ふるさと納税では、肉や魚、米、果物、飲料など全国各地の特産品を返礼品として受け取ることができます。
寄付者にとっては自宅まで返礼品を届けてもらえる便利な仕組みですが、その配送には当然お金がかかります。
しかも送料を負担しているのは、基本的には寄付を受けた自治体側です。
返礼品を全国へ発送すればするほど配送費が膨らみ、寄付金から地域に残る財源が減っていきます。
総務省がふるさと納税の経費率上限を2029年に40%まで引き下げるなか、送料の削減は自治体にとって重要な課題になっています。
ふるさと納税の送料とは何か
ふるさと納税では、自治体が寄付者に返礼品を提供する場合、その返礼品を寄付者の自宅などへ届ける必要があります。
そこで発生するのが送料です。
返礼品を提供する地域の事業者から直接発送する場合もありますが、配送にかかる費用はふるさと納税を実施するための経費となります。
たとえば1万円の寄付に対して3000円の返礼品を用意したとします。
ここで配送に1000円かかれば、返礼品と送料だけで4000円になります。
さらに仲介サイト手数料や決済費用、事務費なども必要です。
寄付者から見ると返礼品の価格が大きなコストのように見えますが、自治体にとっては自宅まで届ける費用まで含めて考えなければなりません。
送料も経費率に含まれる
送料が重要なのは、ふるさと納税の経費率を計算するときの経費に含まれるためです。
ふるさと納税では、返礼品調達費だけではなく、送料、仲介サイト手数料、決済費用、事務費など、寄付を募集するために必要となるさまざまな費用があります。
2025年度の全国平均の経費率は47.9%でした。
総務省はこの経費率の上限を段階的に引き下げ、2029年には40%とする方針です。
自治体は寄付額100に対して、返礼品から送料、仲介手数料などまで含めた経費を40以内に収めなければならなくなります。
そのため数%の送料であっても無視できません。
返礼品の調達費を変えなくても、配送方法を工夫することで経費率を下げられる可能性があります。
返礼品によって送料は大きく違う
すべての返礼品に同じ送料がかかるわけではありません。
小さく軽い商品であれば比較的安く発送できます。
一方、大きく重い商品になるほど配送費は高くなる傾向があります。
さらに重要なのが温度管理です。
常温で送れる返礼品と、冷蔵や冷凍で送らなければならない返礼品では配送コストが異なります。
肉や魚、海産物、アイスクリームなどでは冷凍配送が必要になることがあります。
果物や生鮮食品では、品質を保つため冷蔵配送が必要になる場合もあります。
返礼品そのものの調達価格が同じ3000円でも、配送方法によって自治体が負担する総コストは変わります。
大型返礼品ほど配送コストが重くなる
返礼品の大きさも重要です。
米や飲料などは重量があります。
家具や寝具などは梱包サイズが大きくなります。
複数回に分けて商品を届ける定期便なら、発送するたびに送料が発生します。
たとえば一度の配送に1000円かかる商品を1回送れば送料は1000円です。
同じ寄付者へ12回に分けて送れば、単純化すると1万2000円の配送費が発生します。
もちろん実際の送料は契約条件や荷物の大きさなどによって異なりますが、配送回数が増えるほどコストが増えやすいことは変わりません。
返礼品の魅力を高めるための定期便が、自治体の経費率を押し上げる可能性もあるわけです。
1件では小さくても全体では巨額になる
送料は1件単位で見ると、それほど大きな金額に感じないかもしれません。
しかし何万件、何十万件という返礼品を発送する自治体では話が変わります。
仮に1件あたりの送料を1000円として考えてみます。
1万件なら1000万円です。
5万件なら5000万円です。
10万件なら1億円です。
返礼品の人気が高まり寄付件数が増えるほど、発送件数も増えていきます。
寄付額が増えること自体は自治体にとってプラスですが、それに比例して配送コストまで増えれば、寄付総額ほど地域の財源は増えません。
ここでも重要なのは、寄付額ではなく経費を差し引いていくら残るのかという視点です。
奈良県宇陀市は梱包を小さくしている
送料を抑えるため、細かな工夫を進める自治体もあります。
奈良県宇陀市では、できる限り小さい梱包材を使うことを徹底しています。
送る物によってはレターパックなども活用します。
配送費は荷物のサイズや重量などによって変わるため、必要以上に大きな箱を使えば、その分コストが増える可能性があります。
返礼品そのものを変えなくても、
梱包を小さくする
軽量化する
配送方法を見直す
といった改善によって経費を削減できる余地があります。
一つ一つの削減額は小さくても、発送件数が多ければ年間では大きな金額になります。
電子クーポンなら送料そのものをなくせる
送料を削減する最も分かりやすい方法の一つが、物を送らないことです。
そこで増えているのが電子クーポンなどのデジタル返礼品です。
自治体へ寄付すると、スマートフォンなどで利用できる電子クーポンが発行されます。
寄付者は実際にその地域を訪れ、宿泊施設や飲食店などで利用します。
物品を梱包して宅配便で送る必要がありません。
配送費を大幅に減らせるだけでなく、梱包資材も必要ありません。
徳島県鳴門市では、送料のかからないデジタル旅行クーポンを拡充しています。
神奈川県大磯町でも、ホテルやレストランなどで使える電子クーポンを導入しています。
電子化は地域消費にもつながる
電子クーポンには、送料削減とは別の効果があります。
返礼品を使うために寄付者が地域を訪れることです。
物品の返礼品なら、自治体から商品が発送され、寄付者の自宅で受け取って関係が終わる場合があります。
一方、宿泊券や食事券などであれば、寄付者が地域を訪れます。
ホテルに泊まる。
飲食店で食事をする。
観光施設へ行く。
お土産を買う。
こうした追加消費が生まれる可能性があります。
自治体から見ると、配送費を減らしながら地域内の経済活動を増やせるわけです。
ふるさと納税の返礼品を単なる商品から、地域へ来てもらうきっかけに変えることができます。
送料を減らすために返礼品を変える時代になる
これまでのふるさと納税では、どの返礼品なら寄付をたくさん集められるかが重視されてきました。
今後はそれだけでは足りません。
同じ寄付額を集められるなら、
どの返礼品なら配送費が安いか
どの返礼品なら梱包を小さくできるか
デジタル化できないか
地域で直接利用してもらえないか
という視点も重要になります。
特に2029年に経費率上限が40%となれば、返礼品の人気だけでなく、返礼品を提供するまでにかかる総コストを見る必要があります。
自治体の返礼品戦略そのものが変わっていく可能性があります。
地域内で使われるお金を増やすことが本来の目的
送料として地域外の配送事業などに支払われるお金が増えれば、その分だけ寄付金から地域に残る財源は小さくなります。
もちろん返礼品を全国の寄付者へ届けるためには、一定の配送費は必要です。
重要なのは、必要以上のコストが発生していないかを見直すことです。
梱包の小型化や配送方法の変更によって送料を減らす。
電子クーポンによって配送自体をなくす。
さらに寄付者に地域を訪れてもらい、宿泊や飲食などにお金を使ってもらう。
こうした仕組みを作れば、経費削減と地域経済への波及を同時に実現できる可能性があります。
結論
ふるさと納税の送料とは、自治体が返礼品を寄付者へ届けるために負担する配送費です。
返礼品調達費とは別に発生し、ふるさと納税の経費率にも含まれます。
冷蔵や冷凍が必要な食品、大型商品、重量のある商品、複数回配送する定期便などでは、送料負担が大きくなりやすくなります。
1件あたりでは小さな金額でも、何万件もの返礼品を発送すれば自治体全体では大きな経費になります。
そのため梱包の小型化や配送方法の見直しに加え、電子クーポンや宿泊券など物品を発送しない返礼品への転換が重要になっています。
2029年に経費率上限が40%へ引き下げられるなか、これからの返礼品は、どれだけ人気があるかだけではなく、どれだけ低いコストで提供でき、どれだけ地域にお金を残せるかという視点でも評価されることになります。
参考
日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税、経費を圧縮 40%以下は177自治体
日本経済新聞 2026年8月22日朝刊 ふるさと納税の経費圧縮 世田谷区、独自サイト開設