小児オンライン診療とは何か 近くに小児科がなくても子どもを診てもらえる仕組み編

人生100年時代
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子どもは夜間や休日に突然熱を出したり、せきがひどくなったりすることがあります。

保護者にとって難しいのは、その症状が翌日まで待ってよいものなのか、すぐに医師の診察を受けるべきものなのかを判断することです。

近くに小児科があれば受診できますが、地方では小児科医が身近にいない地域もあります。

そこで活用が広がっているのが小児オンライン診療です。

スマートフォンやパソコンなどを使って、離れた場所にいる医師が子どもを診察します。

青森県では2025年10月から県全域で子ども向けオンライン診療の試行事業を始めました。4歳から18歳を対象として365日利用でき、近くに小児科がない家庭などの医療への入口になっています。

小児オンライン診療は、単に通院を便利にするサービスではありません。

限られた小児医療の診療能力を地域全体で共有する仕組みとしても注目されています。

小児オンライン診療とは何か

小児オンライン診療とは、子どもと医師が離れた場所にいながら、情報通信機器を利用して診察する方法です。

一般的にはスマートフォンやタブレット、パソコンなどを使います。

医師は画面を通じて子どもの状態を確認し、保護者から症状を聞き取ります。

例えば、

いつから熱があるのか

最高で何度まで上がったのか

せきはどの程度なのか

食事や水分を取れているのか

元気があるのか

どのような薬を使っているのか

などを確認します。

オンラインで対応できると医師が判断すれば、必要な治療や自宅での対応について説明します。

対面での診察や検査が必要なら、医療機関の受診を勧めます。

子どもの受診では保護者の負担が大きい

子どもの通院には、大人自身が受診する場合とは違った負担があります。

幼い子どもは一人で病院へ行けません。

保護者が付き添う必要があります。

例えば子どもが夜に発熱した場合、

診療できる病院を探す

子どもの着替えをする

自動車などで病院へ行く

受付をする

待合室で待つ

診察を受ける

薬局へ行く

自宅へ戻る

という流れになります。

きょうだいがいれば、一緒に連れて行かなければならないこともあります。

オンライン診療なら、まず自宅から医師に相談できます。

受診そのものだけでなく、病院へ行くべきかを判断するためにも利用できます。

近くに小児科がない地域がある

小児オンライン診療が特に意味を持つのが、小児科へのアクセスが難しい地域です。

地域に医療機関があっても、小児科医がいるとは限りません。

昼間は診察できても、夜間や休日には小児科の診療体制がない場合もあります。

その結果、保護者が遠くの病院まで子どもを連れて行くことがあります。

オンライン診療なら、小児科医などが患者のいる地域まで毎回移動しなくても、離れた場所から診察できます。

小児科医をすべての地域へ常駐させるのではなく、その診療能力を通信回線によって複数の地域で利用できるわけです。

青森県では県全域を対象にしている

今回参考にした記事では、青森県の取り組みが紹介されています。

青森県は2025年10月、県全域で子ども向けオンライン診療の試行事業を始めました。

対象は4歳から18歳です。

365日、午前6時から午後8時まで利用できる仕組みとされています。

専用ページから申し込むと、事前の問診やスタッフによるヒアリングなどを経て医師とつながります。

記事によると、平均待ち時間は15分程度です。

2026年7月末までに延べ約2500人が利用しました。

県全域を対象とした取り組みであることが大きな特徴です。

住んでいる市町村によって小児医療へのアクセスに大きな差が生じる問題を、オンラインによって補おうとしているわけです。

感染症が流行すると病院が混雑する

小児オンライン診療には、医師不足とは別のメリットもあります。

感染症流行時の混雑を避けられることです。

インフルエンザなどが流行すると、小児科の待合室が混雑することがあります。

診察を受けるまで長時間待たなければならない場合もあります。

体調の悪い子どもを長時間待たせることは保護者にとって大きな負担です。

さらに待合室には別の感染症にかかった患者がいる可能性があります。

オンライン診療なら、自宅で待ちながら診察を受けられます。

青森県の事業でも感染症の流行時には月300人以上のペースで利用があったとされています。

自宅だから確認できる子どもの様子もある

小児オンライン診療では、保護者が子どもの普段の様子を医師へ伝えることが重要になります。

子どもは自分の症状を大人のように正確に説明できないことがあります。

特に年齢が低いほど、

どこが痛いのか

どの程度苦しいのか

いつから変化したのか

を言葉にすることが難しくなります。

そのため保護者からの情報が重要です。

普段と比べて元気がない。

水分を飲まない。

眠り方がおかしい。

呼吸がいつもと違う。

こうした日常的な変化を保護者から聞き取ります。

自宅にいるため、普段使っている薬などをその場で確認できる場合もあります。

画面越しに子どもの状態を確認する

医師は保護者の説明だけではなく、画面を通じて子どもの状態を確認します。

例えば、

顔色

表情

呼吸の様子

発疹などの皮膚の状態

意識の状態

などです。

子どもが話せる年齢なら、医師が直接質問することもあります。

ただし、カメラ越しに確認できる情報には限界があります。

照明やカメラの性能によって皮膚の色などが正確に見えない場合があります。

子どもが動いてしまい、患部を十分に映せないこともあります。

オンライン診療で得られる情報だけで安全に判断できるかを医師が見極める必要があります。

看護師がいれば得られる情報を増やせる

小児オンライン診療には、自宅から受診する方法だけでなく、医療機関などで看護師が立ち会う方法もあります。

今回参考にした岩国市医療センター医師会病院では、来院型オンライン診療を4歳から15歳の小児を対象に始めました。

患者は病院へ行きますが、医師は離れた場所にいます。

看護師が患者のそばに立ち会います。

例えば血中酸素飽和度などを測定できます。

電子聴診器を利用すれば、離れた場所にいる医師が呼吸音を確認することもできます。

自宅型オンライン診療よりも、医師が得られる客観的な情報を増やせることが特徴です。

せきや呼吸の異常では慎重な判断が必要になる

今回の記事では、5歳の子どもが夜間に岩国市医療センター医師会病院を訪れた事例が紹介されています。

せきが止まらず、呼吸も苦しそうな状態でした。

看護師が症状や受診歴を聞き取り、自宅で待機している医師をオンラインで呼び出しました。

医師は問診だけで判断したわけではありません。

電子聴診器で取得した呼吸音や血中酸素飽和度などの情報も確認しました。

そのうえでぜんそくの可能性を説明し、病院で気管支を広げる薬を吸入しました。

翌日にかかりつけの小児科を受診するよう指示しています。

オンライン診療と看護師、医療機器、必要な処置を組み合わせた例です。

オンラインだけで診てはいけない場合もある

小児オンライン診療で特に重要なのは、対面診療へ切り替える判断です。

子どもは自分の状態を十分に説明できないことがあります。

症状が短時間で変化することもあります。

例えば、

呼吸が非常に苦しそう

意識状態がおかしい

けいれんしている

水分をほとんど取れない

ぐったりして反応が悪い

強い痛みがある

といった場合には、オンラインだけで対応するのが適切ではない可能性があります。

必要であれば速やかに対面診療や救急医療へつなぐ必要があります。

オンライン診療は救急医療の代わりではありません。

軽症患者を適切な医療へ振り分けられる

一方、子どもの症状が軽いのか重いのかを保護者だけで判断することは簡単ではありません。

少し熱があるだけに見えても心配になることがあります。

反対に、軽症だと思っていた症状に注意が必要な場合もあります。

オンラインで医師に相談できれば、

自宅で様子をみる

翌日にかかりつけ医を受診する

その日のうちに対面診療を受ける

すぐ救急医療を受ける

といった次の行動を判断しやすくなります。

オンライン診療には、患者を適切な医療へ振り分ける入口としての役割があります。

小児科医の時間を地域で共有できる

小児オンライン診療を地域医療の視点から見ると、もう一つ重要な意味があります。

小児科医の診療能力を地域で共有できることです。

すべての市町村に十分な数の小児科医を配置することは簡単ではありません。

特に人口が減少している地域では、一つの地域だけで小児科の診療体制を維持することが難しくなる可能性があります。

オンライン診療なら、医師は一つの場所にいながら複数地域の子どもを診察できます。

必要な患者だけを地域の医療機関へつなぐこともできます。

医師そのものを各地域へ配置するのではなく、医師の診療能力を広域で共有する発想です。

結論

小児オンライン診療とは、子どもと医師が離れた場所にいながら、スマートフォンやパソコンなどを利用して診察を受ける仕組みです。

特に近くに小児科がない地域や、夜間や休日に受診できる医療機関が少ない地域で大きな意味があります。

青森県では2025年10月から県全域を対象に子ども向けオンライン診療の試行事業を始め、4歳から18歳が365日利用できる体制を整えています。

感染症が流行して小児科が混雑するときにも、自宅から受診できることは患者と保護者の負担軽減につながります。

一方、小児オンライン診療ですべての病気を診られるわけではありません。

子どもは症状を十分に説明できない場合があり、画面越しでは触診や詳しい検査もできません。

呼吸困難や意識の異常など緊急性が疑われる場合には、速やかに対面診療や救急医療へつなぐ必要があります。

患者のそばに看護師がいる来院型オンライン診療なら、血中酸素飽和度の測定や電子聴診器などを使って医師へより多くの情報を届けることもできます。

小児オンライン診療の目的は、すべての小児科診療を画面の中へ移すことではありません。

まず医師につながり、自宅で対応できるのか、通常の外来を受診すべきなのか、救急医療が必要なのかを判断する。

そして必要な患者を対面医療へつなぐ。

人口減少によってすべての地域に小児科医を配置することが難しくなるなか、小児オンライン診療は限られた小児科医の診療能力を地域全体で共有するための重要な仕組みになっていくでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に

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