企業では、売上や利益について年度や月ごとの予算を立て、実績との差を確認する予実管理が行われています。
たとえば、今月の売上予算が1000万円だったのに、実績が960万円だったとします。40万円の未達です。
予実管理では、単に「40万円足りなかった」と確認するだけでは十分ではありません。なぜ未達になったのかを掘り下げ、さらに翌月の具体的な行動まで決める必要があります。
ところが実際の会議では、原因を分析したところで「来月は頑張ります」「営業を強化します」と終わってしまうことがあります。
これでは数字を分析しただけで、翌月の行動はほとんど変わりません。
予実管理で重要なのは、過去の数字を説明することではなく、未来の数字を変えることです。
予実管理とは何か
予実管理とは、予算と実績を比較し、その差が生じた原因を分析して、経営や業務の改善につなげる仕組みです。
基本になるのは、予算、実績、差異の三つです。
たとえば売上予算1000万円に対して実績960万円なら、40万円のマイナス差異が発生しています。
しかし、ここで「売上が40万円不足した」と確認するだけでは、経営管理として十分ではありません。
売上は一般に、販売数量と販売単価などに分解できます。
販売単価は予定通りだったものの販売数量が減ったのであれば、売上未達の原因は数量にあります。
さらに、なぜ数量が減ったのかを調べます。
主要顧客への訪問回数が減ったのかもしれません。競合商品に顧客を奪われた可能性もあります。商品の供給不足が原因かもしれません。
数字の差を確認し、その原因を段階的に掘り下げていくのが予実分析です。
原因分析だけでは数字は変わらない
予実管理で陥りやすいのが、原因を突き止めたことで仕事が終わったと思ってしまうことです。
参考記事では、売上未達の原因を販売数量の減少まで掘り下げ、さらに主要得意先への訪問回数が繁忙を理由に半分になっていたケースが示されています。
ここまで分かれば、大きな前進です。
しかし、原因が分かっただけでは翌月の売上は増えません。
「営業を強化する」
「もっと訪問する」
「意識を高める」
こうした方針を掲げても、実際の行動が変わらなければ結果も変わりません。
予実管理は過去の数字について説明するためだけの仕組みではありません。
分析によって得られた情報を、次の具体的な行動へ変換するところまでが予実管理です。
頑張りますではアクションにならない
予実会議では、「頑張ります」「徹底します」「意識します」といった言葉が使われがちです。
しかし、これらは目標や心構えであって、具体的なアクションではありません。
参考記事でも、こうした言葉は行動を決めたような気にさせるだけで、実際には何も決めていないと指摘されています。
では、何を決めればよいのでしょうか。
重要なのは、何を、誰が、いつまでに行うのかを明確にすることです。
たとえば主要顧客への訪問回数が減っていたのであれば、単に「訪問を増やす」と決めるのではありません。
上位10社への訪問を月2回に戻す。
営業部長が担当する。
今月中に訪問予定を組み直す。
来月の予実会議で販売数量の推移を確認する。
ここまで決めれば、具体的な行動になります。参考記事の誌面でも、この四つの項目によってアクションを具体化する例が示されています。
自分たちで動かせる数字に集中する
予実管理では、差異の原因を自社で管理できるものと管理できないものに分けることも重要です。
たとえば営業担当者の訪問回数は、自社で変えられます。
広告の実施回数や商品の提案件数、製造工程の改善なども、自社の行動によって変えられます。
一方、天候不順や原材料価格の高騰、為替相場などは、一企業の努力だけでは変えられません。
もちろん外部環境への対応策を考えることは必要です。
しかし、変えることのできない原因について長時間議論しても、翌月の数字が改善するとは限りません。
参考記事では、管理できない要因については来期予算の前提を見直す材料として記録しておけばよいという考え方が示されています。
予実会議では、自分たちの行動によって変えられる要因に時間を使うことが重要なのです。
翌月は前回決めた行動から確認する
予実管理では、毎月新しい数字だけを見るのではありません。
前回の会議で決めたアクションが実行されたかを確認する必要があります。
主要顧客への訪問回数を月2回へ戻すと決めたのであれば、本当に戻ったのかを確認します。
戻ったのであれば、販売数量は回復したのかを確認します。
販売数量が回復していれば、そのアクションが効果を上げている可能性があります。
その場合は継続します。
一方、訪問回数を増やしても販売数量が回復していなければ、原因についての仮説が間違っていた可能性があります。
そこで別の施策を考えます。
参考記事でも、翌月の予実会議は数字を見る前に、先月決めたアクションの検証から始めることが提案されています。
この繰り返しによって、予実管理が単なる数字の確認から経営改善の仕組みに変わっていきます。
予実管理はPDCAそのもの
予実管理の流れは、PDCAサイクルと重なります。
まず予算を立てます。
これがPlanです。
次に日々の営業や製造などの活動を実行します。
これがDoです。
実績が出たら予算との差異を確認し、原因を分析します。
これがCheckです。
そして分析した原因をもとに、次に何をするのかを具体的に決めて実行します。
これがActionです。
参考記事でも、予算を立て、日々の商売を実行し、差異を把握して原因を掘り下げ、アクションを決めて実行する一連の流れをPDCAサイクルそのものと説明しています。
多くの企業でPDCAがうまく回らない原因の一つは、CheckとActionが曖昧だからです。
数字を見て「悪かった」と確認するだけではCheckとして不十分です。
「来月は頑張る」と決めるだけではActionとして不十分です。
差異を具体的な原因まで掘り下げ、その原因に対して誰が何をいつまでに行うのかを決める。
そこまで行って初めてPDCAが回り始めます。
予実会議を反省会ではなく作戦会議にする
予実会議には二つの役割があります。
一つは、過去に何が起きたのかを理解することです。
もう一つは、これから何をするのかを決めることです。
経営にとってより重要なのは後者です。
売上未達について長時間議論しても、最後が「来月は頑張ります」で終われば、会議後の行動は変わりません。
一方で、原因を掘り下げたうえで、誰が、何を、いつまでに行うのかを決めれば、会議の翌日から行動を変えられます。
参考記事が示しているのも、差異分析が反省会で終わるか作戦会議になるかの分かれ目は、具体的な行動を決めて実行に移せるかどうかという点です。
予実管理の目的は、予算と実績の差をきれいに説明することではありません。
差異から学び、次の行動を変え、その結果として未来の数字を変えることなのです。
結論
予実管理とは、予算と実績を比較して差異を確認するだけの仕組みではありません。
差異が生じた原因を掘り下げ、その原因を具体的なアクションへ変換し、翌月に結果を検証するところまでが予実管理です。
特に重要なのが、何を、誰が、いつまでに行うのかを決めることです。
「営業を強化する」「意識する」「頑張る」といった言葉だけでは行動は変わりません。
予算を立て、実行し、差異を分析し、次の行動を決める。
そして翌月、その行動が数字を変えたかを確認する。
この循環が回って初めて、予実管理は過去を振り返るための反省会ではなく、未来の数字をつくるための経営管理になります。
参考
企業実務 2026年9月号 猫と学ぶ経理力の磨き方 第9話 頑張りますで終わらせたら予実管理ちゃうで