掃除や料理は自分でもできるのだから、お金を払って他人に頼むのはもったいない。
家事代行サービスに対して、このように感じる人は少なくありません。
確かに、自分で掃除をすれば家事代行料金はかかりません。
しかし、家事にはお金とは別のコストがあります。
時間です。
掃除に2時間使えば、その2時間を仕事や休息、育児、勉強などに使うことはできません。
仕事と家庭を長期間両立することを考えると、何でも自分で行うことが最も合理的とは限らないのです。
そこで知っておきたいのが家事の外部化という考え方です。
家事の外部化とは何か
家事の外部化とは、これまで家庭の中で家族が行っていた仕事の一部を、家庭の外の商品やサービスによって代替することです。
代表的なのが家事代行です。
掃除や料理などを外部の事業者へ依頼します。
しかし、家事の外部化は家事代行だけではありません。
総菜を購入する。
冷凍食品を利用する。
食材宅配を利用する。
クリーニングを利用する。
ネットスーパーを利用する。
宅配サービスを利用する。
こうしたものも広い意味では、家庭内で行っていた作業を外部の商品やサービスへ置き換える方法です。
例えば、自宅で一からコロッケを作る場合と、スーパーで総菜のコロッケを買う場合を考えてみます。
総菜を購入すれば、材料をそろえ、調理し、後片付けをする時間を減らせます。
つまり商品代の中には、食材だけでなく調理に必要だった時間や手間も含まれていると考えることができます。
自分ですれば無料とは限らない
家事を外注すると料金が発生します。
一方、自分で家事をしても自分自身に料金を支払うわけではありません。
そのため、
自分ですれば無料。
と考えやすくなります。
しかし経済的に考えると、自分で行う場合にも時間という資源を使っています。
例えば休日に3時間かけて家全体を掃除するとします。
家事代行を使わなければ、現金の支出はありません。
しかし、その3時間は失われます。
その時間に、
家族と過ごす。
睡眠を取る。
運動する。
資格の勉強をする。
副業をする。
趣味を楽しむ。
といった別のことができた可能性があります。
つまり、自分で行う家事には現金支出はなくても、時間を使うというコストが存在するのです。
家事代行は時間を買うサービスでもある
例えば家事代行を2時間利用して5000円かかったとします。
単純に考えれば、家計から5000円が出ていきます。
そのため、
5000円も払って掃除をしてもらうのはもったいない。
と感じるかもしれません。
しかし、別の見方もできます。
5000円を支払うことで、2時間を取り戻したと考えるのです。
この2時間を、
子どもと過ごす。
夫婦で出かける。
睡眠を取る。
仕事の勉強をする。
運動する。
何もしないで休む。
といったことに使えます。
家事代行で購入しているものは、掃除という作業だけではありません。
自分が自由に使える時間でもあるのです。
時間だけでなく考える負担も減らせる
家事の外部化には、もう一つ重要な効果があります。
前回取り上げたメンタルロードを減らせる可能性があることです。
例えば掃除を自分でする場合、
いつ掃除するのか。
どこから掃除するのか。
掃除用品は足りているのか。
今週は忙しいから週末に回すのか。
といったことも考えます。
毎週決まった曜日に家事代行サービスを利用すれば、
掃除をいつするのか。
という判断そのものを減らせる場合があります。
つまり外部化によって減るのは、実際の作業時間だけではありません。
その家事について考えたり予定を管理したりする負担も減らせる可能性があります。
共働き世帯では時間の価値が高くなる
家事の外部化は、特に共働き世帯との相性がよい場合があります。
夫婦がともに働いている場合、平日に自由に使える時間は限られます。
例えば夫婦がそれぞれ8時間働き、通勤にも時間を使うとします。
そこへ料理、洗濯、掃除、買い物、育児などが加わります。
家事をすべて家庭内で行おうとすると、最後に削られるのは睡眠や休息になることがあります。
ここで重要なのは、
家事代行を利用するか。
仕事を辞めるか。
という極端な二択で考えないことです。
家事の一部だけを外部化する方法もあります。
掃除だけ頼む。
食事だけ総菜を利用する。
買い物だけネットスーパーにする。
洗濯物の一部だけクリーニングに出す。
負担の大きい部分だけを外へ出すことでも、家庭全体の余裕は変わります。
外注費と収入を単純比較するだけでは足りない
家事の外部化を考えるとき、
自分の時給より家事代行料金が高いから使わない。
という判断をすることがあります。
一つの考え方ではありますが、それだけで決める必要はありません。
家事を外部化して生まれた時間を、必ず仕事に使うわけではないからです。
例えば2時間空いたとしても、その時間に追加で働いて収入が増えるとは限りません。
それでも、その2時間を睡眠や休息に使うことで翌日の仕事に集中できるかもしれません。
家族との時間が増えるかもしれません。
育児との両立がしやすくなり、仕事を辞めずに済む可能性もあります。
したがって、家事外注の価値を考えるときには、
外注料金はいくらか。
という支出だけでなく、
どのくらい時間が生まれるのか。
心理的な負担はどのくらい減るのか。
仕事を続けやすくなるのか。
生活全体にどのような影響があるのか。
まで考える必要があります。
家事の外部化がキャリアへの投資になる場合
例えば仕事と育児の両立が非常に厳しくなり、
もう仕事を辞めた方が楽かもしれない。
と考えている人がいるとします。
ここで月2万円の家事サービスを利用した結果、仕事を続けられたとします。
年間の支出は24万円です。
確かに小さな金額ではありません。
しかし、退職すれば給与収入そのものがなくなる可能性があります。
さらに長期間仕事を離れれば、復職したときの給与や昇進、経験の蓄積などにも影響する場合があります。
そう考えると、家事サービスへの支出が単なるぜいたくとは限りません。
キャリアを継続するための費用という見方もできます。
特に育児や介護など家庭負担が一時的に大きくなる時期には、外部サービスを利用して仕事を続けるという選択肢もあります。
すべてを外部化する必要はない
もちろん、家事はできるだけ外注すればよいという話ではありません。
家事には費用がかかります。
家庭によって所得も違います。
自分で料理することが好きな人もいます。
掃除が気分転換になる人もいるでしょう。
家族と一緒に家事をすること自体に価値を感じる場合もあります。
大切なのは、
家事は家族が自分でやるもの。
と最初から決めつけないことです。
自分でやりたい家事は自分でする。
負担の大きい家事は外注する。
機械で代替できるものは機械に任せる。
購入できるものは購入する。
家族で分担できるものは分担する。
このように複数の方法を組み合わせることができます。
家電による外部化という考え方もある
人に頼むことだけが家事の外部化ではありません。
家電に任せる方法もあります。
食器洗い乾燥機。
ロボット掃除機。
乾燥機能付き洗濯機。
自動調理家電。
こうした機器を導入すれば、初期費用はかかります。
しかし、毎日の家事時間を少しずつ減らせます。
例えば1日20分の家事が減るとします。
1年間では約120時間になります。
一日ではわずかな差でも、長期間積み重なると大きな時間になります。
家電を購入するときも、本体価格だけでなく、
何年間使えるのか。
毎日何分減らせるのか。
年間では何時間になるのか。
という視点で考えると、その価値が違って見えることがあります。
家事を外部化することへの罪悪感
家事の外部化を難しくするのは、お金だけではありません。
心理的な抵抗もあります。
自分でできるのに人へ頼んでよいのだろうか。
料理くらい自分で作るべきではないか。
子どもがいるのだから家事をきちんとするべきではないか。
こうした思い込みがあると、サービスを利用できる経済的余裕があっても使わないことがあります。
しかし、家庭生活の目的は、家事そのものを完璧に行うことではありません。
家族が生活し、働き、休み、長期間無理なく暮らしていくことです。
家事はそのための手段です。
手段をすべて自分で行う必要があるとは限りません。
結論
家事の外部化とは、家庭の中で家族が行っていた仕事の一部を、外部の商品やサービスによって代替することです。
家事代行だけではありません。
総菜、冷凍食品、食材宅配、ネットスーパー、クリーニング、便利な家電なども、家庭内の負担を減らす方法になります。
家事を自分ですれば現金支出はありません。
しかし、時間は使います。
さらに、
何をするのか。
いつするのか。
何を準備するのか。
と考える心理的な負担もあります。
外部サービスにお金を払うことは、単に家事を他人へ押しつけることではありません。
自分の時間や余力を取り戻すための選択でもあります。
その時間を仕事、育児、睡眠、勉強、家族との時間に使うことができます。
場合によっては、仕事を辞めずに済み、長期的なキャリアを維持することにつながることもあります。
何でも自分ですることが最も節約になるとは限りません。
長く働き続ける時代には、お金だけでなく時間も貴重な資源です。
家事の外部化とは、その限られた時間を何に使うのかを考え直す方法の一つなのです。
参考
日本経済新聞 2026年9月3日朝刊 働き続けるため「手放す」選択も