ゴルフ会員権にはいくつかの種類があります。
その代表的な仕組みの一つが預託金制です。
預託金制という言葉だけを見ると、銀行の預金のようにゴルフ場へお金を預けているだけのように思えるかもしれません。
しかし、預託金制のゴルフ会員権はそれほど単純ではありません。
ゴルフ場を会員として優先的に利用できる権利と、一定の条件を満たした後に預けたお金の返還を求める権利などが組み合わさっています。
そして重要なのは、預託金の額面が1000万円だからといって、その会員権が1000万円で売れるとは限らず、将来1000万円が確実に返ってくるとも限らないことです。
今回は、預託金制ゴルフ会員権の仕組みを見ていきます。
預託金とは何か
預託金とは、会員がゴルフ場の経営会社などに預けるお金です。
例えば、新しくゴルフクラブへ入会するときに1000万円の預託金を支払ったとします。
この1000万円は、通常の商品を1000万円で購入するのとは性格が異なります。
預託金ですから、一定の条件のもとで将来返還を求めることのできるお金です。
ゴルフ場側から見れば、預託金は会員から預かっている資金という性格を持ちます。
実際、国税庁も預託形態のゴルフ会員権について、発行時にゴルフクラブ側が受け取る預託金を預り金として整理しています。
ただし、会員がいつでも自由に返還を求められる普通預金のようなものではありません。
ここが預託金制を理解する重要なポイントです。
プレー権と預託金が一体になっている
預託金制ゴルフ会員権は、預託金だけで成り立っているわけではありません。
代表的には、ゴルフ場施設を一般利用者より有利な条件で利用する権利、預託金返還請求権、年会費を支払う義務などを含んだ契約上の地位です。
つまり、
ゴルフ場を会員として利用できる
一定の条件を満たせば預託金の返還を求められる
年会費などを支払う
といった権利と義務が一つの会員権にまとまっています。
そのため、預託金だけを切り離して考えると仕組みを理解しにくくなります。
会員としてゴルフ場を利用している間は、施設利用権と預託金返還請求権などが一体となって会員権を構成しているのです。
預託金返還請求権とは何か
預託金制で特に重要なのが預託金返還請求権です。
文字どおり、預けているお金を返してもらうよう請求できる権利です。
ただし、多くの場合、預託した直後から自由に返還請求できるわけではありません。
一定の据置期間が設定され、その期間が経過した後に退会することなどが条件になります。
例えば1000万円を預託し、据置期間が設定されているゴルフクラブを考えてみます。
会員として在籍している間は、その1000万円だけを自由に引き出すという性質ではありません。
据置期間が経過し、会員がクラブから退会するなど契約上の条件を満たした段階で、預託金返還請求権を行使することになります。
つまり預託金は、普通預金のように必要になったらすぐ引き出せるお金ではないのです。
退会するとプレー権はなくなる
預託金の返還を受ける場合には、通常、退会することになります。
退会すれば当然、そのゴルフ場を会員として利用する権利もなくなります。
ここで会員権の性格が変わります。
会員である間は、
施設を優先的に利用する権利
預託金返還請求権
年会費などを支払う義務
などが一体になっています。
ところが退会すると、施設を会員として利用する権利を自ら手放すことになります。
その結果、預託金の返還を受けるという金銭債権の回収へと変わっていきます。
単純に会員権をゴルフ場へ売り戻しているわけではないところがポイントです。
会員権を第三者へ売却するとどうなるのか
退会して預託金の返還を求める方法とは別に、会員権そのものを第三者へ売却する方法があります。
例えばAさんが預託金1000万円のゴルフ会員権を持っているとします。
Aさんがゴルフをしなくなり、Bさんがそのゴルフ場の会員になりたいと考えました。
そこでAさんがBさんへ会員権を売却します。
この場合、単にゴルフ場を利用する権利だけを売るわけではありません。
施設利用権や預託金返還請求権などを含む会員としての地位が一体として移転するのが基本的な考え方です。
その後、Bさんはゴルフ場の承認や入会審査を受け、名義書換などの手続きを行います。
手続きが完了すれば、Bさんが新しい会員としてゴルフ場を利用することになります。
預託金1000万円でも1000万円で売れるとは限らない
預託金制を理解するときに最も注意したいのが、預託金の額面と会員権の市場価格は別物だということです。
例えば預託金の額面が1000万円だったとします。
だからといって、その会員権を市場で1000万円で売れるとは限りません。
市場価格が300万円になっていることもあれば、逆に人気の高いゴルフ場なら額面とは異なる高い市場価値がつく可能性もあります。
なぜなら、会員権の市場価格は預託金だけで決まるわけではないからです。
立地、コースの人気、予約の取りやすさ、会員数、ゴルフ場の経営状態、買いたい人と売りたい人の需給などが影響します。
預託金額は会員権の一つの要素にすぎないのです。
預託金が必ず額面通り戻るとは限らない
さらに重要なのが、預託金にはゴルフ場経営会社の信用リスクがあることです。
例えば1000万円を預託していたとしても、ゴルフ場経営会社の経営状態が悪化すれば、1000万円全額を予定どおり返還できない可能性があります。
会社の経営再建が必要になり、民事再生などの手続きが行われれば、預託金の一部が切り捨てられる場合もあります。
例えば1000万円の預託金について、再生計画によって大部分がカットされる可能性もあります。
そうなれば、当初1000万円を預けていたからといって1000万円全額を取り戻せるわけではありません。
預託金はゴルフ場経営会社に対する権利でもあるため、その会社の財務状態が非常に重要なのです。
なぜ預託金返還問題が起きたのか
預託金制では、ゴルフ場側が多数の会員から大きな資金を集めることができます。
例えば1000人から1000万円ずつ預託金を集めれば、単純計算で100億円になります。
ゴルフ場の開発には土地取得や造成、クラブハウス建設など巨額の資金が必要です。
その資金調達手段として預託金制度が利用されてきました。
ところが問題になるのは、将来返還時期を迎えたときです。
預託金は返還を求められる可能性のあるお金です。
多くの会員が同じ時期に返還を求めれば、ゴルフ場側には巨額の資金が必要になります。
経営状態が悪ければ、返したくても返せないという問題が起きます。
特にゴルフ会員権価格が大幅に下落した時期には、この問題が表面化しました。
預託金と市場価格のどちらを見るべきか
ゴルフ会員権を購入するときには、預託金額だけを見て判断するのは危険です。
例えば、
預託金額1000万円
市場価格100万円
という会員権があったとします。
一見すると、100万円で買えば将来1000万円が戻ってきて900万円得をするように見えるかもしれません。
しかし実際には、それほど単純ではありません。
返還を請求できる条件はどうなっているのか。
据置期間はどうなっているのか。
ゴルフ場経営会社には十分な返還能力があるのか。
会員権の契約内容はどうなっているのか。
こうした点を確認する必要があります。
市場価格が預託金額を大幅に下回っている場合には、市場参加者が返還可能性などのリスクを織り込んでいることも考えられます。
額面だけを見ればお得に見えても、実際の価値は全く違う可能性があります。
プレーする価値も忘れてはいけない
預託金制ゴルフ会員権では、どうしても預託金が返ってくるかどうかに目が向きます。
しかし、会員権の基本的な価値はゴルフ場を会員として利用できることです。
会員として何年間もプレーし、予約面や料金面などのメリットを受けることができます。
そのため会員権の価値を考えるときには、
将来いくらで売却できるのか
預託金はいくら返ってくるのか
という資産面だけではなく、
どのくらい利用するのか
会員としてどんなメリットを得られるのか
という利用面も見る必要があります。
預託金制ゴルフ会員権は、単純な金融商品ではありません。
利用価値と金銭的な権利が一体になっているところに特徴があります。
結論
預託金制ゴルフ会員権とは、ゴルフ場経営会社などに一定のお金を預け、そのゴルフ場を会員として利用する権利などを持つ仕組みです。
会員権には、ゴルフ場施設を優先的に利用する権利だけでなく、一定の条件を満たした後に預託金の返還を求める預託金返還請求権などが含まれています。
そして会員権を第三者へ売却するときには、原則としてこうした権利や義務を含む会員としての地位が一体となって移転します。
重要なのは、預託金の額面と会員権の市場価格は同じではないことです。
さらに、預託金1000万円と書かれていても、1000万円が必ず返還されることを意味するわけではありません。
ゴルフ場経営会社の経営状態が悪化すれば、預託金の一部が切り捨てられることもあります。
預託金制ゴルフ会員権を見るときには、額面金額だけではなく、施設を利用する価値、返還条件、ゴルフ場の経営状態、市場価格まで含めて考える必要があります。
ゴルフ会員権が単なるプレー券ではなく、一つの資産として扱われる理由は、この施設利用権と預託金返還請求権などが一体になった独特の仕組みにあります。
参考
日本経済新聞 2026年8月27日 朝刊 ゴルフ会員権値上がり 5カ月連続 低価格帯も人気