空き家税の税収を空き家対策に使う意味とは 約1億4000万円を地域へ戻す循環型政策編

税理士
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税金を導入すると聞くと、自治体が新たな財源を確保するための制度だと考えがちです。

しかし大阪府寝屋川市が導入を進める空き家税は、少し性格が違います。

市は空き家税によって約1億4,000万円の税収を見込み、その財源を建物の除却への補助など、空き家対策に活用する考えを示しています。

空き家から集めた税金を空き家問題の解決へ戻す仕組みです。

空き家税の目的は税収ではない

空き家税を理解するうえで最も重要なのは、税収を増やすこと自体が目的ではないことです。

寝屋川市が目指しているのは、売却にも賃貸にも出されず、利用されていない住宅について所有者の行動を変えることです。

売却する。

賃貸する。

自分や家族が利用する。

必要であれば解体する。

こうした判断を促すために税負担を設けます。

そのため、空き家税は税収が増えれば増えるほど成功する税とはいえません。

約1億4000万円の税収を見込む

寝屋川市では空き家税による税収として約1億4,000万円を見込んでいます。

一般的な住宅では、固定資産税額の3割から4割程度を目安とし、年間数万円程度の負担増が想定されています。

対象となる空き家の所有者から集めた税金を、そのまま一般財源として考えるだけではありません。

建物の除却への補助など、空き家問題を解決するための施策に活用する考えです。

なぜ除却への補助が必要なのか

古い空き家では、売却や賃貸が難しい場合があります。

建物の老朽化が進み、大規模な修繕をしなければ利用できない住宅もあります。

そのような場合には、建物を解体して土地を再利用することが選択肢になります。

しかし解体にはまとまった費用が必要です。

所有者が解体したいと思っても、費用負担が大きいため判断を先送りすることがあります。

補助制度によってその負担を軽くできれば、老朽化した住宅の除却を後押しできます。

税を負担した人だけに戻すわけではない

空き家税の税収を空き家対策に使うといっても、納税した所有者にそのまま同じ金額を返すという意味ではありません。

地域全体の空き家問題を改善するために使います。

例えば老朽化した空き家の除却を進めれば、倒壊や外壁落下などの危険を減らすことができます。

土地が再び住宅用地として利用される可能性もあります。

空き家税の税収を地域の住宅ストックを再生する財源として循環させる考え方です。

所有者にもう一度手を差し伸べる

寝屋川市は空き家税を導入する前から所有者への支援を進めています。

2020年には不動産や法律などの専門家団体と空き家流通推進プラットフォームを設立しました。

相続や処分など、空き家を抱える所有者が専門家の支援を受けられる仕組みです。

まず支援によって所有者に手を差し伸べる。

それでも動かない住宅について空き家税によって判断を促す。

そして税収を除却補助などに使い、再び所有者が動くための支援へ戻す。

こうした循環をつくろうとしています。

空き家が減れば税収も減っていく

空き家税には一般的な税金とは異なる特徴があります。

政策が成功すれば、課税対象そのものが減る可能性があることです。

例えば所有者が空き家を売却し、新しい所有者が住み始めれば、その住宅は課税対象ではなくなります。

賃貸住宅として利用されても同様です。

課税対象となる空き家が減れば、空き家税の税収も減少していきます。

しかし、それは制度が失敗したことを意味しません。

むしろ本来の政策目的が達成されていることになります。

税収額では政策効果を測れない

通常の税制では、税収がどの程度確保できたかが重要な指標になります。

しかし空き家税では別の指標が必要です。

課税対象だった住宅のうち何戸が売却されたのか。

何戸が賃貸に出されたのか。

何戸が再び居住用として使われたのか。

何戸の老朽住宅が除却されたのか。

こうした数字を追うことで、空き家税が実際に所有者の行動を変えたのかを検証できます。

税収を地域の住宅再生へ回す

空き家が増えると、所有者だけでなく地域にも影響します。

老朽化した建物が増えれば防災上の問題が生じます。

適切に管理されなければ景観や生活環境にも影響します。

一方、空き家が再利用されて新しい住民が入れば、地域の消費やコミュニティーにも変化が生まれます。

空き家税の税収を住宅再生へ使うことは、単なる所有者支援ではなく地域への再投資という意味を持ちます。

恒久的な税収源にしないことが重要

空き家税を自治体の安定した財源として期待しすぎると、本来の政策目的との矛盾が生じます。

空き家が減れば税収も減るからです。

したがって空き家税は、毎年一定額を確保するための恒久的な財源というより、空き家を動かす過程で得られる政策財源として考える方が分かりやすくなります。

最終的には課税対象が大幅に減る状態こそ、政策が目指す姿といえます。

結論

寝屋川市は空き家税によって約1億4,000万円の税収を見込み、建物の除却への補助など空き家対策へ活用する考えです。

特徴的なのは、税を集めること自体を目的としていない点です。

空き家を持ち続けることに負担を設けて所有者の行動を促し、そこで得た税収を住宅の除却などへ使い、さらに空き家を減らしていきます。

そして政策が成功すれば、課税対象となる空き家が減り、将来的には税収そのものも減っていく可能性があります。

税収を増やすことではなく、税収が必要なくなる状態を目指す。

空き家税は、税を地域の住宅再生へ循環させながら課税対象そのものを減らしていくという、一般的な税とは少し異なる性格を持った制度といえます。

参考

日本経済新聞 2026年9月19日 朝刊 直言 眠る空き家、若者に回せ

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