結婚するかどうかは個人の選択です。
一方、社会全体で結婚する人が減り、それに伴って出生数が減り続ければ、長期的には社会保障にも影響します。
日本では結婚と出生の結びつきが強いためです。
2025年の出生動向基本調査では、18歳から34歳の未婚者で、一生結婚するつもりはないと答えた割合が男性24.0パーセント、女性21.5パーセントとなり、初めて男女とも2割を超えました。
少子化は子育て世帯だけの問題ではありません。
将来の年金、医療、介護を誰が支えるのかという問題にもつながっています。
社会保障は世代を超えて支え合う仕組み
日本の社会保障には、年金、医療、介護などがあります。
これらは自分が若い時に積み立てたお金だけを高齢になって使う仕組みではありません。
現役世代が支払う保険料や税金などを通じて、その時点の高齢者への年金給付や医療、介護を社会全体で支えています。
もちろん高齢者自身も保険料や自己負担などを負担しています。
それでも、制度を安定的に維持するためには現役世代の所得や人数が重要になります。
子どもが減ると将来の現役世代が減る
現在生まれた子どもは、20年ほどたてば働く世代に入っていきます。
出生数が減るということは、将来の働き手が減ることにつながります。
少子化の影響がすぐに社会保障へ全面的に表れるわけではありません。
時間をかけて現れます。
今年の出生数が少なければ、その世代が就職する20年後前後に労働市場へ入る人数も少なくなります。
さらに、その後何十年にもわたって社会保障の支え手の人数に影響します。
少子化が長期的な問題といわれる理由です。
年金では支える側と受け取る側のバランスが変わる
公的年金は、現役世代が支払う保険料などを現在の年金給付に充てる賦課方式を基本としています。
そのため、現役世代が減れば一人ひとりの負担や給付水準とのバランスを考える必要が出てきます。
ただし、現役世代の人数が減ったから直ちに年金制度が維持できなくなるわけではありません。
保険料、税金、積立金、給付水準、働く人の数や賃金など、複数の要素によって制度は成り立っています。
重要なのは、少子化が進むほど制度運営の選択肢が厳しくなりやすいことです。
医療にも現役世代の減少が影響する
医療も同じです。
高齢になるほど医療サービスを利用する機会は一般に増えます。
一方、その費用は患者本人の自己負担だけですべて賄われているわけではありません。
保険料や公費も使われています。
高齢者が多く現役世代が少ない人口構成になれば、医療制度をどのように支えるのかが重要になります。
保険料をどこまで負担するのか。
税金をどこまで投入するのか。
患者の自己負担をどうするのか。
少子化はこうした議論にもつながります。
介護ではお金だけでなく人手も問題になる
介護ではさらに別の問題があります。
介護保険制度を財政的に支える人が必要なだけではありません。
実際に介護サービスを提供する人も必要です。
介護職員。
看護職。
ケアマネジャー。
訪問介護員。
少子化によって働く世代そのものが減れば、介護サービスを担う人材の確保も難しくなる可能性があります。
社会保障は財源だけの問題ではありません。
サービスを提供する人をどう確保するのかという問題でもあります。
未婚化と少子化は日本ではつながりやすい
では、なぜ結婚しない人が増えることと社会保障が関係するのでしょうか。
日本では結婚と出生の結びつきが強いからです。
結婚する人が減る。
出生数が減る。
将来の現役世代が減る。
社会保障の支え手が減る。
このように長い時間をかけて影響がつながっていきます。
もちろん、結婚しない人が必ず子どもを持たないという意味ではありません。
また、個人の結婚選択を社会保障制度のために変えるべきだという話でもありません。
人口全体の動きとして考える必要があります。
夫婦が持つ子どもの人数も減っている
問題は未婚化だけではありません。
2025年の出生動向基本調査では、夫婦が予定する子どもの数も平均1.95人となり、初めて2人を下回りました。
つまり、日本では二つの変化が同時に起きています。
結婚する人の割合が低下する。
結婚した夫婦が予定する子どもの人数も減る。
この二つが重なれば、出生数への影響はさらに大きくなる可能性があります。
社会保障を考えるうえでも、出生数だけではなく、その背景にある婚姻や家族形成の変化を見る必要があります。
働く人を増やすことも重要になる
少子化への対応は、出生数を増やす政策だけではありません。
今いる人口の中で働く人を増やすことも重要です。
女性が出産後も働き続けられる環境をつくる。
高齢者が希望すれば長く働けるようにする。
デジタル化や人工知能などによって生産性を高める。
外国人材をどのように受け入れるかを考える。
一人ひとりがより長く、より高い生産性で働ければ、人口減少による影響の一部を補うことができます。
少子化対策と社会保障改革、労働政策は別々の問題ではありません。
少子化対策は数十年先への政策でもある
少子化対策に難しいところがあるとすれば、効果が出るまで非常に時間がかかることです。
仮に出生数が増えても、その子どもが社会保障の支え手になるのは約20年後です。
だからこそ、目先の財政だけを見て判断することはできません。
現在の若い世代が家庭を築きやすくする政策は、現在の生活支援であると同時に、数十年先の社会保障や経済を支える政策でもあります。
長期的な視点が必要になります。
結論
結婚するかどうかは、あくまで個人が決めることです。
しかし、日本では結婚と出生の結びつきが強いため、社会全体で未婚化が進めば出生数の減少につながりやすくなります。
出生数が減れば、将来の現役世代も減ります。
その結果、年金や医療、介護を支える人の数が少なくなり、財源だけでなく介護などのサービスを提供する人材の確保も難しくなる可能性があります。
さらに現在は、結婚する人が減っているだけでなく、夫婦が予定する子どもの数も平均1.95人まで低下しています。
少子化は子育て世帯だけの問題ではありません。
20年、30年先の働き手、社会保障、そして日本経済全体に関係する問題です。
結婚や出産を個人に求めるのではなく、希望する人が所得、住宅、仕事、教育費などを理由に家庭形成を諦めなくてもよい環境を整えること。
同時に、働く人を増やし、生産性を高め、人口が減っても持続できる社会保障制度をつくること。
少子化対策と社会保障改革を長期的な一つの問題として考える必要があるのだと思います。
参考
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 一生結婚しない2割超
日本経済新聞 2026年9月12日 朝刊 生活不安で結婚ためらう 家庭築く準備、支援薄く