内部統制監査はなぜ生まれたのか 財務報告の信頼性を会社の仕組みから確保する制度編

会計
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企業の財務報告の信頼性を確保するためには、完成した財務諸表だけを確認すれば十分なのでしょうか。

企業の数字は、日々の取引が記録され、それが集計され、最終的に財務諸表として公表されます。

その途中の仕組みに問題があれば、最終的な財務報告にも問題が生じる可能性があります。

そこで重要になったのが内部統制という考え方です。

今回の資料では、日本で内部統制制度が導入されていった背景として、2004年に起きた西武鉄道事件や、米国のサーベインズ・オックスリー法の影響、企業会計審議会での内部統制基準の検討などが紹介されています。

内部統制監査は、企業が作った数字だけを見るのではなく、その数字が適切に作られる仕組みにも目を向ける制度として発展してきたのです。

監査基準の改革が先に進んでいた

資料では、筆者が1999年10月から始まった監査基準改訂の審議を担当したことが紹介されています。

会計ビッグバンによって会計基準が大きく変化すれば、それに対応する監査のあり方も考えなければなりません。

企業が新しい会計基準に従って財務諸表を作成しても、その情報が信頼できるものでなければ財務諸表利用者は安心して利用できません。

そのため、会計基準の改革と並行して監査基準についても見直しが進められていきました。

会計と監査は別々の制度ではありますが、企業の財務情報の信頼性という点では密接につながっています。

保証業務という考え方も整備された

資料によると、2004年には保証業務のフレームワークに関する意見書の審議も行われました。

当時、このようなフレームワークが本当に必要なのかという批判もあったとされています。

しかし資料の筆者は、その後のレビュー業務や内部統制監査など、保証業務の多様化が円滑に進むための根拠になったと振り返っています。

監査という仕事も、従来の財務諸表監査だけを考えればよい時代ではなくなっていったのです。

西武鉄道事件が内部統制制度を考える契機になった

資料では、日本で内部統制制度の導入を考える直接的な契機として2004年の西武鉄道事件が取り上げられています。

特徴的なのは、資料がこの事件について「財務諸表ではない部分の虚偽記載」と説明していることです。

財務諸表そのものを監査する従来の仕組みだけでは、企業の情報開示をめぐる問題に十分対応できない可能性が明らかになりました。

そこで、企業内部の仕組みそのものを確認する内部統制という考え方が重要になります。

問題が起きた後で数字を修正するだけではなく、問題が起きにくい仕組みを会社内部に構築するという発想です。

米国では内部統制監査が先行していた

日本が内部統制制度を検討していた時期、米国ではサーベインズ・オックスリー法によって内部統制監査が導入されていました。

資料によると、日本でも米国の制度を受けて公認会計士法の改正を行っていました。

一方で、証券法制についてはまだ十分な対応が行われていなかったとされています。

西武鉄道事件への対応策を検討する中で、内部統制監査という考え方が出てきました。

海外の制度をそのまま導入したというよりも、日本で実際に起きた問題への対応と、海外で進んでいた制度改革が重なって内部統制制度の検討が進んだことが資料から分かります。

内部統制は経理部だけの仕組みではない

内部統制という言葉から、経理部が行う決算チェックを想像するかもしれません。

しかし、会社の数字ができるまでには多くの部門が関係します。

売上であれば営業活動があります。

仕入れであれば購買活動があります。

在庫であれば入出庫や棚卸しがあります。

給与であれば人事や労務の情報があります。

こうした日々の業務から会計情報が作られていきます。

そのため、財務報告の信頼性を会社の仕組みから支えるという考え方では、経理部だけを見ればよいわけではありません。

会社のさまざまな業務が、最終的な財務報告につながっていることを意識する必要があります。

完成した数字だけを見るのでは足りない

従来の財務諸表監査を単純化して考えると、企業が作成した財務諸表が適切かどうかを監査するというイメージがあります。

しかし、最終的な数字だけを見ていると、その数字がどのような業務プロセスを通じて作られたのかが見えにくくなります。

重要なのは、数字が正しく作られる仕組みです。

取引が適切に記録される。

必要な承認が行われる。

情報が正確に会計システムへ反映される。

決算までの過程で必要な確認が行われる。

こうした仕組みを整えることで、財務報告の信頼性を支えるという考え方につながります。

内部統制部会が設置された

資料では、西武鉄道事件への対応を検討する中で内部統制監査のアイデアが生まれ、その後、内部統制部会の設置から金融商品取引法の改正まで非常に速いスピードで対応が進んだことが紹介されています。

内部統制基準についても、起草委員会で検討が重ねられました。

ここでも重要なのは、制度が最初から完成した形で存在したわけではないことです。

実際に発生した問題を受けて、どのような制度が必要なのかを検討します。

専門家が議論します。

基準を作ります。

そして法律との関係を整えて制度化していきます。

内部統制制度も、こうした過程を経て形成されていったのです。

会社自身が仕組みを整えることが重要になる

内部統制制度の重要なところは、監査人だけが頑張ればよい制度ではないという点です。

そもそも企業内部の仕組みを作り、実際に運用するのは会社です。

会計監査のためだけに形式的な書類を作ればよいという話ではありません。

企業の日常業務の中で、適切な財務報告につながる仕組みを整えることが重要になります。

内部統制を考えることで、企業自身が自社の業務の流れを確認することにもつながります。

どこで取引が始まるのか。

誰が承認するのか。

どのように記録されるのか。

最終的にどのように財務諸表へ反映されるのか。

会社の業務と会計を結び付けて考えることになります。

会計と監査の対象が広がってきた

今回のシリーズで見てきた会計ビッグバンでは、リース、金融商品、退職給付などについて、企業の経済的な実態を財務諸表へより適切に反映する方向で会計基準が整備されてきました。

一方、監査についても変化が進みました。

財務諸表という最終成果物を監査するだけでなく、その財務報告を生み出す企業内部の仕組みにまで目を向けるようになったのです。

資料では、保証業務のフレームワークが、その後のレビュー業務や内部統制監査など保証業務の多様化につながったと評価されています。

会計制度の発展とともに、監査や保証業務の領域も広がってきたことが分かります。

不祥事への対応から制度が生まれることがある

内部統制制度の歴史から分かることの一つは、大きな企業不祥事が制度改革の契機になることがあるという点です。

問題が発生すると、それまでの制度で何が足りなかったのかが問われます。

その問題を個別企業だけの問題として処理するのか。

それとも制度そのものを見直すのか。

西武鉄道事件への対応では、内部統制監査という新しい仕組みが検討されました。

そして企業内部の統制と外部からの監査を組み合わせる方向へ制度が発展していきました。

財務報告の信頼性を高めるための仕組みは、不祥事や経済環境の変化を受けながら改善され続けているのです。

結論

内部統制監査は、完成した財務諸表だけではなく、その財務報告を作り出す会社内部の仕組みにも目を向ける必要性から生まれてきました。

資料では、1999年10月から監査基準改訂の審議が始まり、2004年には保証業務のフレームワークに関する意見書の審議が行われたことが紹介されています。

さらに2004年の西武鉄道事件を受け、企業の情報開示をめぐる問題への対応として内部統制制度の検討が進みました。

その背景には、内部統制監査を盛り込んだ米国のサーベインズ・オックスリー法の存在もありました。

その後、内部統制部会が設置され、金融商品取引法の改正や内部統制基準の検討へとつながっていきます。

企業の財務報告は、決算日に突然作られるものではありません。

日々の取引、承認、記録、集計という会社内部の仕組みを通じて作られます。

だからこそ、財務報告の信頼性を確保するためには、最終的な数字だけでなく、その数字を作る仕組みそのものを整えることが重要なのです。

参考

青山学院大学会計プロフェッション研究 2026年3月 プロジェクトX【会計基準等の改革】を振り返る

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