ワーケーションとは何か 観光地で働く人を増やすことが地域経済につながる仕組み編

人生100年時代
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観光地を訪れる人というと、休日に旅行する観光客を思い浮かべる人が多いでしょう。

土曜日に旅行へ行く。

温泉に泊まる。

観光施設を訪れる。

日曜日に自宅へ戻る。

この場合、仕事をする場所と旅行をする場所は完全に分かれています。

ところが、パソコンとインターネットがあれば会社のオフィス以外でも働ける仕事が増えたことで、働く場所と旅行先を組み合わせる考え方が広がりました。

観光地に滞在しながら仕事をする。

仕事が終わったら温泉へ行く。

休日には地域を観光する。

家族と一緒に長期間滞在する。

こうした働き方がワーケーションです。

地方にとって重要なのは、単に新しい働き方が生まれることではありません。

これまで休日にしか来なかった人が平日にも地域を訪れ、通常の旅行より長く滞在する可能性があります。

その結果、宿泊、飲食、買い物などの地域消費を増やせる可能性があるのです。

ワーケーションとは何か

ワーケーションとは、仕事を意味するワークと休暇を意味するバケーションを組み合わせた言葉です。

一般的には、自宅や会社のオフィスを離れ、観光地や地方などに滞在しながら仕事をする働き方を指します。

午前中はオンライン会議に参加する。

午後もパソコンで仕事をする。

仕事が終わったら地域の飲食店へ行く。

休日には観光する。

このように仕事と滞在を組み合わせます。

重要なのは、旅行中に少し仕事をすることだけではありません。

働く場所を柔軟にすることで、これまで旅行先だった地域を一定期間生活する場所として利用できることです。

通常の旅行とは何が違うのか

通常の旅行では、基本的に休暇中に地域を訪れます。

そのため旅行できる日程が休日に集中します。

土曜日と日曜日。

大型連休。

年末年始。

夏休み。

こうした時期です。

ワーケーションでは、滞在中に仕事ができるため、平日を含めた旅行が可能になります。

たとえば金曜日だけ休暇を取って2泊するのではなく、月曜日から金曜日まで現地で仕事をし、土曜日と日曜日に観光することも考えられます。

仕事を完全に休まなくても滞在できるため、旅行期間を延ばしやすくなるわけです。

長期滞在につながりやすい

ワーケーションが地域経済で注目される理由の一つが滞在期間です。

日帰り観光客なら、その地域で使うお金は食事や買い物などに限られます。

1泊すれば宿泊費が加わります。

さらに数日滞在すれば、宿泊費、朝食、昼食、夕食、買い物など消費する機会が増えます。

つまり、一人の訪問者が何日滞在するかによって地域への経済効果が変わります。

観光客の人数だけを増やすのではなく、一人当たりの滞在時間を長くする。

ワーケーションにはその役割が期待できます。

平日の需要を作れる

観光業には需要が特定の日に集中しやすいという特徴があります。

土曜日はホテルが満室になる。

日曜日の夜から平日は空室が増える。

大型連休には観光客が集中する。

それ以外の時期には利用者が減る。

こうした需要の偏りがあります。

ホテルや観光施設には固定費がかかります。

建物の維持費や人件費などは、利用者が少ない日でも発生します。

そのため、平日の利用者を増やすことには大きな意味があります。

ワーケーション利用者が平日に滞在すれば、これまで空いていた客室や施設を活用できます。

新しい建物を増やさなくても、既存施設の稼働率を高められる可能性があります。

働くための環境が必要になる

観光地で仕事をするには、宿泊施設だけでは十分ではありません。

安定したインターネット環境が必要です。

机や椅子も必要です。

オンライン会議ができる場所も必要になります。

場合によっては個室や会議室が必要です。

そこで地域にコワーキングスペースなどを整備します。

仕事をする場所と宿泊施設を組み合わせることで、長期滞在しながら働ける環境を作ります。

観光地に美しい自然や温泉があっても、仕事ができる環境がなければワーケーション利用者を呼び込むことは難しくなります。

観光インフラだけでなく仕事のインフラも必要なのです。

廃校をワーケーション施設に活用できる

ワーケーション施設を新築する方法もありますが、地域にある遊休施設を利用する方法があります。

その一つが廃校です。

学校には複数の教室があります。

広いスペースがあります。

体育館や校庭もあります。

こうした施設を改修し、仕事や交流の場所へ変えることができます。

記事では兵庫県淡路市で旧小学校をワーケーション施設として活用する事業が、2025年度にローカル10000プロジェクトへ採択された事例が紹介されています。

子どもの減少によって学校としての需要がなくなった施設に、働く場所という新しい需要を作るわけです。

人口減少によって生まれた遊休資産と、新しい働き方を組み合わせる取り組みと考えることができます。

地域の飲食店にもお金が落ちる

ワーケーション利用者は、仕事をするだけではありません。

数日間滞在すれば生活します。

朝食を食べる。

昼食を食べる。

夕食を食べる。

コンビニやスーパーで買い物をする。

仕事が終われば飲食店へ行く。

休日には観光施設を利用する。

そのため、ワーケーション施設だけではなく周辺の事業者にも消費が広がる可能性があります。

地域に長く滞在してもらうことは、地域内でお金を使う機会を増やすことでもあります。

通常の観光では行かない場所も利用される

短期間の観光では、有名な観光施設を中心に回ることが多くなります。

しかし数日間滞在すると、生活に近い行動が増えます。

地元のスーパーへ行く。

近所の飲食店へ行く。

朝に散歩する。

地域の商店を利用する。

こうした行動です。

その結果、有名な観光施設だけではなく、地域の日常的な店舗にも消費が広がる可能性があります。

ワーケーションは、旅行者を一時的な観光客から短期間の住民に近い存在へ変える面があります。

企業側にも利用する理由が必要になる

地域がワーケーション施設を作っただけで利用者が来るとは限りません。

企業側にも利用する理由が必要です。

集中して仕事をする。

チームで合宿する。

新しい企画を考える。

社員同士の交流を深める。

地域企業と交流する。

こうした目的です。

単に観光地で仕事ができますというだけでは、自宅や会社で働く場合との違いが小さくなります。

わざわざ移動費や宿泊費を負担してでも利用したい価値を作る必要があります。

地域の自然、文化、企業、人材などと仕事を組み合わせることが重要になります。

企業研修と組み合わせる方法もある

ワーケーション施設を企業研修やチーム活動に利用することもできます。

普段とは違う場所で会議をする。

複数日かけて新規事業を検討する。

地域企業を訪問する。

地域課題について考える。

農業や地域産業を体験する。

こうしたプログラムを提供すれば、単なる仕事場の貸し出しではなくなります。

施設利用料だけでなく、研修や体験サービスなどへ事業を広げることもできます。

地域側が提供する価値を増やすことで、一人当たりの消費額を高められる可能性があります。

関係人口を増やすきっかけになる

ワーケーションの効果は、一回の滞在で終わるとは限りません。

初めて仕事で地域を訪れる。

地域の人と知り合う。

別の機会にも訪れる。

地域企業と仕事を始める。

副業で地域のプロジェクトに参加する。

将来は移住する。

このように関係が深まる可能性があります。

移住するほどではなくても、地域と継続的な関係を持つ人は関係人口と呼ばれます。

ワーケーションは、地域を知らなかった人がその土地と接点を持つ入口になり得ます。

移住につながる可能性もある

地方移住を考えていても、いきなり生活拠点を移すことには大きなリスクがあります。

仕事は続けられるのか。

生活は便利なのか。

地域になじめるのか。

冬の生活はどうなのか。

実際に暮らしてみなければ分からないことがあります。

ワーケーションなら、仕事を続けながら一定期間地域に滞在できます。

何度も訪れることで、その地域で生活するイメージを持ちやすくなります。

すべての利用者が移住するわけではありません。

それでも、観光だけでは分からない地域の日常を知ってもらう機会になります。

新しい施設を作れば成功するわけではない

ワーケーション政策で注意したいのは、施設整備そのものが目的になってしまうことです。

高速インターネットを整備した。

コワーキングスペースを作った。

廃校をきれいに改修した。

それだけでは利用者が来るとは限りません。

誰が利用するのか。

なぜその地域まで来るのか。

何日滞在するのか。

利用料金はいくらなのか。

企業が継続的に利用するのか。

施設周辺でどれくらい消費するのか。

こうした需要を考える必要があります。

地方創生では、施設を作ったことではなく、作った後に人とお金が継続的に動くかどうかが重要になります。

観光客の人数より滞在時間を見る

地域経済を考えるとき、観光客数だけを見ると実態を見誤ることがあります。

100万人が短時間だけ訪れる地域。

50万人が何泊もする地域。

人数だけなら前者が多くなります。

しかし、一人当たりの消費額まで考えると結果は変わる可能性があります。

ワーケーションでは、訪問者数を増やすこと以上に、滞在時間を長くすることが重要です。

長く滞在すれば、宿泊、飲食、買い物など地域でお金を使う機会が増えるからです。

観光地を訪れる人の数から、地域で過ごす時間へ視点を変える必要があります。

結論

ワーケーションとは、仕事を意味するワークと休暇を意味するバケーションを組み合わせ、観光地や地方などに滞在しながら働くスタイルです。

仕事を完全に休まなくても地域に滞在できるため、通常の旅行より長期滞在につながる可能性があります。

さらに平日に利用してもらえれば、ホテルや観光施設などの閑散日の需要を作ることもできます。

地域側にとって重要なのは、ワーケーション施設の利用料だけではありません。

利用者が数日間滞在すれば、飲食、宿泊、買い物、観光などへ消費が広がります。

地域の人や企業との交流が生まれれば、関係人口の増加や将来の移住、起業につながる可能性もあります。

一方で、コワーキングスペースや通信環境を整備するだけでは利用者は増えません。

その地域で働く理由、その地域に滞在する理由を作る必要があります。

観光客に一度来てもらうだけではなく、働きながら長く滞在してもらい、地域の日常の中でお金を使ってもらう。

ワーケーションとは、新しい働き方を利用して観光と仕事の境界をなくし、地域との接点と滞在時間を増やす地方創生の仕組みなのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 地元密着ビジネスが最多 総務省採択、昨年度108件

日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 神奈川・小田原の交付金事業 尊徳が導く相互扶助の輪

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