日銀が政策金利を1.0%から1.25%へ引き上げました。
利上げ幅は0.25%です。
0.25%という数字だけを見ると、それほど大きな変化ではないように感じるかもしれません。
しかし住宅ローンは数千万円を20年、30年、35年といった長期間にわたって借りる金融商品です。
わずかな金利差でも毎月の返済額や総返済額に影響します。
住宅ローン比較サービスを手掛けるMFSの試算では、5,000万円を35年返済で借り、金利が1.2%から0.25%上昇した場合、毎月の返済額は約6,000円増えるとされています。
年間では約7万2,000円です。
住宅ローンでは金利の小さな変化を軽視できません。
0.25%は0.25%ポイントの上昇
最初に確認しておきたいのが金利の表現です。
金利が1.2%から1.45%になった場合、0.25%ポイントの上昇です。
1.2%の金利が25%増えたという意味ではありません。
住宅ローンでは、この0.25%ポイントという小さな差が数千万円の元金にかかります。
例えば借入残高が5,000万円なら、単純に元金へ0.25%を掛けると12万5,000円です。
実際の住宅ローンでは元金が毎月減っていくため、この金額がそのまま年間負担増になるわけではありません。
それでも金利上昇の影響が小さくないことは分かります。
5,000万円を35年で借りるとどうなるのか
今回の記事では、5,000万円を35年返済で借りたケースが紹介されています。
金利1.2%の住宅ローンが0.25%上昇すると、毎月の返済額は約6,000円増えるという試算です。
月6,000円なら、それほど大きくないと感じるかもしれません。
しかし年間では約7万2,000円です。
10年間続けば単純計算で72万円になります。
もちろん実際には金利の変更時期や元金の減少、住宅ローンの商品設計などによって負担額は変わります。
重要なのは、住宅ローンでは小さな金利差が長期間積み重なるという点です。
なぜ0.25%でも影響が大きくなるのか
理由は借入額と返済期間です。
例えば100万円を1年間借りる場合なら、0.25%の金利差による影響は限定的です。
しかし住宅ローンでは3,000万円、5,000万円、場合によっては1億円近い資金を借ります。
さらに返済期間は35年など長期間です。
大きな元金に小さな金利差が長期間かかる。
この組み合わせによって負担の差が大きくなります。
住宅ローンでは0.1%や0.25%といった金利差にも意味があるのです。
変動金利は政策金利の影響を受けやすい
日銀の利上げで特に注目されるのが変動型住宅ローンです。
変動金利は市場の短期金利などの影響を受けます。
日銀が政策金利を引き上げると、銀行の短期貸出金利にも上昇圧力がかかります。
その結果、変動型住宅ローンの基準となる金利が引き上げられる可能性があります。
今回も銀行による住宅ローン基準金利の引き上げが相次いでいます。
政策金利の上昇が、実際の住宅ローンへ波及する段階に入っているのです。
基準金利と適用金利は同じではない
住宅ローンを見るときには、基準金利と実際に適用される金利を区別する必要があります。
銀行は住宅ローンに基準となる金利を設定しています。
そこから借り手の条件などに応じて一定幅を引き下げ、実際の適用金利を決める商品があります。
そのため基準金利が上昇したからといって、すべての利用者の適用金利が同じ幅で同じ時期に上昇するとは限りません。
新規借入なのか既存借入なのか。
どの銀行の商品なのか。
優遇幅がどう設定されているのか。
こうした条件によって影響は変わります。
返済額がすぐ増えない住宅ローンもある
既に変動型住宅ローンを借りている場合、金利が上昇しても毎月の返済額がすぐ増えない商品があります。
代表的なのが返済額を一定期間変更しない仕組みです。
しかし返済額が変わらないからといって、金利上昇の影響がなくなったわけではありません。
毎月の返済額のうち利息部分が増え、その分だけ元金の返済が遅くなることがあります。
つまり表面的な毎月返済額だけを見ていると、金利上昇の影響に気づきにくい場合があります。
返済額だけでなく、元金がどの程度減っているのかを見ることも重要です。
新しく借りる人には影響が分かりやすい
これから住宅を購入する人には、金利上昇の影響がより分かりやすく表れます。
同じ5,000万円を借りても、金利が高くなれば毎月返済額が増えます。
毎月返済額を一定以内に抑えようとすれば、借入可能額を減らす必要があります。
すると購入できる住宅価格にも影響します。
住宅価格が変わらなくても、住宅ローン金利が上昇するだけで実質的な購入負担は増えるのです。
住宅を買うときには物件価格だけでなく、金利を含めた総返済額を見る必要があります。
0.25%の次も考える必要がある
さらに重要なのは、今回の利上げだけで考えないことです。
政策金利は1.25%になりましたが、日銀は今後の追加利上げを排除していません。
仮に住宅ローン金利がさらに0.25%上昇すれば、負担はもう一段増えます。
その後さらに上昇すれば影響は積み重なります。
変動金利を利用するときには、現在の金利で返済できるかだけでは不十分です。
金利が1%程度上昇しても家計を維持できるかなど、複数の金利水準で返済額を確認しておくことが重要です。
預金金利上昇との違いも大きい
前回の記事では、普通預金金利0.5%なら1,000万円で年間5万円の税引前利息になることを確認しました。
一方、住宅ローンでは5,000万円という大きな借入残高があります。
預金1,000万円と住宅ローン5,000万円を同時に持っている家計なら、預金金利が上昇して受取利息が増えても、住宅ローン金利上昇の影響の方が大きくなる可能性があります。
金利上昇局面では、預金だけを見るのでも住宅ローンだけを見るのでも十分ではありません。
金融資産と負債を合わせて家計全体で考える必要があります。
若い世帯ほど影響を受けやすい
金利上昇による住宅ローン負担は、特に若い世帯に影響しやすくなります。
若い世帯は高齢世帯と比較して預金などの金融資産が少ない一方、住宅ローンなどの負債を抱えているケースが多いためです。
今回の記事で紹介された試算では、0.25%の利上げによって29歳以下の世帯では年間約2万2,000円、30代では約2万3,000円の収支悪化が見込まれています。
反対に預金を多く持つ60代や70代以上では、収支が改善するとされています。
同じ利上げでも、世代によって影響が反対になるのです。
住宅購入では借りられる額より返せる額を見る
金利上昇局面で住宅を購入するときに重要なのは、銀行がいくら貸してくれるかだけで判断しないことです。
現在の金利で毎月返済できるか。
金利が0.5%上昇しても返済できるか。
1%上昇しても家計に余裕が残るか。
教育費や老後資金を確保できるか。
こうした条件を合わせて考える必要があります。
住宅ローンは数十年間続く契約です。
借入時点の低い金利だけを前提に返済計画を組むと、金利上昇時に家計の余裕が急速になくなる可能性があります。
結論
住宅ローンでは0.25%という小さな金利上昇でも無視できません。
5,000万円を35年返済で借り、金利が1.2%から0.25%上昇した場合、毎月の返済額は約6,000円増えるという試算があります。
年間では約7万2,000円です。
さらに利上げが続けば、負担が追加的に増える可能性があります。
重要なのは、現在の金利だけで住宅ローンの返済能力を判断しないことです。
金利がさらに上昇した場合の返済額も試算し、家計にどの程度の余裕が残るのかを確認する必要があります。
そして日銀の政策金利が、なぜ銀行の変動型住宅ローン金利へ波及するのでしょうか。
その仕組みを理解するために重要になるのが、短期プライムレートです。
参考
日本経済新聞 2026年9月19日朝刊 住宅ローン、若年層に重荷
日本経済新聞 2026年9月19日朝刊 預金金利上昇、高齢者に恩恵
日本経済新聞 2026年9月19日朝刊 日銀利上げペース加速 総裁、物価抑制へ「局面変化」