親が長年利用してきたリゾート会員権を相続することがあります。
子どものころから家族旅行で利用してきた施設なら、そのまま引き継ぎたいと考える人もいるでしょう。
一方、自分は旅行をほとんどしない、施設が自宅から遠い、年間の維持費を負担したくないという人もいます。
その場合に考えるのが、リゾート会員権だけを放棄できないかという問題です。
しかし、相続では必要な財産だけを受け取り、不要な財産だけを自由に相続放棄するという仕組みにはなっていません。
維持費のかかるリゾート会員権を持つ家庭では、相続が発生する前から出口を考えておくことが重要です。
相続放棄は特定の財産だけを選ぶ制度ではない
相続放棄という言葉から、相続したくない財産を個別に選んで放棄できるように感じるかもしれません。
しかし、相続放棄は原則として相続人としての立場そのものを放棄する手続きです。
例えば親に預貯金3,000万円とリゾート会員権があったとします。
預貯金3,000万円は相続するが、維持費のかかるリゾート会員権だけは相続放棄するという使い方はできません。
リゾート会員権だけが不要だからという理由で、相続放棄を簡単に選べるわけではないのです。
相続した後に手放す方法を考える
相続そのものを受け入れるのであれば、不要なリゾート会員権については相続後に処分する方法を考えることになります。
代表的なのが売却です。
中古市場で取引されている会員権なら、仲介業者などを通じて購入希望者を探すことができます。
ただし、売却できる価格は購入時の価格とは限りません。
親が500万円で購入した会員権でも、相続時には100万円になっているかもしれません。
逆に人気施設なら価格が維持されている可能性もあります。
まず現在の市場価値を確認する必要があります。
売りたいと思ってもすぐ売れるとは限らない
リゾート会員権は株式のように、売却注文を出せばすぐ現金化できるとは限りません。
買い手が必要だからです。
人気のある施設なら比較的購入希望者を見つけやすいかもしれません。
一方、築年数が経過した施設や需要の少ない会員権では、買い手がなかなか見つからない可能性があります。
売却価格を下げても売れないケースも考えられます。
その間も会員権を保有している以上、年会費などの負担が続く可能性があります。
相続人にとっては、いくらで売れるかだけでなく、どの程度の期間で売却できそうかも重要になります。
売却まで年会費などの負担が続く
例えば年間10万円の固定費が必要な会員権を相続したとします。
すぐに売却できれば負担は限定的です。
しかし買い手が見つかるまで3年間かかれば、その間に30万円の固定費が発生する可能性があります。
共有制なら固定資産税などが関係する場合もあります。
相続人が一度も施設を利用していなくても、保有しているだけで費用が発生することがあるのです。
リゾート会員権が相続人にとって負担になる最大の理由の1つです。
共有制では不動産の持ち分もある
特に注意したいのが共有制のリゾート会員権です。
共有制ではホテルなどの土地や建物について一定の持ち分を所有します。
つまり、会員権を相続することは不動産の権利を引き継ぐことでもあります。
単に会員証を返却すれば権利関係がなくなるとは限りません。
不動産の所有権が関係する以上、手放す場合にも適切な権利移転の手続きが必要になります。
共有制の会員権を相続した場合には、ホテルを利用する予定がないから放置しておけばよいというものではありません。
預託制でも契約内容の確認が必要になる
預託制の場合は、共有制のような不動産の持ち分を所有する仕組みではありません。
しかし、だからといって自由に会員資格を放棄できるとは限りません。
退会できるのか。
預託金はどうなるのか。
名義変更は可能なのか。
退会や譲渡に費用が必要なのか。
こうした条件を契約や会員規約で確認する必要があります。
同じリゾート会員権という名称でも、運営会社や商品によって仕組みが異なるためです。
無料でも誰かに譲ればよいとは限らない
中古価格がほとんど付かない場合には、無料でもよいから誰かに譲りたいと考えるかもしれません。
しかし、第三者へ譲渡する場合には名義変更などの手続きが必要になることがあります。
名義変更料が高ければ、無料で会員権を受け取る側にも負担が生じます。
さらに年間の維持費も引き継ぐことになります。
会員権そのものを無料にしても、受け取る人にとって必ず魅力的になるわけではありません。
中古価格が低い会員権ほど、売買価格ではなく将来の固定費が問題になることがあります。
親が元気なうちに現在価格を調べる
相続人が会員権を利用する予定がないのであれば、親が元気なうちに現在の中古価格を調べておく方法があります。
例えば親が80歳になり、旅行する回数が大きく減っているとします。
子どもも会員権を引き継ぐ予定がありません。
その場合、相続まで保有し続けるより、生前に売却した方がよい場合もあります。
売却代金を現金として保有すれば、相続人にとっても財産の管理が分かりやすくなります。
会員権をいつまで保有するのかを家族で話し合っておくことが重要です。
思い出だけで残すと次世代の負担になることもある
リゾート会員権には家族の思い出が詰まっていることがあります。
参考記事でも、長年利用した会員権を子や孫へ継ぎたいという需要が紹介されています。
しかし、思い出を引き継ぐことと、会員権そのものを引き継ぐことは分けて考えることも必要です。
親にとって毎年訪れた大切な施設でも、子どもは別の場所へ旅行したいかもしれません。
親が負担できた年会費でも、子どもにとっては不要な固定費になる可能性があります。
財産を残す側の満足ではなく、受け取る側が実際に使うかを確認することが重要です。
会員権の資料をまとめておく
相続人が最も困るのは、親がどのような会員権を持っているのか分からないケースです。
共有制なのか預託制なのか。
どの施設の会員権なのか。
年間の維持費はいくらなのか。
名義変更はどのように行うのか。
中古市場ではどの程度の価格なのか。
こうした情報を一覧にしておけば、相続後の判断がしやすくなります。
契約書や会員規約などの保管場所も家族に伝えておくとよいでしょう。
リゾート会員権も金融資産や不動産と同じように、相続財産の一覧に含めて管理することが大切です。
結論
相続したリゾート会員権が不要だからといって、その会員権だけを選んで相続放棄することは原則としてできません。
相続放棄は、特定の財産だけを選択して手放すための制度ではないからです。
相続を受け入れたうえで会員権が不要なら、売却や名義変更、契約上可能な退会などの方法を検討することになります。
その際に問題になるのが、売却するまでの年会費や管理費などです。
共有制なら不動産の持ち分や固定資産税なども関係する可能性があります。
リゾート会員権は、相続人が利用するなら価値のある財産になります。
しかし利用しない場合には、維持費を払いながら買い手を探さなければならない資産になることもあります。
だからこそ、相続が発生してから考えるのではなく、親が元気なうちに家族で話し合うことが重要です。
誰が利用するのか。
誰も利用しないならいつ売却するのか。
リゾート会員権では、残すことだけでなく、残さないという選択肢まで含めて出口を考えておく必要があります。
参考
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 <ステップアップ>リゾート、会員権で身近に ホテル代高騰で割安感
日本経済新聞 2026年9月26日朝刊 共有制、取得後に税負担