を抑えられる場合があります。

赤字会社にとって、将来の税負担を考えるうえで重要な存在です。

役員借入金の債務免除では利益が発生する

役員借入金と繰越欠損金が関係する理由は、債務免除によって会社側に利益が発生するからです。

例えば、社長が会社へ3,000万円を貸しているとします。

社長が、

「この3,000万円は返してもらわなくてよい」

として債務免除を行えば、会社の役員借入金3,000万円はなくなります。

会社から現金を支払う必要もありません。

しかし、会社から見れば、本来返済しなければならなかった3,000万円を返済しなくてもよくなったことになります。

そのため、資料では債務免除益という特別利益が発生すると説明しています。

債務免除益が税負担につながる

債務免除をすると負債が減りますから、財務改善という面では大きな効果があります。

しかし、債務免除益が発生すれば、その利益が会社の税負担に影響する可能性があります。

ここで注意したいのは、債務免除によって会社に現金が入ってくるわけではないことです。

例えば3,000万円の債務免除を受けても、銀行口座に3,000万円が振り込まれるわけではありません。

帳簿上の役員借入金がなくなるだけです。

それでも債務免除益によって税負担が発生すれば、税金については現金で納付しなければなりません。

財務状態は改善したものの、納税によって資金繰りが苦しくなるということも考える必要があります。

そこで繰越欠損金が重要になる

会社に利用できる繰越欠損金があれば、債務免除益によって生じた利益と相殺できる場合があります。

この点が、役員借入金を債務免除するタイミングを考えるうえで重要になります。

資料では、債務免除によって法人税額が大幅に増加する場合があるため、繰越欠損金があるうちに実施した方がよいと説明しています。

つまり、役員借入金について債務免除を考えるのであれば、

役員借入金はいくらあるのか。

繰越欠損金はいくら残っているのか。

債務免除益はいくら発生するのか。

こうした数字を合わせて考える必要があります。

黒字化すると繰越欠損金は減っていく

役員借入金が多額にある会社では、過去に赤字が続いていたケースも考えられます。

会社が赤字の間は、経営者が個人資金を投入して事業を継続します。

その結果、役員借入金が増えていきます。

一方、税務上は赤字による繰越欠損金が蓄積されることがあります。

その後、会社の業績が改善して黒字になれば、繰越欠損金は将来の所得との相殺に使われていきます。

つまり、黒字経営が続けば、利用できる繰越欠損金が減少していくことがあります。

「会社が十分に黒字になってから役員借入金を整理しよう」

と考えているうちに、債務免除益と相殺できる繰越欠損金が少なくなっている可能性があります。

資料の図表から考える

資料の図表2では、繰越欠損金による控除のイメージが示されています。

2026年9月期に1億円の赤字が発生し、その後、2027年9月期に3,000万円、2028年9月期に1億5,000万円の利益が出る例です。

2027年9月期の3,000万円の利益については、繰越欠損金3,000万円を控除することで、控除後所得は0になります。

続く2028年9月期には、残っている繰越欠損金7,000万円を利益1億5,000万円から控除し、控除後所得が8,000万円になる例が示されています。

この図表からも分かるように、繰越欠損金は黒字と相殺されることで減っていきます。

役員借入金の債務免除を考えるのであれば、繰越欠損金がどの程度残っている時点で実施するのかが重要になります。

債務免除は財務状態も改善させる

繰越欠損金との組み合わせだけでなく、債務免除そのものの財務改善効果も考えておく必要があります。

例えば3,000万円の役員借入金について債務免除を受ければ、会社の負債は3,000万円減少します。

通常の返済であれば、負債が減る一方で現預金も減少します。

しかし、債務免除では会社の現預金を減らす必要がありません。

資料でも、債務免除によって、その分だけ純資産額や自己資本比率を大幅に改善する効果があるとしています。

特に債務超過の会社では、大きな効果が期待できます。

すべての役員借入金を一度に整理する必要はない

役員借入金が5,000万円あるからといって、必ず5,000万円すべてについて債務免除しなければならないわけではありません。

重要なのは、会社の状況に合わせて整理方法を考えることです。

例えば、会社に返済できるだけの資金がある部分については経営者へ返済し、それ以外について債務免除を検討することも考えられます。

また、債務免除を検討するときには、利用できる繰越欠損金の状況を確認する必要があります。

役員借入金の残高だけを見て一律に判断するのではなく、会社の財務と税務の両面を見ることが重要です。

繰越欠損金があるから急いで債務免除するわけではない

一方で、繰越欠損金があるという理由だけで債務免除を急ぐべきでもありません。

役員借入金については、金融機関が実態として自己資本に近いものとして評価している場合があります。

経営者が返済を当面求めず、安定的に会社へ資金を提供しているのであれば、必ずしも直ちに解消しなければならないとは限りません。

まず確認したいのは、なぜ役員借入金を整理する必要があるのかという目的です。

財務状態を改善したいのか。

銀行からの評価を改善したいのか。

経営者への返済関係を整理したいのか。

目的によって適切な方法は変わります。

役員借入金の整理は時間軸で考える

役員借入金の整理では、現在の貸借対照表だけを見るのではなく、数年間の時間軸で考えることも大切です。

今後どの程度の利益が見込まれるのか。

繰越欠損金はどのように減っていくのか。

会社にはどれだけキャッシュが蓄積されるのか。

経営者へどの程度返済できるようになるのか。

こうした将来の数字を考えながら、返済と債務免除を検討する必要があります。

特に債務免除は、実行した事業年度の利益や税負担に大きな影響を与える可能性があります。

だからこそ、実行するタイミングが重要になります。

根本的には役員借入金を増やさない経営へ

役員借入金と繰越欠損金をうまく組み合わせて整理しても、その後再び役員借入金が増えてしまえば根本的な解決にはなりません。

資料では、役員借入金に依存しない経営を実現するためには、会社全体で利益を出し、それに見合ったキャッシュを増やすことが不可欠だとしています。

また、資金不足になる可能性がある場合には、数か月前から取引銀行へ相談することも重要だとしています。

役員借入金の整理と同時に、なぜ経営者の個人資金が必要になったのかを振り返る必要があります。

結論

役員借入金を債務免除によって整理する場合、重要になるのが繰越欠損金です。

債務免除を行えば、会社は現預金を減らさずに役員借入金を減らすことができ、純資産や自己資本比率の改善も期待できます。

その一方で、会社には債務免除益が発生します。

その結果、法人税負担が大幅に増える可能性があります。

利用できる繰越欠損金があれば、債務免除益による利益と相殺できる場合があるため、役員借入金を整理するタイミングを考える重要な材料になります。

ただし、繰越欠損金があるから債務免除をすればよいという単純な話ではありません。

役員借入金の残高、繰越欠損金、今後の利益、会社の資金繰り、金融機関の評価を合わせて考える必要があります。

役員借入金の整理は、負債だけを見るのではなく、会社の財務と税務を同時に見ることが重要です。

参考

企業実務 2026年10月号 役員借入金の発生理由と解消方法について

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