役員貸付金は、会社が社長などの役員に貸しているお金です。
貸借対照表では資産に計上されますが、返済されない限り会社の現金は戻ってきません。
そのため、役員貸付金が発生している会社では、残高をこれ以上増やさないだけでなく、どのように返済していくかを考える必要があります。
参考記事では、経営者への貸付金を減らす方法として、経営者の個人資金から返済する方法、役員報酬から返済する方法、役員退職金と相殺する方法を挙げています。
まず新しい貸付金を増やさない
役員貸付金を解消するために最初に必要なのは、新たな貸付金を発生させないことです。
毎月10万円を返済していても、同じ月に会社から社長へ10万円の新しい貸付けが発生していれば、残高は減りません。
参考記事でも、貸付金は発生させないこと、すでに発生しているならそれ以上残高を増やさないことが重要だとしています。
つまり、返済方法を考える前に、お金の流れそのものを止める必要があります。
会社のお金と社長個人のお金を明確に分けることが出発点になります。
個人資金から返済する
参考記事が挙げている方法の1つが、経営者の個人資金から返済する方法です。
たとえば、会社から社長への貸付金が300万円あるとします。
社長が個人の預金から会社へ300万円を返せば、会社の現預金が300万円増え、役員貸付金が300万円減ります。
全額を一度に返済できなければ、少しずつ返済していくことになります。
重要なのは、実際に会社へお金を戻すことです。
帳簿上だけ貸付金を減らすのではなく、経営者から会社へ資金が戻ることで、会社の資金繰りも改善します。
役員報酬から返済する
経営者個人にまとまった資金がない場合には、役員報酬から返済する方法もあります。
参考記事でも、経営者への貸付金を減らす方法として役員報酬からの返済を挙げています。
たとえば、毎月受け取る役員報酬の中から一定額を返済に充てていく考え方です。
貸付金が多額であれば、一度に全額を返済することは難しいでしょう。
そこで毎月一定額を返済し、時間をかけて残高を減らしていきます。
この方法では、返済が長期間に及ぶ可能性があります。
その間に新しい貸付金が発生してしまえば、解消がさらに遠のきます。
だからこそ、返済と同時に新規の貸付けを止めることが重要になります。
多額になると早期解消は難しい
役員貸付金は、少額のうちであれば比較的対応しやすいものです。
しかし、長期間にわたって貸付けを繰り返し、残高が大きくなると問題は深刻になります。
参考記事では、経営者への貸付金について、個人資金からの返済や役員報酬からの返済などで残高を減らすことはできるものの、早期解消は容易ではないと説明しています。
たとえば1,000万円の役員貸付金を毎月10万円ずつ返済するとします。
単純に考えても、完済までには100か月かかります。
8年以上です。
貸付金が多額になるほど、解消まで長期間を要することが分かります。
役員退職金との相殺という方法もある
参考記事では、もう1つの方法として役員退職金との相殺を挙げています。
将来、経営者が役員を退職し、会社から役員退職金を受け取ることになった場合に、貸付金との相殺を考える方法です。
ただし、この方法は将来の退職時まで貸付金が残ることを前提とした対応になります。
現在の会社の資金繰りをすぐに改善する方法ではありません。
参考記事でも、これらの方法はどれも経営者の協力が不可欠であり、多額の貸付金では早期の解消が困難だとしています。
したがって、退職金による相殺だけを前提として貸付金を放置するのではなく、現在できる返済を進めることが重要です。
返済されると会社の資金繰りも改善する
役員貸付金を返済する意味は、貸借対照表をきれいにすることだけではありません。
貸付金が返済されれば、会社に現金が戻ります。
その現金は仕入れや給与、税金、借入金の返済などに使うことができます。
参考記事では、貸付金が返済されず計上されたままになると、その分だけ会社の資金繰りが悪化すると説明しています。
逆に考えれば、役員貸付金を回収することは、会社の資金を取り戻すことでもあります。
貸付金残高を減らすことと資金繰りの改善は、別々の問題ではないのです。
銀行への説明も重要になる
多額の役員貸付金がある場合、銀行からその内容について説明を求められる可能性があります。
そのときに重要なのは、単に「いずれ返します」と説明することではありません。
なぜ貸付金が発生したのか。
現在の残高はいくらなのか。
これ以上増えない仕組みになっているのか。
どのように残高を減らしていくのか。
こうした点を整理しておく必要があります。
参考記事では、銀行に対して決算書や試算表などの財務情報を適時適切に開示することの重要性についても説明しています。
役員貸付金についても、発生原因と今後の対応を明確にすることが大切です。
日常の経理管理から見直す
役員貸付金の返済を進めても、発生原因が残っていれば再び貸付金が増える可能性があります。
特に注意したいのが現金管理です。
参考記事では、日常の経理業務に問題があれば見直すことや、現金管理を減らすことを対応策として挙げています。
会社の預金から引き出した現金を社長個人の財布で管理するような状態では、会社と個人のお金が混ざりやすくなります。
貸付金の解消は、過去の残高を返済するだけでは終わりません。
新しい貸付金を発生させない経理体制をつくるところまで考える必要があります。
結論
役員貸付金を解消する方法として、参考記事では経営者個人の資金から返済する方法、役員報酬から返済する方法、役員退職金と相殺する方法を挙げています。
しかし、貸付金が多額になるほど早期解消は難しくなります。
だからこそ、最も重要なのは新しい貸付金を発生させないことです。
すでに貸付金があるなら、それ以上残高を増やさず、経営者が返済できる金額を使って着実に減らしていく必要があります。
役員貸付金の返済は、単に決算書の勘定科目を減らす作業ではありません。
会社の外に出ていた資金を会社へ戻し、資金繰りを改善する取り組みでもあります。
発生防止と返済を同時に進めることが、役員貸付金を解消する基本になります。
参考
企業実務 2026年9月号 貸付金の発生に注意を