人口減少や少子高齢化が進む日本では、自治体が所有する公共施設や土地の中に、十分に活用されていない「遊休資産」が増えています。閉校した学校や使われなくなった温水プール、空き庁舎、未利用地などは、その代表例です。
これらの資産は、維持管理費や修繕費がかかる一方で、十分な価値を生み出していないケースも少なくありません。
しかし、見方を変えれば、遊休資産は地域の新たな収益源となる可能性を秘めています。
今回は、自治体が遊休資産をどのように収益化し、地域活性化へつなげていくべきかについて考えてみます。
遊休資産とは何か
遊休資産とは、本来は公共サービスなどに利用されていたものの、現在は十分に活用されていない土地や建物などを指します。
例えば、
・廃校になった学校
・閉鎖した温水プール
・旧庁舎
・使われなくなった公営住宅
・未利用の公有地
・遊休化した上下水道施設
などがあります。
こうした資産は自治体が所有しているため、利用されていなくても管理費や固定的な維持費が発生します。
そのため、放置することは財政負担の増加につながります。
「保有する資産」から「稼ぐ資産」へ
従来、自治体は公共施設を行政サービスの提供拠点として保有してきました。
しかし、人口減少時代には、「保有すること」自体が目的ではなくなっています。
重要なのは、その資産が地域にどのような価値を生み出すかです。
例えば、
民間企業へ貸し出す。
地域事業者へ活用してもらう。
観光施設へ転用する。
地域産品の加工施設として利用する。
こうした発想によって、遊休資産は維持費がかかる負担から、新たな収益を生み出す地域資源へ変わる可能性があります。
民間との連携が収益化の鍵になる
遊休資産の活用では、自治体だけで事業を進めることは容易ではありません。
そこで重要になるのが民間企業との連携です。
民間企業は、
・新しい事業アイデア
・マーケティング力
・資金調達力
・経営ノウハウ
を持っています。
自治体が施設や土地を提供し、民間企業が事業を展開することで、地域に新しい産業や雇用が生まれます。
近年では、廃校を宿泊施設や食品加工施設、スタートアップ支援施設へ転用する事例も増えています。
売却だけが最適解ではない
財政改善のために遊休資産を売却するケースもあります。
もちろん、維持管理費の削減という点では有効な選択肢です。
しかし、一度売却した資産は自治体の手を離れます。
そのため、
地域への経済効果はあるか。
将来の公共利用の可能性はないか。
長期的な地域づくりに役立つか。
こうした視点から慎重に判断することが重要です。
場合によっては、貸し付けや定期借地などの方が、継続的な収入と地域活性化の両立につながることもあります。
地域ブランドづくりにもつながる
遊休資産は、地域独自のブランドづくりにも活用できます。
例えば、
地元農産物を活用した加工施設。
地域文化を発信する交流拠点。
伝統産業の体験施設。
陸上養殖や再生可能エネルギー施設。
地域の特色を生かした事業であれば、観光振興やふるさと納税の拡大にもつながる可能性があります。
単に収益を上げるだけではなく、「その地域ならではの価値」を生み出すことが重要です。
遊休資産は地域課題の解決にも役立つ
遊休資産の活用は、財政改善だけが目的ではありません。
例えば、
子育て支援施設。
高齢者の交流拠点。
地域医療のサテライト施設。
防災拠点。
コワーキングスペース。
こうした用途へ転換することで、地域が抱えるさまざまな課題の解決にも貢献できます。
収益性と公共性の両立を目指すことが、自治体には求められています。
公有資産を経営する視点が重要になる
これからの自治体には、「施設を管理する」という発想だけではなく、「資産を経営する」という考え方が必要になります。
どの資産を残すのか。
どの資産を民間へ開放するのか。
どの資産を売却するのか。
こうした判断を中長期的な視点で行うことが、持続可能な自治体経営につながります。
遊休資産は、適切な戦略があれば地域経済を支える重要な資産へと生まれ変わるのです。
結論
自治体が保有する遊休資産は、人口減少社会において大きな課題である一方、新たな可能性を秘めた地域資源でもあります。
これからは、「使われていない資産」として維持するのではなく、「地域に価値を生み出す資産」として積極的に活用することが求められます。
民間企業との連携や地域の特色を生かした事業を通じて、収益性と公共性を両立させることができれば、遊休資産は自治体財政を支えるだけでなく、地域の魅力や活力を高める重要な存在となるでしょう。
参考
日本経済新聞(2026年7月16日 朝刊)
遊休プール 養殖へターン 神奈川の自治体、企業と連携
遊休施設とは(2026年7月16日 朝刊)