会社の倉庫には、商品や原材料だけでなく、文房具、工具、消耗品、交換部品など、さまざまな物が保管されています。
ところが、倉庫に必要な物があるにもかかわらず、同じ物を新しく購入してしまうことがあります。
担当者が確認しなかったからという単純な問題とは限りません。
元の記事では、必要な物であっても、それが何なのか分からなければ探すのに時間がかかるだけでなく、その存在を忘れてしまい、結局新しい物を調達することになりかねないと指摘しています。
つまり、物を持っているだけでは十分ではありません。
何を持っているのかが分かり、必要なときに取り出せる状態になって初めて、在庫は役に立つのです。
在庫の存在を忘れるのはなぜか
倉庫に物を入れたときには、担当者も何を保管したのか覚えています。
しかし、時間がたつにつれて記憶は薄れていきます。
特に段ボール箱などに入れ、中身を表示しないまま保管すると、外から見ただけでは何が入っているのか分かりません。
箱が増えれば、以前購入した物がどこにあるのかも分からなくなります。
さらに担当者が異動したり退職したりすれば、保管した経緯を知る人がいなくなることもあります。
その結果、会社としては在庫を持っているのに、実際に仕事をする人から見ると存在しないのと同じ状態になってしまいます。
見つからない在庫は使えない
在庫管理では、数量だけに注目しがちです。
何個持っているのか。
いくら分持っているのか。
もちろん、これらも重要です。
しかし、実務では必要なときに見つけられるかという視点も欠かせません。
たとえば、交換用の部品が倉庫のどこかに一個あるとします。
しかし、どこにあるか誰も分からず、探しても見つからない。
急いで交換する必要があれば、新しい部品を購入することになります。
帳簿上は在庫が一個あっても、必要なときに取り出せなければ、その在庫を十分に活用できているとはいえません。
倉庫管理では、保管することと取り出せることを一体で考える必要があります。
重複購入は小さなムダに見えやすい
同じ物を二度購入しても、一回当たりの金額が小さければ大きな問題には見えないかもしれません。
しかし、会社全体で同じことが繰り返されれば、支出は積み重なります。
さらに、新しく購入した物によって倉庫の在庫が増えます。
在庫が増えれば、倉庫がさらに分かりにくくなり、別の物も見つけにくくなる可能性があります。
見つからない。
新しく買う。
物が増える。
さらに見つけにくくなる。
この循環が続けば、倉庫には必要以上の物が蓄積していきます。
問題は一回の重複購入だけではなく、物品管理そのものが悪循環に陥ることなのです。
表示するだけでも重複購入を減らせる
この問題を防ぐために、元の記事が提案しているのが表示です。
倉庫内の必要な物には概要を表示し、段ボール箱に入れている物については、箱の表面に中身を書いておきます。
非常に単純な方法ですが、重要な意味があります。
箱を開けなくても中身が分かる。
必要な物が倉庫にあることが分かる。
探す時間を短縮できる。
こうした状態になれば、新しく購入する前に既存在庫を利用しやすくなります。
表示は整理整頓のためだけではなく、不要な支出を防ぐための物品管理でもあるのです。
定位置を決めることも重要
表示とあわせて考えたいのが、物を置く場所です。
必要な物に名前が書かれていても、毎回違う場所に置かれていたのでは探す手間が残ります。
このため、よく使う物については置く場所を決めておくことが重要です。
使った後は同じ場所へ戻す。
新しく購入した物も決められた場所に置く。
こうした管理を続ければ、担当者が変わっても探しやすくなります。
元の記事のチェックリストでも、必要な物への表示だけでなく、すべての物品にアクセスするための通路を確保することなど、必要な物を利用しやすくする考え方が示されています。
倉庫は、物を詰め込む場所ではありません。
必要な物を必要なときに取り出せる場所にする必要があります。
在庫を人の記憶だけで管理しない
物品管理で避けたいのは、特定の担当者だけが倉庫の状態を把握していることです。
あの人に聞けば分かる。
どこに何があるかは担当者が覚えている。
この状態では、その人が休んだだけでも仕事が止まる可能性があります。
表示や置き場所のルールを整える目的は、担当者の記憶を否定することではありません。
人が覚えていなくても分かる仕組みをつくることです。
誰でも見れば分かる。
誰でも探せる。
誰でも元の場所へ戻せる。
この状態に近づけることで、倉庫管理の属人化を減らすことができます。
定期的に倉庫を確認する
表示や置き場所を決めても、その状態が永遠に続くとは限りません。
新しい物が入れば、表示のない物が増えることがあります。
忙しいと、とりあえず空いている場所へ置いてしまうこともあります。
元の記事では、倉庫の状況を月に一回以上チェックすることを確認項目として挙げています。
表示がなくなっていないか。
必要な物が決めた場所にあるか。
長期間動いていない物が増えていないか。
こうした点を定期的に確認することで、物品管理の状態を維持しやすくなります。
結論
会社が物を持っていることと、その物を有効に使えることは同じではありません。
倉庫に在庫があっても、その存在を忘れていたり、どこにあるか分からなかったりすれば、新しく購入することになりかねません。
重複購入を防ぐためには、特別に複雑な仕組みだけが必要なのではありません。
必要な物に品名や用途を表示する。
段ボール箱には中身を書く。
置く場所を決める。
そして定期的に倉庫の状態を確認する。
こうした基本的な管理が重要です。
物品管理の目的は、倉庫にたくさんの物を保管することではありません。
会社がすでに持っている物を見える状態にし、必要なときにきちんと使えるようにすることなのです。
参考
企業実務 2026年9月号 倉庫の環境整備