投資信託を自分で解約すると税金はどう計算するのか 売却した金額すべてに税金がかからない理由編

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投資信託を100万円分売却したら、100万円に税金がかかるのでしょうか。

答えは違います。

課税口座で投資信託を売却した場合、基本的に税金がかかるのは売却代金そのものではなく、取得価額などを差し引いて計算した利益部分です。

100万円を受け取っても、その大部分が自分で投資した元本であれば、100万円全体に税金がかかるわけではありません。

この仕組みが、普通分配金を受け取る場合と自分で投資信託を解約する場合の税負担の違いにつながります。

取得価額とは何か

投資信託を売却したときの利益を計算するために重要なのが取得価額です。

取得価額とは、簡単にいえば、その投資信託を取得するためにかかった金額です。

例えば100万円で投資信託を購入したとします。

その後、値上がりして120万円になったところですべて売却したとします。

単純化すれば、

売却価額120万円

取得価額100万円

利益20万円

となります。

この場合、120万円全体が利益ではありません。

100万円はもともと自分が投資した資金です。

新たに増えた20万円が利益になります。

したがって、基本的にはこの利益部分を基礎として税金を計算します。

解約価額とは何か

投資信託では、保有している受益権を換金するために解約することがあります。

解約価額とは、投資信託を解約するときに換金の基準となる価額です。

投資信託によっては、解約時に信託財産留保額が差し引かれる場合もあります。

重要なのは、

いくらで取得したのか

いくらで換金したのか

という二つを比較することです。

安く買って高く売れば利益が生じます。

高く買って安く売れば損失が生じます。

投資信託から現金を受け取ったという事実だけで課税額が決まるわけではありません。

売却益はどう計算するのか

基本的な考え方は非常にシンプルです。

売却によって受け取った金額から、その売却部分に対応する取得価額や必要な費用などを差し引きます。

残った部分が利益です。

例えば100万円で購入した投資信託が110万円になったところですべて売却したとします。

単純化すると、

売却額110万円

取得価額100万円

利益10万円

です。

この10万円が課税対象になります。

税率を20.315パーセントとすると、10万円の利益に対する税額は約2万315円です。

110万円に20.315パーセントの税金がかかるわけではありません。

元本部分には税金がかからない

なぜ元本部分には税金がかからないのでしょうか。

元本は、自分がすでに持っていたお金だからです。

例えば銀行口座から100万円を引き出しても、100万円の所得が発生したことにはなりません。

自分のお金の置き場所を変えただけです。

投資信託でも基本的な考え方は同じです。

100万円を投資して110万円になったのであれば、新しく増えた財産は10万円です。

もともとの100万円まで所得として課税してしまえば、自分の元本そのものに税金をかけることになります。

そのため、基本的には利益部分を取り出して課税します。

一部だけ売却した場合はどうなるのか

実際の老後の取り崩しでは、投資信託を一度に全部売るとは限りません。

毎月4万円や5万円ずつ一部売却することがあります。

この場合にも、売却額全体が利益になるわけではありません。

例えば1500万円を投資し、その投資信託が1505万円になったとします。

利益は5万円です。

資産全体に占める利益は非常に小さな割合です。

この状態から約4万円を売却した場合、その約4万円の中には、

元本に対応する部分

利益に対応する部分

が含まれます。

利益に対応する部分だけが課税対象になります。

そのため、約4万円を売却したから約4万円全体に20.315パーセントの税金がかかるわけではありません。

普通分配金とは税金のかかり方が違う

ここが今回のシリーズで重要なところです。

普通分配金として5万円を受け取った場合、その5万円は投資家にとって利益に当たります。

そのため、課税口座では5万円全体が課税対象になります。

一方、自分で5万円分の投資信託を売却した場合、その5万円には元本部分が含まれています。

例えば売却した5万円のうち、

元本部分4万8000円

利益部分2000円

だったとすれば、基本的には2000円の利益部分が課税対象です。

同じ5万円を投資信託から取り出しているのに、課税対象となる金額が大きく違う場合があるわけです。

税率が同じでも税額は同じにならない

公募株式投資信託の普通分配金や売却益には、一般的な課税口座では原則として20.315パーセントの税率が関係します。

そのため、

どちらも税率は約20パーセントだから税負担も同じ

と思うかもしれません。

しかし重要なのは、税率を何円に掛けるかです。

例えば5万円すべてが普通分配金なら、

5万円に20.315パーセント

です。

一方、5万円を売却し、その中の利益が2000円なら、

2000円に20.315パーセント

という考え方になります。

同じ税率でも課税対象となる利益額が違えば、支払う税金も大きく変わります。

売却を続けると利益部分の割合は変わる

もっとも、自分で売却すればいつまでも税金が少ないわけではありません。

投資信託が値上がりして含み益が大きくなると、資産全体に占める利益の割合も高くなります。

例えば1000万円で購入した投資信託が2000万円まで値上がりしたとします。

単純化すれば、資産の半分に相当する1000万円が利益です。

この状態で一部を売却すれば、売却額に含まれる利益部分も大きくなります。

したがって課税額も増えていきます。

自分で取り崩す方法の利点は税金が永久にかからないことではありません。

利益に対する課税の一部を将来へ繰り延べながら資産を運用できることにあります。

課税を先送りすると運用に残せるお金が増える

例えば投資信託の中で利益が発生しても、売却しなければ含み益の段階では通常その都度課税されません。

その利益も含めて運用を続けることができます。

一方、普通分配金として利益を受け取れば、その都度課税されます。

税金として外へ出たお金は、その後の運用には使えません。

自分で必要額だけを取り崩す方法では、利益の一部を投資信託の中に残しながら運用を続けられます。

長期間になるほど、この課税時期の違いが複利効果にも影響する可能性があります。

損失が出た場合には扱いが逆になる

投資信託は必ず値上がりするわけではありません。

100万円で購入した投資信託を80万円で売却すれば、20万円の損失です。

利益が出ていないため、この売却について利益に対する税金が発生するわけではありません。

さらに一定の要件を満たす上場株式や公募株式投資信託などでは、ほかの対象となる利益との損益通算や、確定申告による損失の繰越控除を利用できる場合があります。

税金を考えるときには利益だけではなく、損失が生じた場合の仕組みも重要になります。

特定口座なら金融機関が計算してくれる

売却するたびに取得価額や利益を自分で計算するのは大変です。

そこで多くの投資家が利用しているのが特定口座です。

特定口座では金融機関が取得価額や売却損益などを計算します。

さらに源泉徴収ありの特定口座を利用していれば、原則として金融機関が税金の計算と源泉徴収まで行います。

そのため投資家自身が毎回、

今回売った5万円のうち利益はいくらか

と計算する必要は通常ありません。

制度上は複雑でも、実際の売買では金融機関のシステムによって処理される部分が多くなっています。

結論

投資信託を自分で解約した場合、受け取った売却代金すべてに税金がかかるわけではありません。

基本的には、売却価額からその売却部分に対応する取得価額などを差し引いて計算した利益部分が課税対象になります。

100万円を投資して110万円になったのであれば、新たに増えた10万円が利益です。

もともと自分が投資した100万円は元本なので、それ自体が利益として課税されるわけではありません。

この点が普通分配金との大きな違いです。

5万円の普通分配金なら5万円全体が課税対象になりますが、自分で5万円分を売却した場合には、その中に含まれる利益部分が課税対象になります。

そのため同じ金額を投資信託から取り出す場合でも、自分で必要額を売却する方が、その時点での税負担を抑えられることがあります。

これは税金がなくなる仕組みではありません。

利益を投資信託の中に残し、課税を将来へ繰り延べながら運用できる可能性があるということです。

毎月分配型と自分での取り崩しを比較するときには、税率だけではなく、何円が課税対象になるのかを見ることが重要です。

参考

日本経済新聞 2026年9月1日朝刊 毎月分配型、税に落とし穴

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