新NISAと生命保険は競合するのか 若者が保険より投資信託を選ぶ背景編

FP
緑 赤 セミナー ブログアイキャッチ - 1

若い世代の生命保険加入率が低下しています。

その背景の一つとして考えられるのが、資産形成手段の多様化です。

特に2024年に新NISAが始まってから、投資信託などを使って自分で長期的な資産形成を行う選択肢が身近になりました。

では、新NISAと生命保険は競合するのでしょうか。

両者は本来の目的が異なります。しかし、限られた家計のお金をどこへ振り向けるのかという点では、無関係ではありません。

生命保険の本来の役割は保障

生命保険の基本的な役割は、死亡や病気などによって発生する大きな経済的損失に備えることです。

例えば一家の収入を支える人が亡くなれば、残された家族の生活費や教育費などが不足する可能性があります。

こうした自分だけでは負担することが難しいリスクに備えるのが保険です。

少額の保険料を多くの契約者が負担し、実際に保険事故が発生した人へ保険金を支払います。

つまり生命保険の中心的な機能は、投資ではなく保障です。

一方の新NISAは資産形成の制度

新NISAは生命保険とは目的が異なります。

NISAは金融商品そのものではありません。

一定の条件のもとで、株式や投資信託などから得られる運用益を非課税にする制度です。

2024年から始まった新NISAでは、長期的な資産形成に利用しやすい仕組みが整えられました。

若い世代であれば、毎月一定額を投資信託などへ積み立て、長期間運用することができます。

時間を味方につけた資産形成がしやすい制度といえます。

保険と投資では目的が違う

例えば30歳の人が毎月3万円を金融商品に使えるとします。

生命保険に3万円を支払う場合と、新NISAで3万円を投資する場合では、お金の役割が異なります。

生命保険なら、加入直後に死亡した場合でも契約内容に応じた死亡保険金を受け取れる可能性があります。

投資ではそうはいきません。

投資を始めた直後では、基本的にはそれまで積み立てた資産しかありません。

一方、長期間の資産形成という観点では、低コストの投資信託などを利用して自分で運用する方法もあります。

保障が必要なのか、資産を増やしたいのか。

目的を分けて考えることが重要です。

なぜ両者が競合するのか

目的が違うにもかかわらず、新NISAと生命保険が競合する面があるのは、家計のお金には限りがあるからです。

例えば毎月の手取りから金融商品に使える金額が5万円だとします。

5万円すべてを保険料に使えば、投資に回せるお金はなくなります。

反対に5万円すべてを新NISAで積み立てれば、生命保険などの保障に回す余地が小さくなります。

実際には保障と資産形成を組み合わせることになりますが、家計全体から見れば資金配分の問題になります。

特に貯蓄性の高い生命保険については、資産形成商品との比較が起きやすくなります。

若者ほど投資を選びやすくなった

若い世代には長い運用期間があります。

例えば30歳から65歳までなら35年間あります。

短期的には株価が大きく上下しても、長期間にわたり積み立てを続けることで時間分散を図ることができます。

インターネット証券の普及によって、少額から投資信託などを購入することも容易になりました。

さらに新NISAによって運用益を非課税にできる環境も整っています。

かつて生命保険が担っていた貯蓄や資産形成の一部を、投資信託などが担えるようになったことは大きな変化です。

若年層の生命保険加入率は低下している

生命保険文化センターの調査では、世帯主が29歳以下の生命保険加入率は2024年に69.5%となっています。

2012年から約7ポイント低下しました。

30歳から34歳についても80.3%で、約9ポイント低下しています。

全年齢の89.2%を下回っています。

この低下をすべて新NISAだけで説明することはできません。

家族構成や働き方、所得環境、結婚年齢などさまざまな要因が関係します。

ただ、資産形成の選択肢が増えたことも、生保を取り巻く環境変化の一つです。

掛け捨て保険と投資を分ける考え方もある

生命保険と資産形成を完全に一体化する必要はありません。

例えば死亡保障については掛け捨て型の定期保険などで必要な保障を確保し、資産形成については新NISAを利用するという考え方があります。

保障は保障。

投資は投資。

役割を分ける方法です。

一方で、生命保険には死亡保障と貯蓄機能を組み合わせた商品もあります。

どちらが適しているかは、家族構成や必要保障額、運用期間、リスク許容度などによって異なります。

重要なのは、保険と投資を同じ目的の商品として比較しないことです。

新NISAの普及が生保運用にもつながる

興味深いのは、この家計の選択が生命保険会社の資産運用にも影響する可能性があることです。

若い人の生命保険加入が減れば、生命保険契約者全体の平均年齢は上昇します。

契約者が高齢化すれば、生命保険会社が保険金や給付金を支払うまでの平均期間も短くなる可能性があります。

すると、生保の負債デュレーションが短くなります。

負債が短くなれば、運用する資産についても20年債や30年債だけでなく、10年以下の国債を増やすことができます。

若者が新NISAで投資信託を購入するという個人の行動が、巡り巡って生命保険会社の国債運用にも関係してくるわけです。

家計のお金の流れが変わっている

かつて家計の長期資金は預貯金や生命保険などへ多く流れていました。

現在は新NISAなどを通じて、投資信託や株式へ直接流れる資金も増えています。

これは単に人気の金融商品が変わったという話ではありません。

家計から金融市場へ資金が流れる経路そのものが変化しているということです。

生命保険会社に集まれば、生保が国債などを購入します。

投資信託に集まれば、運用会社が国内外の株式や債券などを購入します。

家計がどの金融商品を選ぶかによって、最終的に資金が向かう市場も変わります。

結論

新NISAと生命保険は、本来の目的が異なります。

生命保険は死亡や病気などの大きなリスクに備える保障が中心です。

新NISAは株式や投資信託などを利用した長期的な資産形成を支援する制度です。

したがって、単純にどちらか一方を選べばよいという関係ではありません。

一方で、家計が金融商品に使えるお金には限りがあります。

特に貯蓄性保険と投資信託などの資産形成商品では、資金配分を巡る競合が起こります。

新NISAによって若い世代が自分で資産形成しやすくなったことは、生命保険会社にとって無視できない環境変化です。

そして若年層の生命保険加入が減れば、契約者の高齢化、負債デュレーションの短期化、生保の国債運用の短期化へとつながる可能性があります。

新NISAの普及は家計の資産形成を変えるだけではなく、日本の巨大な機関投資家である生命保険会社の運用行動にもつながっているのです。

参考

日本経済新聞 2026年9月25日 朝刊 生保運用、「短い国債」に食指

タイトルとURLをコピーしました