自動車保険では、同じ車に乗り、同じような補償を付けていても、人によって保険料が大きく違うことがあります。
その理由の一つが等級です。
長年事故を起こさず自動車保険を利用していない人ほど保険料が安くなり、事故で保険を利用すると翌年以降の保険料が高くなることがあります。
その中心となる仕組みがノンフリート等級制度です。
自動車保険の等級とはどのような制度なのでしょうか。
ノンフリート等級とは何か
個人が自動車保険に加入するときに広く使われているのが、ノンフリート等級制度です。
一般的には1等級から20等級までに区分され、等級に応じて保険料の割増や割引が決まります。
基本的な考え方は、
等級が高いほど保険料が安くなりやすい
等級が低いほど保険料が高くなりやすい
というものです。
初めて自動車保険に加入する場合には、一定の等級からスタートするのが一般的です。
その後、契約期間中に事故がなく、保険を使うような事故がなければ、更新時に等級が一つ上がっていきます。
長期間無事故を続けることで、徐々に高い割引を受けられるようになる仕組みです。
なぜ事故を起こさない人の保険料が安くなるのか
自動車保険では、多くの契約者から集めた保険料を原資として、事故に遭った人へ保険金を支払います。
しかし、すべての契約者が同じ確率で事故を起こすわけではありません。
長期間にわたって事故を起こさず保険を使っていない人と、何度も事故を起こして保険金を受け取っている人では、保険会社が負担するリスクが異なります。
そこで、過去の事故実績などを保険料へ反映するために等級制度があります。
無事故を続ける人には大きな割引を適用し、事故で保険を利用した人については等級を下げるなどして保険料に反映します。
安全運転を続けることが保険料の節約にもつながるわけです。
等級はどのように上がるのか
例えば、ある人が10等級で自動車保険を契約しているとします。
契約期間中に等級へ影響する事故がなく、次の契約へ更新すると、原則として11等級へ上がります。
その翌年も同様であれば12等級というように進んでいきます。
この仕組みを繰り返して高い等級になれば、保険料に適用される割引も大きくなっていきます。
したがって、長年安全運転を続けている人にとって、現在の等級は大切な財産のようなものです。
単に今年の保険料だけを見るのではなく、何年もかけて積み上げてきた割引だからです。
事故を起こすと等級が下がる
事故を起こして自動車保険を使うと、翌年の等級が下がることがあります。
ただし、すべての事故で同じように等級が下がるわけではありません。
事故の種類によって、3等級下がる事故、1等級下がる事故、等級に影響しない事故などがあります。
例えば、車同士の衝突事故などで保険を利用すると、翌年に3等級下がるケースがあります。
現在15等級だった人が3等級ダウンする事故で保険を利用すれば、翌年は12等級になるというイメージです。
一方、事故の内容によっては1等級だけ下がるものや、等級に影響しないものもあります。
したがって、保険を使ったら必ず3等級下がると覚えるのではなく、事故の種類によって扱いが違うと理解しておくことが重要です。
修理代だけで保険を使うか決めない
事故で自分の車の修理に20万円かかるとします。
車両保険から保険金を受け取れるのであれば、当然使った方が得に思えるかもしれません。
しかし、保険を使ったことで翌年の等級が下がれば、翌年以降の保険料が上昇する可能性があります。
例えば今回20万円の保険金を受け取っても、その後数年間の保険料増加額が大きければ、実際の経済的なメリットは20万円より小さくなります。
修理費が比較的小さい場合には、
今回受け取れる保険金
免責金額
翌年の等級
翌年以降の保険料
などを比較して判断する必要があります。
場合によっては、保険を使わず自費で修理した方が長期的には負担が小さくなることもあります。
保険会社を変えたら等級はゼロになるのか
保険料を節約するために別の保険会社へ乗り換えたいけれど、長年積み上げた等級がなくなるのではないかと心配する人もいるでしょう。
一定の条件を満たして保険会社を変更する場合には、これまでの等級を引き継げるのが一般的です。
そのため、高い等級を持っているからという理由だけで同じ保険会社に契約し続けなければならないわけではありません。
補償内容を同じ条件にそろえて複数の保険会社から見積もりを取り、保険料を比較することもできます。
ただし、契約を切り替えるタイミングなどによって扱いが異なることがあるため、実際の乗り換え時には等級の引き継ぎ条件を確認することが重要です。
等級だけでは保険料は決まらない
等級が高ければ必ず非常に安い保険料になるというわけでもありません。
自動車保険の保険料には、さまざまな条件が影響します。
例えば、
車の型式
運転する人の年齢
運転者の範囲
年間走行距離
免許証の区分
車両保険の有無
などです。
同じ20等級でも、18歳の家族まで運転する契約と、一定年齢以上の本人だけが運転する契約では保険料が異なる可能性があります。
高額な車両保険を付けているかどうかによっても変わります。
等級は重要ですが、自動車保険料を決める要素の一つと考える必要があります。
無事故を続けることも保険料節約になる
自動車保険を安くするというと、補償を削ったり、安い保険会社へ乗り換えたりする方法を考えがちです。
しかし、長期的に大きな意味を持つのが安全運転です。
事故を起こさず高い等級を維持できれば、補償内容を無理に削らなくても保険料の割引を受けやすくなります。
しかも事故を起こさなければ、修理費や事故時の自己負担そのものも発生しません。
保険料を節約するためだけに安全運転をするわけではありませんが、安全運転の積み重ねが結果として家計にもプラスになる仕組みになっています。
結論
自動車保険の等級とは、契約者の事故実績などを保険料へ反映するための仕組みです。
一般的なノンフリート等級制度では1等級から20等級まであり、無事故を続けることで等級が上がり、保険料の割引が大きくなっていきます。
一方、事故で保険を利用すると、事故の種類によって翌年の等級が下がることがあります。
そのため、小さな事故では保険金を受け取れるからといって、必ず保険を使う方が得とは限りません。
今回受け取れる保険金だけでなく、翌年以降の保険料への影響まで考える必要があります。
何年も無事故を続けて積み上げた高い等級は、自動車保険料を抑えるうえで大きな意味を持ちます。
自動車保険を節約するときには、補償内容や保険会社を見直すだけでなく、現在の等級と事故後に等級がどう変わるのかを理解しておくことも重要です。
参考
日本経済新聞 2026年9月3日夕刊 マネー相談 黄金堂パーラー 自動車保険の基礎 下 節約のコツ