租税回避対策企画官は何をするのか 国税庁に司令塔が必要になった理由編

政策

国税庁は2027年度の機構要求で、課税部課税総括課に租税回避対策企画官を新設することを要求しています。

背景にあるのは、租税回避スキームの複雑化と巧妙化です。

特に、プロモーターが租税回避の仕組みを商品として設計し、複数の納税者に販売するケースが広がれば、一つの税務署が個別の申告を調べるだけでは全体像を把握することが難しくなります。

そこで必要になるのが、全国から情報を集め、分析し、対応方針を考える司令塔です。

租税回避対策企画官の新設要求は、税務行政が個別調査だけでなく、情報を集約してスキーム全体へ対応する方向へ進んでいることを示しています。

租税回避対策企画官はどこに置かれるのか

新設が要求されている租税回避対策企画官は、国税庁課税部課税総括課に置かれる予定です。

名称は現段階では仮称です。

さらに企画官を支えるため、課長補佐1人の増設も要求されています。

国税庁の地方組織には国税局や税務署があります。

実際の税務調査では、各地域の税務署や国税局が納税者や企業と接することになります。

一方、全国各地で確認された租税回避スキームを横断的に把握するには、中央で情報を集約する機能が必要になります。

その役割を強化しようとしているわけです。

なぜ司令塔が必要なのか

例えば、ある地域の税務調査で特殊な取引が見つかったとします。

別の地域でも、よく似た取引が見つかるかもしれません。

さらに別の地域でも同じような申告が確認される可能性があります。

それぞれを個別の案件として見ているだけでは、偶然似た取引が行われているように見えるかもしれません。

しかし情報を一カ所に集めれば、共通する契約、取引方法、関係者などが見えてくる可能性があります。

実は同じプロモーターが提供したスキームだったということも考えられます。

全国の情報を横断的に見ることで、個別の税務調査だけでは見えにくかった全体像を把握しやすくなります。

最初の仕事は情報を集めること

租税回避スキームへの対応で重要なのが情報収集です。

どのような取引が行われているのか。

どの税目に関係するのか。

同じような取引がどの程度広がっているのか。

どのような方法で納税者へ提供されているのか。

こうした情報を集めなければ、スキームの全体像を分析することはできません。

一件の税務調査から得られた情報だけで判断するのではなく、複数の情報を組み合わせることが重要になります。

次に必要なのがスキームの分析

情報を集めた後に必要になるのが分析です。

複雑な租税回避スキームでは、複数の取引が組み合わされている場合があります。

一つ一つの契約だけを見ると通常の取引に見えても、一連の取引をつなげると別の姿が見える可能性があります。

なぜこの法人を設立したのか。

なぜこの順番で資産を移したのか。

なぜ通常とは異なる契約方法を選択したのか。

結果としてどの税負担が減少したのか。

こうした点を総合的に見る必要があります。

単に申告書の数字を確認するだけではなく、その数字が生まれるまでの取引構造を理解することが重要になります。

税務署や国税局の情報を横につなぐ

税務行政では、それぞれの税務署や国税局が多くの情報を持っています。

問題は、その情報が別々に存在しているだけでは十分ではないことです。

東京で確認された取引と大阪で確認された取引が同じ仕組みであれば、両者を結び付けて考える必要があります。

租税回避対策企画官には、こうした情報を横につなぐ役割も期待されると考えられます。

これは税務行政における情報共有の重要性が高まっていることを意味します。

個別の税務調査で得られた情報を、次の税務調査や制度対応へ生かしていくわけです。

すべてが税務調査で解決できるわけではない

租税回避スキームを把握したとしても、直ちに課税できるとは限りません。

税金は法律に基づいて課されます。

そのため、新しいスキームが登場し、現行の税法では十分に対応できない場合には、税務当局が問題だと考えるだけで課税することはできません。

ここで重要になるのが税制改正です。

現行制度のどこに問題があるのかを分析し、必要であれば法律そのものを見直すことになります。

租税回避対策は税務調査だけで完結する問題ではないのです。

財務省主税局との連携が重要になる

国税庁は、必要に応じて財務省主税局とも連携し、税制改正による規制強化を図るとしています。

ここで国税庁と財務省主税局の役割の違いが重要になります。

国税庁は税法を実際に執行する立場です。

税務調査や申告、徴収などを通じて、現実の取引と日々向き合っています。

一方、財務省主税局は税制の企画や立案を担います。

国税庁が現場で新しい租税回避スキームを把握し、現行制度では対応が難しいことが分かれば、その情報を税制改正の検討につなげることができます。

税務執行と税制立案がつながるわけです。

税務行政は事後対応から早期対応へ

租税回避スキームが商品として大量に販売されるようになると、広がってから一件ずつ調査する方法では対応に時間がかかります。

そこで重要になるのが早い段階での把握です。

似た取引が複数確認された段階で情報を集める。

共通点を分析する。

スキームの構造を把握する。

必要な対応を検討する。

さらに現行制度で対応できなければ税制改正につなげる。

こうした流れを作ることができれば、問題が大きく広がる前に対応できる可能性があります。

租税回避対策企画官の新設要求には、税務行政をこうした方向へ強化する狙いがあると考えられます。

結論

国税庁が新設を要求している租税回避対策企画官は、複雑化する租税回避スキームへの総合的な対応を担う司令塔として位置付けられています。

重要なのは、単に税務調査を増やすための役職ではないという点です。

各地の税務調査などから得られる情報を集め、共通するスキームを分析し、必要な対応につなげていくことが重要になります。

さらに、現行税制では十分に対応できない問題が見つかれば、財務省主税局と連携して税制改正につなげることも想定されています。

税務署が個々の納税者を調べる。

国税局が広域的な案件に対応する。

そして国税庁が全国の情報を集約してスキームそのものを分析する。

税務行政は、このように個別調査と情報分析を組み合わせる方向へ進んでいます。

租税回避対策企画官の新設要求は、その変化を象徴する動きといえそうです。

参考

税のしるべ 2026年9月7日 国税庁の9年度予算概算要求と定員・機構要求、租税回避対策企画官の新設を

タイトルとURLをコピーしました