短時間正社員とは何か パートではなく正社員のまま短い時間で働ける仕組み編

人生100年時代
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人手不足が深刻になるなか、企業が「正社員は1日8時間、週5日働くもの」という前提を見直す動きが広がっています。

その一つが「短時間正社員」です。

短時間正社員は、フルタイム正社員より1週間の所定労働時間が短いものの、正社員として働く人をいいます。

例えば、通常の正社員が1日8時間働く会社で、1日6時間勤務の正社員として働くような形です。

一見するとパートと似ていますが、短時間正社員は単に勤務時間が短い人ではありません。

正社員としての安定した雇用を維持しながら、働く時間だけを短くできるところに大きな特徴があります。

短時間正社員の意味

厚生労働省は短時間正社員について、フルタイム正社員と比較して1週間の所定労働時間が短い正規型の社員として位置付けています。

典型的には、期間の定めのない労働契約を結び、時間当たりの基本給や賞与、退職金などの算定方法について、同種のフルタイム正社員と同等の扱いを受ける働き方です。

例えば、会社のフルタイム正社員が、

1日8時間

週5日

週40時間

働いているとします。

これに対して短時間正社員が、

1日6時間

週5日

週30時間

働くことがあります。

労働時間は10時間短くなっています。

しかし、

6時間勤務だからパート

になるわけではありません。

正社員という雇用区分を維持したまま、所定労働時間を短くすることができます。

フルタイム正社員との違い

短時間正社員とフルタイム正社員の最も分かりやすい違いは、所定労働時間です。

例えば、

フルタイム正社員は1日8時間

短時間正社員は1日6時間

という違いがあります。

一方で、短時間正社員だからといって、必ずしも仕事内容まで簡単になるわけではありません。

会社の制度によっては、フルタイム正社員と同じ職種で、同じように責任ある仕事を担当することもあります。

つまり、

働く時間

仕事の重要性

を切り離して考えることができます。

ここが短時間正社員を理解する重要なポイントです。

正社員は長時間働ける人という考え方を変える

従来の日本企業では、正社員という働き方とフルタイム勤務が強く結び付いてきました。

正社員になるなら1日8時間働く。

場合によっては残業にも対応する。

転勤や配置転換にも対応する。

こうした働き方が標準とされてきました。

しかし、この条件では働けない人がいます。

例えば育児中の人です。

保育園や学童保育への送迎があれば、夕方までに仕事を終える必要があります。

介護をしている人も同じです。

親の通院や介護サービスとの関係で、毎日フルタイムで働くことが難しい場合があります。

問題は、こうした人たちが「働けない」のではないことです。

6時間なら働ける。

午後4時までなら働ける。

週30時間なら十分に仕事ができる。

という人もいます。

短時間正社員は、こうした人材を正社員として活用するための選択肢になります。

パートとの違い

短時間正社員と混同されやすいのがパートです。

例えば、

Aさんは1日6時間の短時間正社員

Bさんは1日6時間のパート

だったとします。

勤務時間だけを見れば同じです。

しかし、雇用上の位置付けは同じとは限りません。

短時間正社員は、正社員として会社の人事制度の中に位置付けられます。

一方、一般にパートは正社員とは異なる雇用区分として採用されます。

もちろん、現在は同一労働同一賃金の考え方があり、パートだからという理由だけで不合理な待遇差を設けてよいわけではありません。

それでも、

正社員として採用されているのか

パートとして採用されているのか

という雇用区分の違いは残ります。

短時間だから待遇を大きく下げる制度ではない

短時間正社員について重要なのは、

勤務時間が短いから正社員より低い人材として扱う

という制度ではないことです。

例えば、フルタイム正社員が8時間勤務で、短時間正社員が6時間勤務なら、勤務時間に応じて賃金総額が少なくなることはあります。

しかし、

時間当たりの基本給

賞与の算定方法

退職金の算定方法

などについて、同種のフルタイム正社員との均衡を考えることが重要になります。

つまり、

働く時間が75パーセントだから、人材としての価値も75パーセント

という考え方ではありません。

働く時間と人材評価は分けて考える必要があります。

無期雇用のまま勤務時間を短くする意味

短時間正社員の大きな特徴の一つが、期間の定めのない雇用を基本としながら、勤務時間を短くできることです。

これまでフルタイム勤務が難しくなった人には、

正社員を辞める

パートへ転換する

仕事そのものを辞める

という選択肢しかないケースもありました。

短時間正社員という選択肢があれば、

正社員として働き続けながら勤務時間を短くする

ことが可能になります。

これは本人だけでなく、会社にもメリットがあります。

会社が経験者を失わずに済む

例えば、10年間働いてきた社員がいるとします。

会社の商品を知っています。

顧客を知っています。

社内システムを知っています。

取引先との関係もあります。

ところが育児や介護によって8時間勤務が難しくなったとします。

会社が、

フルタイムで働けなければ正社員として働けない

という制度しか持っていなければ、その社員が退職してしまう可能性があります。

会社は10年間かけて蓄積された経験や知識を失います。

新しい社員を採用すれば、

採用

教育

引き継ぎ

に時間と費用がかかります。

一方、短時間正社員として働き続けてもらえれば、その人の経験や能力を会社に残すことができます。

短時間正社員は福利厚生であるだけでなく、人材流出を防ぐ仕組みでもあるのです。

新しい人材を採用する方法にもなる

短時間正社員は、既存社員の離職防止だけに使う制度ではありません。

採用にも利用できます。

例えば企業が、

正社員募集

午前9時から午後6時

週5日勤務

という求人を出したとします。

能力があっても、

午後4時までなら働ける

という人は応募できません。

しかし、

短時間正社員

午前9時から午後4時

という求人を用意すれば、応募できる人が増えます。

育児中の人だけではありません。

介護をしている人

学び直しをしている人

副業や地域活動と両立したい人

体力に合わせて働きたい高齢者

などにも対象を広げられる可能性があります。

人手不足が深刻になるほど、フルタイム勤務という条件を外すこと自体が採用戦略になります。

パートを正社員へ転換する選択肢にもなる

短時間正社員は、パートとして働いている人のキャリア形成にも利用できます。

例えば非常に優秀なパート社員がいたとします。

会社としては正社員になってほしい。

本人も正社員になりたい。

ところが育児のため、1日8時間勤務はできません。

従来型の制度なら、

フルタイムで働けるようになるまでパートのまま

となる可能性があります。

短時間正社員制度があれば、

勤務時間は6時間のまま正社員になる

という選択肢が生まれます。

働く時間を増やさなければキャリアアップできないという問題を緩和できます。

短時間正社員は人手不足時代の働き方になる

日本では今後、働き手そのものが減少していきます。

企業が、

週5日

1日8時間

残業可能

という人だけを採用対象にすれば、人材獲得競争はさらに厳しくなります。

一方で社会には、

8時間は無理だが6時間なら働ける

という人がいます。

重要なのは、この人たちを「働けない人」と考えないことです。

フルタイムでは働けないだけで、仕事をする能力が低いわけではありません。

短時間正社員という仕組みは、

人に仕事時間を合わせてもらう

という従来の発想から、

人が働ける時間に仕事の仕組みを合わせる

という発想への転換ともいえます。

結論

短時間正社員とは、フルタイム正社員より所定労働時間が短くても、正社員として働ける仕組みです。

例えば1日6時間勤務であっても、それだけでパートになるわけではありません。

正社員として安定した雇用を維持しながら、働く時間を短くすることができます。

この仕組みが重要になる背景には、人手不足があります。

育児や介護などによってフルタイムでは働けなくても、短時間なら十分に能力を発揮できる人はいます。

企業にとっても、経験豊富な社員の離職を防ぎ、これまで採用対象にならなかった人材を確保できるメリットがあります。

これから重要になるのは、

正社員だから長く働く

という考え方ではなく、

短い時間でも正社員として成果を出せる

という考え方ではないでしょうか。

短時間正社員は、単に労働時間を短くする制度ではありません。

「正社員とはどのような働き方なのか」という従来の常識そのものを変える仕組みといえます。

参考

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 「時短」勤務者は重要な戦力 人員確保に効果 管理職の意識変わる

日本経済新聞 2026年8月31日朝刊 シフトを選べる企業も

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