新しい給付制度を国と地方はどう負担するのか 国と都道府県と市町村で費用を分ける仕組み編

税理士
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2029年度から、中低所得の勤労者を主な対象とする新しい所得連動型給付が本格導入される予定です。

制度の名称は就業者負担軽減支援金です。

ここで気になるのが、給付するお金を誰が負担するのかという問題です。

国だけが全額を負担する仕組みではありません。

政府の大綱では、国が3分の2以上を負担し、残りを都道府県と市町村で分担する方向が示されています。

さらに給付を実際に住民へ届けるためには、所得情報の確認や支給事務なども必要になります。

今回は、新しい給付制度を国と地方がどのように支えていくのかを考えてみます。

所得連動型給付とは何か

2029年度から本格導入される予定の所得連動型給付は、すべての人に同じ金額を配る一律給付とは異なります。

所得に応じて給付額が変わります。

一定の所得帯では定額を給付し、その後は所得の増加に応じて給付額を増やす仕組みや、満額を給付する所得帯を設けることが想定されています。

さらに所得が高くなると給付額を徐々に減らし、最終的には給付を終了します。

子どもの人数に応じた加算や、年収の壁に対応する時限的な加算も検討されています。

そのため単純に同じ金額を全員へ振り込む給付より制度は複雑になります。

国が3分の2以上を負担する

新しい給付制度の費用について、大綱では3分の2以上を国が負担する方向が示されています。

例えば制度全体の費用を仮に3兆円とします。

国の負担割合がちょうど3分の2なら、国が2兆円を負担する計算になります。

残る1兆円を地方側が負担することになります。

実際には国が3分の2以上を負担するとされているため、最終的な負担割合は今後の制度設計によって決まります。

重要なのは、所得連動型給付を国だけの制度ではなく、国と地方が共同で支える仕組みとして設計しようとしていることです。

残りは都道府県と市町村が分担する

国が負担した残りについては、都道府県と市町村が2分の1ずつ負担する方向です。

先ほどの例で、国が2兆円を負担して地方側に1兆円が残ったとします。

これを半分ずつ負担するのであれば、都道府県が5000億円、市町村が5000億円となります。

制度全体の3兆円から見ると、国が3分の2、都道府県が6分の1、市町村が6分の1という形になります。

ただしこれは国の負担をちょうど3分の2と仮定した場合の単純な例です。

実際の割合は制度の詳細が決まってから確認する必要があります。

なぜ地方自治体も負担するのか

所得連動型給付は国の政策として設計されますが、住民の所得や家族構成などに関する情報は地方自治体とも深く関係しています。

市町村は住民税の課税などを通じて住民の所得情報を扱っています。

子育てや福祉など、住民に直接給付する多くの制度でも自治体が重要な役割を担っています。

そのため新しい給付制度でも、国が制度の大枠や主要な財源を担いながら、地方自治体が財源と実務の両面で参加する仕組みが考えられています。

国と地方の役割分担が制度運営の重要なポイントになります。

地方税収の補填とは別の話

ここは少し分かりにくいところです。

食料品の消費税を1パーセントへ引き下げることで地方税収も減少します。

この地方税収の減少については、国が地方特例交付金によって全額補填する方針です。

一方、2029年度から始まる所得連動型給付の費用については、国と地方で分担します。

つまり2つは別の仕組みです。

消費税減税によって地方税収が減った分については国が補填します。

新しい給付制度そのものに必要な費用については地方にも負担を求めます。

同じ国と地方のお金の話ですが、分けて理解する必要があります。

市町村は給付事務でも重要になる

給付制度では財源を用意するだけではお金は住民に届きません。

誰が対象者なのかを判定する必要があります。

所得はいくらなのか。

子どもが何人いるのか。

給付額はいくらになるのか。

どの口座へ振り込むのか。

こうした情報を確認し、実際に給付する事務が必要です。

特に所得連動型給付では所得によって金額が変わるため、一律給付より判定が複雑になる可能性があります。

自治体が持つ税情報などをどのように利用するのかも重要になります。

2029年度は2回に分けて給付する予定

2029年度の給付については、2回に分けて支給する予定です。

先行給付の対象となっている人には4月に半年分を支給します。

その後、前年の所得情報を基に新たな対象者を決め、秋に半年分を支給する仕組みが想定されています。

所得連動型給付では、できるだけ新しい所得情報を使う必要があります。

しかし所得が確定する時期と、家計が支援を必要とする時期が必ずしも一致するとは限りません。

そこで先に給付する部分と、所得情報を確認した後に給付する部分を組み合わせるわけです。

2030年度以降は年1回、秋に支給する予定です。

給付事務の効率化も重要になる

対象者が数千万人規模になれば、給付事務も大規模になります。

対象者を判定します。

給付額を計算します。

振込先を確認します。

実際に振り込みます。

問い合わせにも対応します。

制度が複雑になるほど行政コストも増えます。

そのため所得情報や公金受取口座など、行政が保有する情報をどこまで効率的に利用できるかが重要になります。

給付額だけでなく、給付するためにどれだけ事務費がかかるのかも制度評価では見る必要があります。

国と地方で負担すれば地方財政にも影響する

給付制度の費用を地方自治体も負担するのであれば、当然ながら地方財政への影響があります。

自治体にはもともと多くの支出があります。

社会保障、教育、子育て、防災、インフラ整備などです。

そこへ新しい給付制度の負担が加わることになります。

そのため地方側の負担をどのように安定的に確保するのかも重要です。

国が恒久財源を必要とするのと同じように、地方にも継続的な財源が必要になります。

制度を始めるだけでなく、国と地方の双方が長期間維持できる仕組みにする必要があります。

結論

2029年度から本格導入される所得連動型給付は、国だけで費用を負担する制度ではありません。

大綱では国が3分の2以上を負担し、残る部分を都道府県と市町村が2分の1ずつ負担する方向が示されています。

国の負担をちょうど3分の2と仮定すれば、制度全体では国が3分の2、都道府県が6分の1、市町村が6分の1という関係になります。

さらに地方自治体は、所得情報の確認や対象者の判定など給付事務でも重要な役割を担うことになります。

ここで注意したいのは、食料品減税による地方税収の減少を国が補填する仕組みとは別だということです。

減税による地方の減収は国が補います。

一方、新しい所得連動型給付の費用は国と地方が一緒に負担します。

所得連動型給付を考えるときには、誰がいくら受け取るのかだけではなく、その費用を国、都道府県、市町村の誰がどれだけ負担し、誰が実際の給付事務を担うのかまで見ることが大切です。

参考

日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 食品消費税、2年限り1% 税制大綱決定

日本経済新聞 2026年9月16日 朝刊 財源1.8兆円なら3700万人に最大5万円

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