変動10年の金利はどう決まるのか 基準金利に0.66を掛けて半年ごとに利率が変わる仕組み編

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個人向け国債の変動10年は、名前の通り満期が10年の変動金利型の商品です。

最大の特徴は、購入したときの金利が10年間固定されるのではなく、半年ごとに適用利率が見直されることです。

そのため、市場金利が上昇すれば受け取れる利子が増える可能性があります。

では、その金利は誰がどのように決めているのでしょうか。

現行制度では、変動10年の適用利率は「基準金利に0.66を掛けたもの」を基本として決まります。

この仕組みを理解するには、まず基準金利とは何か、そしてなぜ0.66を掛けるのかを理解する必要があります。

基準金利とは変動10年の金利を決める土台

変動10年の適用利率は、何となく決められているわけではありません。

市場で形成されている国債の金利をもとに決められています。

その出発点となるのが基準金利です。

変動10年の場合、基準金利は10年固定利付国債の入札結果をもとに算出されます。

10年固定利付国債とは、国が市場で発行している満期10年の国債です。

銀行、生命保険会社、証券会社などさまざまな投資家が取引しています。

その国債の市場金利を利用して、個人向け国債の変動10年の金利も決められているのです。

つまり変動10年は、市場の長期金利と無関係に金利が設定される商品ではありません。

市場金利の動きが基準金利を通じて適用利率に反映されます。

10年固定利付国債の入札とは何か

国は国債を発行して市場から資金を調達しています。

国債を発行するときには、金融機関などが参加する入札が行われます。

投資家がどのような価格や利回りなら国債を購入したいのかを提示し、その結果によって国債の市場での利回りが形成されます。

変動10年では、この10年固定利付国債の入札結果が重要になります。

具体的には、原則として利子計算期間の開始日の前月までの最後に行われた10年固定利付国債の入札における平均落札価格をもとに複利利回りを計算し、それを基準金利とします。

初回については、募集期間開始日までの最後に行われた入札が基準になります。

つまり変動10年の金利は、国が一方的に好きな数字を設定しているわけではありません。

国債市場で形成された実勢金利を土台にして決められています。

適用利率は基準金利そのものではない

ここで注意したいのは、基準金利がそのまま変動10年の適用利率になるわけではないことです。

現行制度では、

基準金利に0.66を掛ける

という方法で適用利率を算出します。

例えば基準金利が年2パーセントだったとします。

この場合、

2パーセントに0.66を掛けると1.32パーセント

となります。

したがって、この例では変動10年の適用利率は年1.32パーセントになります。

基準金利が年3パーセントなら、

3パーセントに0.66を掛けると1.98パーセント

です。

このように市場金利が上昇すれば、変動10年の適用利率も上昇していきます。

ただし市場の10年金利がそのまま100パーセント反映されるわけではなく、おおむね66パーセントが反映される設計になっています。

なぜ0.66を掛けるのか

では、なぜ基準金利をそのまま使わず、0.66を掛けるのでしょうか。

個人向け国債の変動10年には、一般的な市場で取引される国債にはない特徴があります。

代表的なのが中途換金制度です。

変動10年は、発行から1年が経過すれば原則としていつでも中途換金できます。

一般的な国債を途中で売却すると、その時点の市場価格によっては元本割れすることがあります。

一方、個人向け国債には国による中途換金の仕組みがあります。

こうした個人投資家にとって有利な商品性が設けられているため、市場で10年固定利付国債を10年間保有した場合とまったく同じ金利を付ける仕組みにはなっていません。

10年固定利付国債を10年間保有した場合に得られる金利収入とのバランスや、中途換金できるという商品性などを総合的に考慮して、0.66を掛ける仕組みが採用されています。

以前は0.8パーセントを引いていた

実は変動10年の金利計算方法は、最初から現在の方式だったわけではありません。

以前は、

基準金利から0.8パーセントを差し引く

という方法が使われていました。

例えば基準金利が年2パーセントなら、

2パーセントから0.8パーセントを差し引いて年1.2パーセント

となります。

ところが、この方式には低金利になるほど問題が生じやすいという特徴がありました。

例えば基準金利が年1パーセントなら、0.8パーセントを引くと年0.2パーセントしか残りません。

市場金利が低くなると、個人向け国債の適用利率が極端に低くなってしまいます。

そこで2011年7月発行分から、現在の掛け算方式に変更されました。

低金利時でも適用利率が低くなりすぎないようにすることが目的でした。

引き算方式と掛け算方式では有利になる金利水準が違う

引き算方式と掛け算方式を比べると興味深い特徴があります。

低金利では現在の掛け算方式が有利になりやすい一方、金利が高くなると以前の引き算方式が有利になる場合があります。

例えば基準金利が年1パーセントの場合を考えます。

以前の方式なら、

1パーセントから0.8パーセントを差し引いて0.2パーセント

です。

現在の方式なら、

1パーセントに0.66を掛けて0.66パーセント

です。

現在の方式の方がかなり高くなります。

一方、基準金利が年4パーセントならどうでしょうか。

以前の方式なら、

4パーセントから0.8パーセントを差し引いて3.2パーセント

です。

現在の方式なら、

4パーセントに0.66を掛けて2.64パーセント

です。

今度は以前の方式の方が高くなります。

つまり現在の掛け算方式は、低金利時に個人投資家を守る効果が大きい一方、金利が大きく上昇すると市場金利との差が広がりやすくなる特徴があります。

半年ごとに基準金利を計算し直す

変動10年が金利上昇局面に強い理由は、0.66という数字そのものより、半年ごとに金利を見直す仕組みにあります。

例えば1000万円の変動10年を購入したとします。

購入時の基準金利が年2パーセントなら、適用利率は年1.32パーセントになります。

その半年後、市場金利が上昇し、次の基準金利が年2.5パーセントになったとします。

すると新しい適用利率は、

2.5パーセントに0.66を掛けて年1.65パーセント

となります。

さらに半年後、基準金利が年3パーセントになれば、適用利率は年1.98パーセントになります。

同じ変動10年を持ち続けていても、市場金利の上昇に応じて受け取る利子が増えていく可能性があるのです。

固定金利の国債とはここが違う

固定5年や固定3年では、発行時に決まった利率が満期まで変わりません。

例えば固定5年を年1.5パーセントで購入した場合、その後市場金利が年3パーセントまで上昇しても、保有している固定5年の利率は年1.5パーセントのままです。

反対に市場金利が年0.5パーセントまで低下しても、年1.5パーセントを維持できます。

これが固定金利です。

変動10年では半年ごとに金利を見直すため、市場金利が上がれば有利になりやすい一方、市場金利が下がれば適用利率も低下する可能性があります。

どちらが有利なのかは、今後の金利環境によって変わります。

最低でも年0.05パーセントは保証される

変動10年にはもう一つ重要な仕組みがあります。

最低金利です。

基準金利に0.66を掛けた結果が非常に低くなったとしても、適用利率には年0.05パーセントという下限があります。

例えば基準金利が年0.05パーセントなら、

0.05パーセントに0.66を掛けると0.033パーセント

になります。

しかし実際には最低金利が適用されるため、年0.05パーセントになります。

一方で金利の上限は設定されていません。

そのため、市場金利が上昇すれば一定の割合で適用利率も上昇していく仕組みになっています。

利子は半年ごとに受け取る

変動10年では、利子は年2回支払われます。

例えば額面1000万円、適用利率が年2パーセントだったとします。

単純化すると1年間の税引前利子は20万円です。

半年分なら10万円になります。

次の半年の適用利率が年2.5パーセントへ上昇すれば、その半年分の税引前利子は12万5000円になります。

このように半年ごとに新しい適用利率が決まり、その利率をもとに次の利子が計算されます。

なお、実際に受け取る利子からは税金が差し引かれます。

購入したときの金利だけを見てはいけない

変動10年を検討するときに注意したいのが、募集時点の適用利率だけで10年間の収益を判断できないことです。

例えば購入時の適用利率が年1.5パーセントだったとしても、それが10年間続くわけではありません。

市場金利が上昇すれば2パーセント、2.5パーセントと上がっていく可能性があります。

反対に市場金利が低下すれば1パーセント、0.5パーセントと下がる可能性もあります。

変動10年では「今いくらなのか」と同時に「これから金利がどう動くのか」が重要になります。

もっとも、10年後の金利を正確に予測することはできません。

だからこそ、半年ごとに市場金利を反映する仕組みそのものに意味があります。

金利上昇時代に変動10年が注目される理由

長く超低金利が続いていた時代には、変動金利であることのメリットを実感しにくい状況が続いていました。

しかし市場金利が上昇すると事情が変わります。

固定金利商品では、購入時の利率が満期まで固定されます。

購入直後にさらに金利が上昇しても、その恩恵を受けることはできません。

変動10年なら半年ごとに適用利率が見直されます。

つまり「今後さらに金利が上がるかもしれない」という局面では、金利上昇をある程度追いかけることができます。

金利のある時代になったことで、変動10年の商品設計そのものが改めて注目されるようになっているのです。

結論

個人向け国債の変動10年は、市場の10年固定利付国債の入札結果をもとに基準金利を算出し、その基準金利に0.66を掛けて適用利率を決める仕組みです。

そして、この計算を半年ごとに繰り返します。

市場金利が上昇すれば基準金利も上昇し、それに応じて変動10年の適用利率も上昇する可能性があります。

一方、市場金利が低下すれば適用利率も低下します。ただし年0.05パーセントの最低金利が設定されています。

0.66を掛けるのは、10年固定利付国債を10年間保有した場合の金利収入とのバランスや、発行後1年で中途換金できるといった個人向け国債の商品性を考慮しているためです。

変動10年を見るときには、現在表示されている利率だけを見るのではなく、「10年国債の市場金利を半年ごとに取り込みながら利率が変わる商品」と理解することが重要です。

この仕組みが分かると、なぜ金利上昇局面では変動10年が注目され、逆に金利低下局面では固定金利の商品が有利になる可能性があるのかも理解しやすくなります。

参考

日本経済新聞 2026年8月29日朝刊 <ステップアップ>「変動10年」金利上昇に強く 中途売却でも元本確保

財務省 個人向け国債の金利についてのよくある質問

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