育児などのために時短勤務をすると、毎月の給料だけでなく賞与も減るのではないかと心配する人は少なくありません。
例えば、1日8時間勤務から6時間勤務になれば、勤務時間は25パーセント短くなります。
では、賞与も自動的に25パーセント減るのでしょうか。
必ずしもそうとは限りません。
賞与は基本給とは異なり、会社ごとの賞与制度や人事評価、算定期間中の勤務状況など、さまざまな要素によって決まります。
重要なのは、
時短勤務だから賞与が減る
と一括りに考えるのではなく、
何を理由として、どの部分が変わるのか
を確認することです。
賞与は法律上必ず支払われるものではない
まず理解しておきたいのが、賞与の基本的な性格です。
毎月の賃金と違い、すべての会社に賞与の支給が法律で一律に義務付けられているわけではありません。
賞与を支給するかどうかや、その算定方法は、会社の就業規則や賃金規程、労働契約などによって決まります。
例えば、
基本給の何カ月分
会社業績に応じて決定
個人評価によって増減
算定期間の勤務実績を反映
など、さまざまな制度があります。
そのため、時短勤務をした場合の賞与についても、会社の制度を確認する必要があります。
賞与の決まり方
例えば、ある会社の賞与が、
基本給掛ける支給月数掛ける評価係数
という仕組みだったとします。
フルタイム勤務時の基本給が30万円で、賞与が基本給2カ月分なら、
30万円掛ける2カ月
で、
60万円
が基準になります。
時短勤務によって基本給が22万5000円になり、同じ2カ月分を基準にするなら、
22万5000円掛ける2カ月
で、
45万円
になります。
この場合、賞与が減った直接の理由は、
時短勤務だから賞与を25パーセント減らした
というより、
賞与計算の基礎となる基本給が下がった
ことになります。
勤務時間を賞与に反映する会社もある
会社によっては、賞与の算定期間中の勤務時間を計算に反映する場合があります。
例えば賞与の算定期間が6カ月あり、その全期間について時短勤務をしていたとします。
フルタイム正社員が1日8時間、時短勤務者が1日6時間なら、労働時間には差があります。
会社の賞与制度が、
賞与には一定期間の勤務実績も反映する
という仕組みなら、その違いが賞与額に反映される場合があります。
一方で、勤務時間とは別に、
仕事の成果
目標達成度
会社業績
職務上の責任
などを重視する賞与制度もあります。
したがって、
6時間勤務だから賞与も8時間勤務者の75パーセント
と必ず決まるわけではありません。
時短勤務した期間だけを見ることが重要
育児のための時短勤務について考えるときに重要なのは、実際に勤務時間を短縮した期間です。
例えば賞与の算定期間が、
4月から9月
だったとします。
社員が7月から時短勤務を始めた場合、
4月から6月はフルタイム勤務
7月から9月は時短勤務
です。
このような場合に、算定期間6カ月すべてを時短勤務だったものとして扱うのが適切とは限りません。
時短勤務による労働時間の違いを賞与へ反映するのであれば、実際に短時間勤務をした期間との関係を考える必要があります。
育児のための制度利用そのものを不利益に扱う問題
育児のための時短勤務については、もう一つ重要な考え方があります。
育児介護休業法では、育児のための短時間勤務制度を利用したことなどを理由として、労働者に不利益な取り扱いをすることを禁止しています。
つまり、
時短勤務を利用したから評価を最低にする
時短勤務を利用したから賞与を一切支給しない
といったように、制度を利用したこと自体を理由とする不利益な扱いには問題が生じます。
一方で、実際に働かなかった時間や期間に対応して賃金などを取り扱うことまで、すべて禁止されているわけではありません。
この違いが重要です。
時間が短いことと成果が低いことは別問題
例えば、
Aさんは1日8時間勤務
Bさんは1日6時間勤務
だったとします。
Aさんの売上目標達成率が100パーセント。
Bさんも100パーセントだったとします。
それにもかかわらず、
Bさんは時短勤務だから評価を低くする
という運用をすれば、勤務時間と成果を混同することになります。
時短勤務者であっても、短い時間の中で高い成果を上げることはできます。
実際、時短勤務者を重要な戦力として活用する企業では、働く時間ではなく成果を見る考え方が重要になっています。
評価基準そのものを見直す必要がある
従来型の職場では、
長時間会社にいる
残業に対応する
夕方以降の会議にも参加する
といった働き方が、事実上評価されることがあります。
このような評価制度では、時短勤務者は不利になりやすくなります。
例えば午後4時まで勤務する社員は、午後5時からの会議には参加できません。
しかし、
会議に参加できなかった
ことと、
仕事の成果が低かった
ことは同じではありません。
時短勤務者を戦力として活用するのであれば、
何時間会社にいたか
ではなく、
限られた時間で何を達成したか
を見る評価制度が必要になります。
賞与を減らすことと評価を下げることは違う
ここも混同しやすいところです。
例えば時短勤務によって基本給が時間比例で減り、その基本給を基準に賞与額を計算した結果、賞与が少なくなる場合があります。
一方、
時短勤務をしているから人事評価を一段階下げる
というのは別の問題です。
前者は賃金制度上の計算です。
後者は人事評価の問題です。
時短勤務者の賞与を考えるときには、
基本給が変わったため賞与額が変わったのか
勤務実績を反映したのか
成果評価が変わったのか
を分けて考える必要があります。
パートとの違いにも注意する
時短勤務をしている正社員と、短い時間で働くパートを混同しないことも重要です。
例えば両者が、
1日6時間
働いていたとしても、会社の賞与制度上の位置付けが同じとは限りません。
時短勤務の正社員は正社員向け賞与制度の対象となり、パートには別の賞与制度が設けられている場合があります。
反対に、パートにも賞与が支給される会社もあります。
勤務時間が同じだから賞与制度も同じになるわけではありません。
雇用区分と会社の制度を確認する必要があります。
就業規則を確認する意味
時短勤務を利用する前に確認したいのが、会社の就業規則や賃金規程などです。
特に、
賞与の算定基礎
算定期間
勤務時間の反映方法
欠勤や休業の扱い
人事評価の反映方法
などを確認するとよいでしょう。
例えば、
時短勤務後の基本給を基礎にするのか
フルタイム時の基本給を基礎にして勤務時間を調整するのか
成果評価はどのように行うのか
によって賞与額は変わります。
単に、
時短勤務すると賞与は減りますか
と確認するだけでは十分ではありません。
なぜ減るのかまで確認することが重要です。
具体的な金額で確認する
制度の説明を受けるときは、できれば具体的な金額で確認すると分かりやすくなります。
例えば、
現在の基本給は30万円
年間賞与は120万円程度
1日8時間から6時間へ変更
という人なら、
基本給はいくらになるのか
夏の賞与はいくらになる見込みなのか
冬の賞与はいくらになる見込みなのか
と試算してもらいます。
毎月の給料だけを見ると、
月7万円程度の減少
だったとしても、年間賞与まで減れば年間収入への影響はさらに大きくなります。
時短勤務を選択するときは、月収ではなく年収で考えることも重要です。
時短勤務者を戦力化する会社ほど評価制度が重要になる
時短勤務者を単なる両立支援の対象ではなく、重要な戦力として活用するのであれば、評価制度もそれに合わせる必要があります。
例えば、
担当顧客の売上
プロジェクトの達成度
業務改善
顧客満足
仕事の品質
など、成果を評価できる仕組みです。
勤務時間が短くても成果を上げた社員が正当に評価されれば、
時短勤務をするとキャリアで不利になる
という不安を減らすことができます。
反対に、長く会社にいること自体を高く評価する制度のままでは、時短勤務者の戦力化は難しくなります。
結論
時短勤務をすると賞与が減る場合はあります。
しかし、
1日8時間から6時間になったから賞与も自動的に25パーセント減る
と単純に考えることはできません。
賞与は、
基本給
勤務実績
人事評価
会社業績
賞与の算定期間
など、会社ごとのルールによって決まります。
時短勤務によって基本給が減り、その結果として賞与が減る場合もあります。
実際に短く働いた時間や期間が算定に反映される場合もあります。
一方で、時短勤務制度を利用したこと自体を理由として不利益に扱うこととは分けて考える必要があります。
そして何より重要なのは、
働く時間が短い
ことと、
成果が低い
ことは同じではないという点です。
時短勤務者を重要な戦力として活用するのであれば、勤務時間の長さではなく、限られた時間の中でどのような成果を上げたのかを適切に評価する仕組みが必要になります。
時短勤務時の賞与を確認するときは、
減るかどうか
だけではなく、
何を基準に、なぜその金額になるのか
まで確認することが重要です。
参考
日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 「時短」勤務者は重要な戦力 人員確保に効果 管理職の意識変わる
厚生労働省 育児介護休業法のあらまし