自動車保険では、事故を起こして保険を使うと翌年の等級が下がることがあります。
それなら、現在の等級が同じ人であれば、保険料の割引率も同じになると思うかもしれません。
ところが、同じ10等級でも保険料の割引率が異なる場合があります。
その理由が事故有係数です。
過去に事故を起こして保険を使った人と、無事故を続けて同じ等級になった人を区別する仕組みです。
なぜ同じ等級なのに保険料に差が生まれるのでしょうか。
事故有係数とは何か
自動車保険のノンフリート等級制度では、等級だけでなく、事故歴に応じた区分も保険料に影響します。
同じ等級でも、
無事故の割引率
事故有の割引率
が設けられています。
一般に事故有の区分が適用されると、無事故の場合より割引率が小さくなります。
つまり、同じ10等級だからといって、必ず同じ割引率になるわけではありません。
過去の事故によって事故有係数が適用されているかどうかも重要になります。
なぜ同じ10等級でも保険料が違うのか
例えば、AさんとBさんがともに10等級だったとします。
Aさんは長年無事故を続けて10等級になりました。
一方、Bさんは以前もっと高い等級でしたが、事故を起こして保険を利用し、10等級まで下がったとします。
現在の数字だけを見れば、二人とも10等級です。
しかし、過去の事故実績は違います。
保険会社から見ると、事故を起こして保険を利用した契約者と、無事故を続けている契約者ではリスクの評価が同じとは限りません。
そこで同じ等級でも、事故歴のある人には一定期間、事故有の割引率を適用する仕組みがあります。
これによって事故実績をより細かく保険料へ反映しています。
事故有係数適用期間とは何か
事故有の割引率がいつまで適用されるのかを示すものが、事故有係数適用期間です。
事故によって保険を利用すると、その事故の種類に応じて事故有係数適用期間が加算されることがあります。
代表的なものが3等級ダウン事故です。
3等級ダウン事故で保険を利用すると、翌年の等級が3つ下がるだけでなく、一定期間にわたって事故有の割引率が適用されます。
例えば15等級だった人が3等級ダウン事故を起こして保険を利用した場合、翌年は12等級になります。
さらに、事故有係数適用期間が設定され、その期間中は12等級という数字だけで決まる無事故の割引率ではなく、事故有の割引率が適用されます。
事故による影響は、単に等級が下がることだけではないわけです。
1等級ダウン事故でも影響する
事故によっては3等級ではなく、1等級下がるものもあります。
例えば、契約内容や事故原因などによって、一定の自然災害や盗難などによる車両保険の利用が1等級ダウン事故として扱われることがあります。
この場合も、翌年の等級が1つ下がるだけでなく、一定期間にわたって事故有の割引率が適用されることがあります。
したがって、
1等級しか下がらないから影響は小さい
と等級の数字だけで判断するのは適切ではありません。
事故有係数適用期間まで含めて、翌年以降の保険料への影響を確認する必要があります。
なぜ事故の影響を数年間残すのか
事故で保険を使った翌年だけ保険料を高くして、その次の年から元に戻せばよいと思うかもしれません。
しかし、自動車保険では事故実績を一定期間にわたって保険料へ反映する仕組みになっています。
事故を起こした人のリスクを、事故直後の1年間だけで判断するのではなく、一定期間を通じて保険料に反映するためです。
また、もし事故を起こしても翌年だけ少し保険料が上がるだけなら、小さな事故でも保険を使う人が増える可能性があります。
保険金の支払いが増えれば、最終的には契約者全体の保険料にも影響します。
事故有係数は、事故実績に応じた負担を保険料に反映する仕組みでもあります。
保険を使う前に数年間の負担を見る
事故有係数を理解すると、小さな事故で保険を使うかどうかの判断方法も変わります。
例えば、修理費が15万円かかったとします。
車両保険を使えば一定の保険金を受け取れるので、すぐに保険を使いたくなるかもしれません。
しかし、その事故が3等級ダウン事故に該当すれば、
翌年の等級が下がる
事故有の割引率が適用される
という二つの影響が生じる可能性があります。
その結果、翌年だけではなく、その後数年間の保険料負担が増えることがあります。
したがって、保険を使うかどうかを考えるときには、
今回受け取れる保険金
免責金額
翌年の等級
事故有係数適用期間
数年間の保険料増加額
を比較することが重要です。
保険会社に試算してもらう方法もある
事故後に保険を使うか迷った場合、自分だけで将来の保険料を正確に計算するのは簡単ではありません。
現在の等級や事故の種類、契約条件などによって影響が変わるからです。
そこで、保険会社や代理店に確認し、
保険を使った場合
保険を使わなかった場合
で翌年以降の保険料がどの程度変わるのか試算してもらう方法があります。
例えば、今回10万円の保険金を受け取っても、その後数年間で保険料が合計12万円増えるのであれば、自費で修理する方が経済的に有利になる可能性があります。
反対に、修理費が100万円など高額であれば、将来の保険料が多少上がっても保険を使うメリットが大きいでしょう。
保険は使えるかどうかだけではなく、使った結果まで考えることが大切です。
高い等級を維持する価値
長年無事故を続けて高い等級になっている人ほど、事故で保険を使うことによる影響を確認する意味があります。
高い等級には大きな割引が適用されるため、それを失うことが将来の保険料に影響するからです。
もちろん、大きな事故で高額な損害が発生したときまで保険を使わない方がよいという意味ではありません。
そもそも自分では負担しにくい大きな損失に備えるために保険があります。
重要なのは、小さな損害まで機械的に保険を使うのではなく、自己負担できる金額なら将来の保険料と比較することです。
免責金額と同じように、小さな損失は自分で負担し、大きな損失には保険を使うという考え方が役立ちます。
結論
事故有係数とは、過去に事故を起こして保険を利用した契約者について、その事故実績を保険料へ反映するための仕組みです。
そのため、同じ10等級であっても、無事故で10等級になった人と、事故によって高い等級から10等級へ下がった人では、保険料の割引率が異なる場合があります。
さらに、事故で保険を利用した影響は翌年だけとは限りません。
事故有係数適用期間によって、一定期間にわたり事故有の割引率が適用されることがあります。
したがって、小さな事故で自動車保険を使うかどうかは、今回受け取れる保険金だけで判断するべきではありません。
等級がいくつ下がるのか。
事故有係数が何年間適用されるのか。
その結果、数年間の保険料はいくら増えるのか。
ここまで比較して初めて、保険を使う方が有利なのか、自費で修理する方が有利なのかを判断しやすくなります。
参考
日本経済新聞 2026年9月3日夕刊 マネー相談 黄金堂パーラー 自動車保険の基礎 下 節約のコツ