賃貸住宅の家賃はなぜ上がるのか 建築費や修繕費の上昇が持ち家以外にも影響する理由編

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住宅価格が上昇すると、賃貸住宅に住んでいる人は、自分にはあまり関係がないと考えるかもしれません。

住宅を購入しなければ、高い建築費を直接支払う必要はないからです。

しかし、建築費や修繕費の上昇は持ち家だけの問題ではありません。

賃貸住宅も誰かが建て、所有し、維持しています。

新しい賃貸マンションやアパートを建てる費用が高くなれば、所有者はその費用を回収できる家賃を設定する必要があります。

既存の賃貸住宅でも、外壁や屋根、給湯器などの修繕費が上昇すれば、所有者の負担が増えます。

こうした住宅コストの上昇は、時間をかけて家賃へ反映される可能性があります。

新築不足時代の住宅問題は、住宅を買う人だけの問題ではありません。

住宅を借りる人にとっても、家賃という形で影響する可能性があるのです。

家賃はどのように決まるのか

賃貸住宅の家賃は、単純に大家が負担した費用だけで決まるわけではありません。

大きな影響を与えるのが、その地域の賃貸住宅の需要と供給です。

例えば駅に近く、通勤や通学に便利な地域で賃貸住宅を探す人が多いとします。

一方、空いている賃貸住宅が少なければ、家賃は高くなりやすくなります。

逆に住宅を借りたい人が少なく、空室が多ければ、大家が家賃を上げようとしても入居者が集まらない可能性があります。

つまり家賃は、

住宅を借りたい人の数

賃貸住宅の供給量

立地

住宅の広さや性能

築年数

などによって決まります。

そこに建築費や修繕費など、住宅を提供する側のコストが影響します。

大家にも住宅コストがかかる

賃貸住宅は入居者が家賃を払えば、その金額がすべて大家の利益になるわけではありません。

住宅を所有し続けるためには、さまざまな費用がかかります。

例えば、

建物の修繕費

住宅設備の交換費

共用部分の維持費

保険料

税金

管理会社への費用

などがあります。

アパートや賃貸マンションを建設するときに借入金を利用していれば、その返済もあります。

空室が発生すれば、その期間は家賃収入が入りません。

つまり賃貸住宅経営では、家賃収入からさまざまな費用を負担して建物を維持しています。

その費用が上昇すれば、所有者の収支は悪化します。

新築賃貸住宅は建築費の影響を受ける

新しく賃貸住宅を建てる場合には、当然建築費がかかります。

例えば以前なら2億円で建てられた賃貸マンションが、資材価格や人件費の上昇によって2億5000万円必要になったとします。

建物から得られる家賃収入が以前と同じなら、投資した資金を回収するのが難しくなります。

そのため新築賃貸住宅では、可能であれば高い家賃を設定する必要が出てきます。

しかし、その家賃を払う入居者がいなければ事業として成立しません。

結果として、

家賃を高くして建てる

建物の規模や仕様を見直す

建設そのものをやめる

といった判断が行われます。

建築費上昇は家賃だけでなく、賃貸住宅の供給量にも影響するのです。

新築賃貸住宅が減ると家賃が上がりやすくなる

建築費が高くなり、新しい賃貸住宅を建てても採算が合わなくなれば、新築供給が減る可能性があります。

例えばある地域で毎年1000戸の新しい賃貸住宅が供給されていたとします。

建築費上昇によって供給が600戸まで減った一方、その地域で住宅を借りたい世帯があまり減らなければ、住宅需給は引き締まります。

空室が減れば、大家は以前ほど家賃を下げて入居者を集める必要がなくなります。

新築住宅だけでなく既存住宅にも需要が流れます。

その結果、周辺の賃貸住宅にも家賃上昇圧力が広がる可能性があります。

建築費上昇が家賃に影響する経路は、

新築住宅が高くなる

という直接的なものだけではありません。

新築供給そのものが減ることで、地域全体の家賃に影響することもあるのです。

既存住宅でも修繕費が上昇する

築年数の古い賃貸住宅なら建築費上昇とは関係ないように思えるかもしれません。

建物はすでに完成しているからです。

しかし、住宅は建てた後も修繕が必要です。

例えば、

外壁

屋根

防水

給排水設備

エアコン

給湯器

キッチン

浴室

などは時間とともに劣化します。

入居者が退去すれば、次の入居者を迎えるために室内を修繕することもあります。

資材価格や人件費が上昇すれば、こうした工事費も高くなります。

つまり建築費上昇の影響は新築時だけではありません。

既存の賃貸住宅を維持する費用にも及びます。

職人不足も家賃と無関係ではない

住宅の修繕には職人が必要です。

大工、電気工事、配管、内装、塗装など、多くの人が住宅の維持を支えています。

こうした人材が不足すれば、工事を依頼する費用が上昇する可能性があります。

さらに費用だけでなく、修繕までの待ち時間が長くなることも考えられます。

例えば空室になった部屋を修繕して次の入居者へ貸したくても、工事業者を確保できなければ募集を始められません。

大家にとっては家賃を得られない期間が長くなります。

職人不足は、

修繕単価の上昇

空室期間の長期化

という二つの形で賃貸住宅経営へ影響する可能性があります。

コストが上がれば必ず家賃を上げられるわけではない

ここは重要です。

大家の修繕費が上昇したからといって、その分をそのまま家賃へ転嫁できるとは限りません。

家賃は市場の需給や契約関係などにも左右されるからです。

例えば周辺に空室が大量にあり、入居者を探している大家が多い地域で一つの物件だけ家賃を大幅に上げれば、入居希望者は別の住宅を選ぶ可能性があります。

その場合、所有者側がコスト上昇を負担せざるを得ないこともあります。

逆に入居希望者が多く、空室が少ない地域では、新規募集時などに高い家賃でも入居者を見つけやすくなる可能性があります。

つまりコスト上昇が家賃へ転嫁できるかどうかは、住宅市場の需給によって大きく異なります。

新規募集の家賃と現在の家賃は分けて考える

賃貸住宅の家賃を考えるときには、新しく入居者を募集するときの家賃と、すでに住んでいる人の家賃を分けて考える必要があります。

空室に新しい入居者を募集する場合には、その時点の市場環境を踏まえて募集条件が設定されます。

周辺家賃が上昇していれば、以前より高い家賃で募集される可能性があります。

一方、すでに賃貸借契約を結んで住んでいる場合には、大家が自由にいつでも好きな金額へ変更できるという単純なものではありません。

契約内容や具体的な事情を確認する必要があります。

そのため、

最近この地域の募集家賃が上がっている

ことと、

現在住んでいる部屋の家賃が直ちに同じ割合で上がる

ことは別の問題です。

持ち家の価格上昇も賃貸需要を増やす

新築住宅価格が上昇すると、住宅を購入したくても購入できない世帯が増える可能性があります。

例えば以前なら5000万円で購入できた住宅が6000万円になったとします。

住宅ローンの負担が大きくなり、購入を延期する人が出てくるかもしれません。

その人たちは住宅を必要としなくなるわけではありません。

賃貸住宅に住み続けます。

すると賃貸住宅への需要が増えます。

つまり新築住宅価格の上昇は、

住宅購入を難しくする

賃貸期間を長くする

賃貸需要が増える

という経路でも家賃に影響する可能性があります。

持ち家市場と賃貸市場は完全に別々ではないのです。

人口減少でも家賃が下がるとは限らない

人口が減れば家賃も下がると考えることがあります。

しかし、住宅価格と同じように家賃も全国一律には動きません。

重要なのは地域ごとの世帯数と住宅供給です。

例えば人口が減っていても、単身世帯が増え、都市部へ世帯が集中していれば、その地域の賃貸需要は強い可能性があります。

一方で新築賃貸住宅の供給が減れば、家賃は下がりにくくなります。

逆に人口や世帯が大幅に減少し、空室が多い地域では、建築費が上昇しても家賃へ転嫁できない可能性があります。

これからの賃貸市場では、

全国の人口

ではなく、

その地域で住宅を借りたい世帯がどれくらいいるのか

を見ることが重要になります。

家賃上昇は老後の生活にも影響する

賃貸住宅で老後まで暮らす場合には、将来の家賃も資金計画に影響します。

例えば現在の家賃が月10万円だから、老後も年間120万円の住居費で済むと考えていたとします。

しかし長期間にわたって家賃水準が上昇すれば、実際の負担はそれより大きくなる可能性があります。

持ち家には固定資産税や修繕費などがあります。

賃貸には家賃があります。

どちらを選んでも住宅費が完全になくなるわけではありません。

特に長寿化によって老後期間が長くなれば、家賃の変化が生涯の住居費に与える影響も大きくなります。

賃貸を選ぶ場合にも、現在の家賃がずっと続くという前提だけで資金計画を作らないことが重要です。

新築不足時代には立地の選択も重要になる

家賃が高い地域で暮らし続けることが難しくなれば、住む場所を広げて考える方法があります。

例えば駅からの距離を少し広げる。

都心から離れた地域を検討する。

住宅の広さを見直す。

こうした選択によって住宅費を抑えられる可能性があります。

元の記事でも、新築不足時代の住宅選びでは立地の選択肢を広げることが重要だと指摘されています。

これは持ち家だけでなく賃貸住宅にも当てはまります。

住宅供給が限られる地域に需要が集中すれば、その地域の家賃は上昇しやすくなります。

住宅費を抑えるには、物件そのものだけでなく立地条件を柔軟に考える必要があります。

結論

賃貸住宅の家賃は、建築費や修繕費と無関係ではありません。

賃貸住宅も誰かが建設し、所有し、維持しています。

新しいアパートやマンションを建てるための資材費や人件費が上昇すれば、新築賃貸住宅の事業コストは高くなります。

そのコストに見合う家賃を得られなければ、新しい賃貸住宅そのものが建てられなくなる可能性があります。

新築供給が減る一方で住宅を借りたい世帯が多ければ、地域の賃貸住宅の需給が引き締まり、家賃上昇につながる可能性があります。

既存住宅でも同じです。

建物を長く利用するには、外壁、屋根、設備などを修繕しなければなりません。

資材価格や職人の人件費が上昇すれば、大家が負担する維持費も増えます。

ただし、大家の費用が増えたからといって、必ずそのまま家賃へ転嫁できるわけではありません。

空室が多い地域では家賃を上げにくく、需要が強く供給が少ない地域では上げやすくなります。

家賃を最終的に左右するのは、住宅コストだけでなく地域の需要と供給です。

さらに新築住宅価格が上昇し、住宅購入を延期する世帯が増えれば、賃貸住宅への需要が強まる可能性もあります。

新築不足時代の住宅問題は、持ち家を購入する人だけの問題ではありません。

住宅を建てる費用が上がり、修繕する費用が上がり、住宅供給が減れば、その影響は賃貸住宅の家賃にも広がります。

だからこそ賃貸住宅で暮らす場合にも、現在の家賃だけを見るのではなく、将来の家賃上昇や地域の住宅供給まで含めて長期的な住居費を考える必要があるのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日 朝刊 新築不足時代の住宅選び 立地や資金計画を見直し

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