物流業界ではドライバーの確保が重要な課題になっています。
少子高齢化によって働く世代が減少するなか、外国人材への期待も高まっています。
外国人ドライバーが増えれば、人手不足を補う力になる可能性があります。
しかし、外国人を採用すればそれだけで物流の人手不足が解決するわけではありません。
自動車を安全に運転するには、日本の免許制度、交通ルール、道路環境について十分に理解する必要があります。
特に職業ドライバーは長時間、長距離を運転する可能性があるため、安全教育の重要性はさらに高くなります。
外国人ドライバーの受け入れと交通安全をどのように両立させるのかが、今後の大きな課題になります。
物流はドライバーがいなければ成り立たない
私たちの生活は物流によって支えられています。
スーパーやコンビニエンスストアへ商品を運ぶ。
工場へ原材料や部品を運ぶ。
インターネット通販の商品を家庭へ届ける。
医薬品などを必要な場所へ運ぶ。
どれだけ物流システムがデジタル化されても、最終的に荷物を運ぶためには人と車両が必要になる場面が多くあります。
ドライバー不足は物流会社だけの問題ではありません。
商品やサービスを利用する社会全体に影響する問題です。
日本人ドライバーだけで確保することが難しくなる
日本では少子高齢化が進んでいます。
若い世代が減れば、さまざまな産業で人材確保が難しくなります。
運送業も例外ではありません。
しかもドライバーには運転技能が必要です。
車両によっては普通免許だけではなく、業務に対応した免許も必要になります。
人を採用すればすぐに仕事を任せられる職種とは限りません。
今後も物流需要を維持するのであれば、国内の人材だけではなく外国人材を含めて担い手を確保する必要性が高まる可能性があります。
外国人材は重要な担い手になり得る
外国人が職業ドライバーとして働ける環境が整えば、物流業界にとって人材確保の選択肢が広がります。
人口が減少する日本だけで人材を探すのではなく、より広い範囲から働き手を確保できるからです。
外国ですでに運転経験を持つ人であれば、その経験を生かせる場合もあります。
ただし、運転できることと、日本で職業ドライバーとして安全に働けることは同じではありません。
ここに運転教育の重要性があります。
日本の交通ルールを学ぶ必要がある
日本では左側通行です。
道路標識や路面表示があります。
狭い生活道路も多くあります。
歩行者や自転車と近い距離を走る場面もあります。
踏切もあります。
外国で長年運転していたとしても、母国の交通制度や道路環境が日本と同じとは限りません。
運転操作に慣れている人ほど、それまで身に付けた習慣が残っている場合もあります。
日本で安全に運転するためには、日本の交通環境に合わせた学び直しが必要になります。
職業ドライバーは一般の運転者とは条件が違う
日常生活で自動車を使う人と、仕事として運転する人では条件が異なります。
職業ドライバーは長時間運転することがあります。
毎日運転する場合もあります。
知らない地域を走ることもあります。
時間を意識しながら荷物を運ぶ場合もあります。
大型の車両を扱う場合には、普通乗用車とは車両感覚も異なります。
事故が起きた場合の影響も大きくなる可能性があります。
そのため、外国人職業ドライバーについては免許を取得できるかどうかだけでなく、業務として安全に運転できるかという視点が必要です。
免許取得だけで教育を終わらせない
運転免許は、安全に運転するために必要な知識や技能を確認する重要な制度です。
しかし、免許を取得した時点ですべての教育が終了するわけではありません。
実際の業務では、さまざまな道路状況に対応しなければなりません。
雨や雪のなかを走ることもあります。
夜間運転もあります。
荷物を積んだ状態で運転する場合もあります。
仕事として運転する以上、継続的な安全教育が必要です。
外国人ドライバーについても、採用時だけではなく定期的に研修や技能確認を行う仕組みが重要になります。
教習所が人材育成の拠点になる
そこで重要になるのが自動車教習所です。
教習所には運転を教える指導員がいます。
実際に自動車を運転できる教習コースがあります。
交通安全教育のノウハウもあります。
外国人ドライバーが増えれば、教習所が企業と連携して職業ドライバーを育成する役割を担うことが考えられます。
日本の交通ルールを教える。
実際の運転技能を確認する。
苦手な部分を再教育する。
定期的な安全運転研修を行う。
教習所の役割が個人の免許取得から企業の人材育成へ広がる可能性があります。
物流会社が教習所を持つ意味も大きくなる
参考記事では、千葉県市原市のSBSドライビングスクール姉崎が紹介されています。
同校は2019年に物流大手のSBSホールディングスの傘下に入りました。
物流会社にとって教習所をグループ内に持つことには、単なる事業多角化とは違う意味があります。
物流に必要な運転人材を育てる。
安全運転教育のノウハウを蓄積する。
外国人材の育成にも活用する。
こうした機能を持つことができるからです。
人手不足が深刻になるほど、教習所が企業の人材戦略と結び付く可能性があります。
言葉の壁にも対応する必要がある
外国人への安全教育では、言葉の問題もあります。
交通ルールを正確に理解できなければ、安全運転はできません。
しかし、単純に教材を外国語へ翻訳すれば十分というわけでもありません。
専門的な交通用語を分かりやすく説明する必要があります。
実際の道路状況を動画などで示す方法も考えられます。
オンライン教材を利用して、来日前から日本の交通ルールを学んでもらうこともできます。
対面教育とデジタル教育を組み合わせることで、効率的な安全教育が可能になります。
外国人だから事故が多いと考えてはいけない
外国人ドライバーの受け入れを考える際には、国籍そのものを安全性の問題と結び付けるべきではありません。
重要なのは、その人が日本の交通ルールや道路環境について十分な教育を受けているかどうかです。
日本人であっても、十分な安全確認をせずに運転すれば事故を起こします。
逆に外国人でも、日本の交通制度を理解し、十分な訓練を受ければ安全に運転することができます。
必要なのは、国籍で判断することではなく、必要な知識と技能を確認できる仕組みを整えることです。
企業にも教育責任が求められる
外国人ドライバーの安全確保を本人だけの責任にすることも適切ではありません。
雇用する企業にも重要な役割があります。
十分な研修期間を設ける。
運転技能を確認する。
無理な運行スケジュールを組まない。
事故や違反があれば再教育する。
日本語能力に応じた説明方法を用意する。
こうした職場側の仕組みが必要です。
人手不足だからすぐに運転業務へ配置するという方法では、安全性を確保することが難しくなります。
人手不足対策と安全対策は同時に進める
物流の人手不足が深刻だからといって、安全教育の水準を下げることはできません。
むしろ外国人材の受け入れを広げるのであれば、教育体制を同時に強化する必要があります。
外国人を受け入れる。
教習所で日本の交通環境を学ぶ。
企業で実務研修を行う。
定期的に技能や安全意識を確認する。
こうした一連の仕組みが必要です。
人材政策と交通安全政策を別々に考えるのではなく、一体として設計することが重要になります。
外国人材だけで人手不足が解決するわけではない
外国人ドライバーは物流の重要な担い手になる可能性があります。
しかし、外国人材だけで人手不足のすべてを解決できるとは限りません。
物流の効率化も必要です。
荷待ち時間などを減らす取り組みも重要です。
デジタル技術を使って配送を効率化することも考えられます。
ドライバーが働き続けやすい労働環境をつくる必要もあります。
外国人材の活用は、人手不足対策の1つとして位置付けることが重要です。
結論
外国人ドライバーは、人口減少が進む日本の物流を支える重要な担い手になる可能性があります。
しかし、外国人を採用するだけで物流の人手不足が解決するわけではありません。
日本の交通ルール。
道路環境。
運転習慣。
職業ドライバーとして必要な安全意識。
これらを体系的に学ぶ仕組みが必要です。
さらに免許取得時だけではなく、採用後も継続的な研修や技能確認を行うことが重要になります。
その教育拠点として、自動車教習所が新しい役割を担う可能性があります。
若者の免許取得者が減少する教習所と、ドライバー不足に直面する物流業界。
一見すると別々の問題ですが、外国人ドライバーの育成という分野では両者を結び付けることができます。
これから重要になるのは、人手を増やすことだけではありません。
新しい担い手が安全に働ける教育の仕組みまで整えて、初めて外国人材を物流の持続可能性につなげることができるのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月28日 「車免許『要らない』 消えゆく教習所 若者の車離れ鮮明、シニアと外国人中心に」
日本経済新聞 2026年9月28日 「高齢者向け再教育の拡充を」