法人税と所得税は何が違うのか 会社で稼いだ利益と個人が受け取った所得に二段階で税金がかかる仕組み編

税理士
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会社が事業で利益を稼ぐと法人税がかかります。

その会社が従業員に給与を支払えば、今度は給与を受け取った個人に所得税がかかります。会社が株主に配当を支払った場合にも、原則として株主側で所得税がかかります。

同じ会社が生み出したお金なのに、なぜ会社と個人のそれぞれに税金がかかるのでしょうか。

ここを理解するポイントは、会社と株主や従業員は税制上それぞれ別の主体として扱われていることです。

今回は、法人税と所得税の違いと、会社で生み出された利益が個人へ移る過程で税金がどのようにかかるのかを整理します。

会社の利益には法人税がかかる

株式会社などの法人が事業を行って所得を得ると、法人税が課されます。

ただし、売上そのものに法人税がかかるわけではありません。

例えば、会社の売上が1億円あったとしても、商品の仕入れ、人件費、家賃、減価償却費などの費用が9000万円あれば、単純化すると利益は1000万円です。

税務上は会計上の利益に一定の調整を行って課税所得を計算し、その所得を基礎として法人税を計算します。

つまり法人税は、会社が事業活動によって生み出した所得に対する税金です。

ここで重要なのは、会社と会社のオーナーである株主は同じ存在ではないことです。

株式会社には法人格があります。

そのため会社が1000万円を稼いだからといって、株主個人が1000万円を稼いだことにはなりません。

まず会社という法人に所得が発生したとして法人税が課されます。

給与は会社の費用になる

会社が稼いだお金を個人へ移す代表的な方法が給与です。

例えば会社が従業員へ年収600万円を支払ったとします。

一定の要件を満たす給与は会社側では費用になります。

つまり給与を支払えば、その分だけ会社の利益が小さくなります。

一方、600万円を受け取った従業員側では給与所得が発生します。

ここに所得税が課されます。

ただし600万円全額にそのまま所得税率を掛けるわけではありません。

給与収入から給与所得控除を差し引いて給与所得を求め、さらに基礎控除や社会保険料控除などの所得控除を差し引き、課税所得を計算します。

その課税所得に所得税率を適用します。

したがって、

会社側では給与が費用

個人側では給与が所得

という関係になります。

会社から個人へお金が移ることで、課税される主体も法人から個人へ変わるわけです。

給与には同じ利益への二重課税が起こりにくい

給与については、会社が稼いだ利益に法人税がかかり、その残りから給与を支払ってさらに所得税がかかる、という理解は必ずしも正確ではありません。

通常の従業員給与などは会社の所得計算上の費用になります。

例えば売上などから1000万円の収益があり、そこから従業員給与600万円を支払ったと単純化して考えます。

会社側で課税対象となる利益は、原則として給与600万円を差し引いた後の400万円を基礎として計算されます。

一方、従業員には600万円の給与収入を基礎として所得税が課されます。

つまり、

会社に残った所得には法人税

従業員へ移った所得には所得税

という役割分担になっています。

同じ600万円について法人税と所得税がそのまま二重に課されているわけではありません。

配当は給与とは仕組みが違う

これに対して、株主への配当は事情が異なります。

配当は基本的に、会社が稼いだ利益を株主へ分配するものです。

例えば会社が1000万円の所得を得たとします。

まず会社の段階で法人税などが課されます。

その税引き後の利益の一部を株主へ100万円配当したとしても、その100万円を会社の課税所得から給与のように差し引くことは原則としてできません。

そして株主が配当を受け取れば、今度は株主側で配当所得として所得税などの対象になります。

したがって配当については、

会社段階で法人課税

株主段階で所得課税

という二段階の課税が生じます。

これが法人税と所得税の関係を理解するうえで非常に重要なポイントです。

なぜ配当には二段階で税金がかかるのか

理由は、会社と株主が法律上も税制上も別の主体だからです。

会社が利益を得ても、その利益が自動的に株主個人の財産になるわけではありません。

会社の財産は会社のものです。

会社が利益を社内に残せば、その利益は会社の内部に蓄積されます。

一方、会社が配当を決めて株主へ支払うと、そこで初めて会社のお金が株主個人のお金になります。

会社が所得を得る段階と、株主が配当を得る段階は別の経済取引として扱われます。

そのため、それぞれに課税する仕組みになっています。

配当控除は二重負担を調整する仕組み

もっとも、法人段階と個人株主段階でそのまま課税すれば、税負担が重くなります。

そこで日本の所得税には、一定の配当について配当控除という仕組みがあります。

個人が国内法人から一定の配当を受け取り、総合課税を選択する場合などには、所得税額から一定額を差し引くことができます。

これは、会社段階ですでに法人税が課されている利益から配当が支払われていることを考慮して、法人税と所得税の負担を調整する考え方です。

ただし、すべての配当について同じように配当控除が利用できるわけではありません。

上場株式の配当についてどの課税方式になるかなどによって扱いは異なります。

大切なのは、税制にも法人段階と個人段階の二重負担を調整する仕組みが存在するということです。

会社が利益を内部留保すると個人への所得税はまだ発生しない

会社が税引き後利益を株主へ配当せず、会社内部に残すこともできます。

これが内部留保につながります。

例えば会社が利益を稼いで法人税を支払った後、残った利益を配当せず会社に残したとします。

この段階では株主個人が配当を受け取っていないため、配当所得は発生していません。

会社には利益が蓄積されますが、株主の銀行口座にそのお金が入ったわけではないからです。

その後、会社が配当すれば株主側で課税関係が生じます。

この仕組みを見ると、法人と株主を分けて課税する意味が分かりやすくなります。

法人税を上げると株主にも影響する

法人税増税を考えるときにも、この二段階構造は重要です。

法人税率が上がれば、会社の税引き後利益が減ります。

税引き後利益が減れば、配当に回せる利益も減る可能性があります。

つまり法人税は形式上は会社が納める税金ですが、その影響は会社だけで完結するとは限りません。

株主への配当が減る可能性があります。

設備投資が減る可能性もあります。

賃上げ余力に影響することも考えられます。

法人税増税を議論するときには、誰が税務署へ税金を納めるのかだけではなく、最終的に誰が経済的な負担を負うのかを見る必要があります。

法人と個人を分けなければ会社制度そのものが分かりにくくなる

そもそも株式会社は、株主個人とは独立した存在として事業を行う仕組みです。

多数の株主から資金を集める大企業では、会社が稼いだ利益をどの株主が直接稼いだのかと考えることはできません。

利益を会社に残すこともできます。

設備投資に使うこともできます。

借金の返済に使うこともできます。

配当することもできます。

会社が利益を稼いだ段階では、その利益の使い道はまだ決まっていません。

そのため、まず法人という独立した主体の所得として課税し、その後、給与や配当などによって個人に所得が移れば個人側の課税関係を考える仕組みになっています。

給与と配当では税金の流れが違う

法人税と所得税の関係を理解するときには、会社から個人へお金がどのような形で移るかを見ることが大切です。

給与であれば、原則として会社側では費用となり、受け取った個人側で給与所得として課税されます。

配当であれば、法人税が課された後の利益から支払われ、株主側でも配当所得として課税されるという二段階の構造になります。

同じ会社から個人へ支払われるお金でも、給与と配当では税務上の性格が大きく違うわけです。

この違いは、経営者が会社から給与を受け取る場合と、株主として配当を受け取る場合を考えるときにも重要になります。

結論

法人税と所得税の最大の違いは、誰の所得に課税するかです。

会社が事業によって所得を得れば、法人という独立した主体に法人税が課されます。

会社から従業員へ給与が支払われれば、給与は原則として会社側では費用となり、受け取った個人側で所得税が課されます。

一方、配当は基本的に法人税が課された後の利益から株主へ支払われるため、法人段階と株主段階という二段階で課税される構造になります。

ただし、その二重負担を調整するために配当控除などの仕組みも設けられています。

会社が稼いだお金だから、最終的にはすべて株主個人の所得になるというわけではありません。

会社のお金と個人のお金を明確に分けることが法人制度の基本です。

法人税と所得税が別々に存在するのも、法人と個人をそれぞれ独立した課税主体として捉えているからです。

この仕組みを理解すると、法人税を増税したときに会社だけでなく、株主や従業員にも影響が及ぶ可能性がある理由も見えてきます。

参考

日本経済新聞 2026年8月 野党、法人増税案を提起 減税・給付の財源

日本経済新聞 2026年8月 法人税率、G7で上位

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