移動診療車とは何か オンライン診療を組み合わせて過疎地を巡回する仕組み編

人生100年時代
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人口減少が進む地域では、住民が医療機関まで通うこと自体が大きな負担になっています。

近くに診療所がない。

高齢になって自動車を運転できない。

公共交通機関の本数も少ない。

こうした地域で、患者が病院へ行くのではなく、医療の側が患者の暮らす地域へ出向く方法があります。

その一つが移動診療車です。

医療機器などを積んだ車両で地域を巡回し、住民が身近な場所で診療を受けられるようにします。

さらにオンライン診療を組み合わせれば、医師自身が毎回移動診療車に乗らなくても、離れた場所から診察できる場合があります。

患者のいる場所まで診療の場を運び、医師の診療能力は通信回線で届ける。

移動診療車とオンライン診療の組み合わせは、人口減少時代の地域医療を考えるうえで重要な仕組みになっています。

移動診療車とは何か

移動診療車とは、医療を提供するために必要な設備や機器などを車両に搭載し、地域を巡回して診療するために使われる車です。

地域によって運用方法や設備は異なります。

一般的な診療所では患者が建物まで来ます。

移動診療車では反対です。

診療を行う場所そのものが患者の暮らす地域へ移動します。

例えば医療機関から遠い集落などを定期的に巡回し、決められた場所で住民を診察する使い方が考えられます。

高齢化と人口減少によって固定した診療所を維持することが難しい地域では、医療へのアクセスを確保する方法の一つになります。

巡回診療とは何か

巡回診療とは、医療従事者などが一定の地域を巡回して診療を提供する方法です。

患者が少ない地域ごとに診療所を設置すると、施設や人員を維持するために大きな費用がかかります。

そこで一つの医療チームが複数の地域を巡回します。

例えば、

第1週はA地区

第2週はB地区

第3週はC地区

というように、定期的に各地域を訪れる方法があります。

一つの医療資源を複数の地域で共有できることが特徴です。

移動診療車は、この巡回診療を行いやすくする手段の一つです。

なぜ過疎地で必要になるのか

過疎地では患者の数が少なく、診療所を維持することが難しい場合があります。

医師や看護師を確保できないこともあります。

一方で、そこに暮らす住民の医療需要がなくなるわけではありません。

むしろ高齢化率が高い地域では、定期的な診察を必要とする人が多い場合があります。

高血圧や糖尿病などの慢性疾患があれば、継続して医師の診察を受ける必要があります。

しかし、医療機関まで数十キロ離れていれば通院そのものが負担になります。

移動診療車なら、患者が遠くまで移動する代わりに診療の場を生活圏へ近づけることができます。

従来は医師も一緒に移動する必要があった

従来型の巡回診療では、基本的に医師も患者のいる地域まで移動します。

ここに大きな課題があります。

医師が診療所から集落まで片道1時間かかるとします。

往復なら2時間です。

その間、医師は別の患者を診察できません。

一つの地域だけならまだしも、広い地域に集落が点在していれば移動時間はさらに長くなります。

地方では医師そのものが不足しています。

限られた医師の時間を長時間の移動に使うことは、地域全体の診療能力を低下させる原因にもなります。

オンライン診療を組み合わせる

そこで考えられるのが、移動診療車とオンライン診療の組み合わせです。

診療車は患者のいる地域へ移動します。

しかし、医師自身は必ずしも診療車に乗りません。

患者と医師をオンラインでつなぎます。

医師は病院や診療所などから診察します。

これによって、

診療の場所は患者のところへ移動する

医師の診療能力は通信回線で移動する

という役割分担ができます。

患者の移動負担と医師の移動負担を同時に減らせる可能性があります。

山口市では月2回のうち1回をオンラインに

今回参考にした記事では、山口市徳地診療所の取り組みが紹介されています。

同診療所は移動診療車を使って巡回診療を行っています。

特徴的なのは、月2回の巡回診療のうち1回について医師がオンラインで診療していることです。

毎回医師が移動するのではありません。

医師が移動しない回を設けることで、その時間を外来診療や往診に使うことができます。

オンライン診療によって巡回診療を廃止するのではなく、対面とオンラインを組み合わせています。

この使い分けが重要です。

医師が乗らない診療では何が違うのか

医師が移動診療車に乗らない場合、医師は患者に直接触れることができません。

そのため通常の巡回診療とまったく同じことができるわけではありません。

問診はオンラインでもできます。

映像を使って患者の表情や状態を確認することもできます。

さらに患者のそばに看護師などの医療従事者がいれば、得られる情報を増やせます。

体温

血圧

脈拍

血中酸素飽和度

などを測定して医師へ伝えることができます。

電子聴診器などを利用できれば、心音や呼吸音を離れた医師へ届けることも可能になります。

移動診療車を単なるテレビ電話の部屋ではなく、遠隔診療を支える医療拠点として使えるわけです。

看護師の役割が重要になる

医師が遠隔地から診察する場合、患者のそばにいる看護師の役割が重要になります。

看護師は患者の状態を直接観察できます。

患者本人が、

大丈夫です

と話していても、看護師が見れば呼吸状態や顔色などに異常を感じる場合があります。

必要な測定を行い、その結果を医師へ伝えることもできます。

医師の指示などに基づき、認められた範囲で診療を補助することもあります。

移動診療車とD to P with Nを組み合わせれば、医師が車に乗っていなくても一定の医療を提供できる可能性が広がります。

医師の時間を有効活用できる

オンライン診療を組み合わせる最大のメリットの一つが、医師の移動時間を減らせることです。

例えば巡回先まで往復2時間、現地で1時間診察するとします。

医師自身が移動すれば3時間必要です。

オンラインなら、医師は移動に使っていた2時間を別の患者の診察などに使える可能性があります。

その時間に、

病院の外来患者を診る

往診する

入院患者を診る

別の地域の患者をオンラインで診る

といったことができます。

医師不足の地域では、一人の医師の時間をどれだけ診療に使えるかが非常に重要です。

一台の診療車を複数地域で使える

移動診療車には、固定した診療所とは違う特徴があります。

移動できることです。

一つの集落だけで使う必要はありません。

曜日や時間帯を変えて複数の地域を巡回できます。

人口が少ない地域ごとに建物を設けるのではなく、一台の車両を共有できます。

オンライン診療を組み合わせれば、診察する医師も必ずしも一人に固定する必要はありません。

患者の症状や診療科などに応じて、離れた場所にいる医師とつなぐという発展も考えられます。

車両と通信技術を組み合わせることで、診療拠点そのものを柔軟に配置できるようになります。

通信環境が新しい医療インフラになる

オンライン診療を組み合わせた移動診療車には、安定した通信環境が必要です。

映像や音声が頻繁に途切れれば、診察に支障が出ます。

電子聴診器などから得られる情報を送る場合には、通信品質も重要になります。

従来の地域医療では、

病院

診療所

医療機器

道路

などが重要なインフラでした。

オンライン診療では、そこに通信ネットワークが加わります。

道路が患者や医師を運ぶインフラだとすれば、通信回線は医師の診療能力や医療情報を運ぶインフラになります。

対面診療をなくす仕組みではない

移動診療車とオンライン診療を組み合わせても、すべての患者を遠隔で診察できるわけではありません。

医師による触診が必要な場合があります。

詳しい検査が必要になることもあります。

症状が急激に悪化している患者なら、設備の整った医療機関へ搬送する必要があるかもしれません。

だからこそ山口市徳地診療所のように、対面とオンラインを組み合わせる考え方が重要になります。

例えば月2回のうち、

1回は医師が現地で対面診療する

1回はオンライン診療する

という方法です。

対面診療をゼロにするのではなく、医師が現地へ行く回数を減らすことで医療資源を効率的に使います。

患者を運ぶ医療から医療を運ぶ仕組みへ

従来、地方の医療では患者を病院へどう運ぶかが大きな課題でした。

自家用車を使う。

家族が送迎する。

自治体の交通サービスを利用する。

場合によっては長距離を移動する必要があります。

移動診療車では発想が逆になります。

患者を医療機関へ運ぶのではなく、診療の場を患者の地域へ運びます。

さらにオンライン診療を組み合わせれば、医師自身を運ぶ必要まで減らせます。

患者は生活圏内で診療車へ行く。

診療車は地域を巡る。

医師は離れた場所から診察する。

限られた医療資源を広い地域で共有する仕組みになります。

結論

移動診療車とは、医療機器などを搭載した車両で地域を巡回し、医療機関へのアクセスが難しい住民に診療を届ける仕組みです。

特に人口減少や高齢化が進む過疎地域では、住民が遠くの病院まで通院する負担を減らす方法として重要になります。

従来の巡回診療では、患者のところへ診療車を動かすだけでなく医師自身も移動する必要がありました。

しかしオンライン診療を組み合わせれば、診療車だけを患者の地域へ移動させ、医師は病院や診療所などから診察できる場合があります。

山口市徳地診療所では、月2回の巡回診療のうち1回をオンライン診療とし、医師の移動時間を減らして外来診療や往診などに充てています。

患者のそばに看護師がいれば、血圧や血中酸素飽和度などを測定し、電子聴診器などを使って医師へ情報を届けることもできます。

もちろん、触診や詳しい検査が必要な患者までオンラインだけで診療することはできません。

対面診療との組み合わせが必要です。

それでも移動診療車とオンライン診療を組み合わせることで、患者の移動と医師の移動の両方を減らせる可能性があります。

人口が減る地域ごとに病院や医師を配置することが難しくなっても、医療そのものを移動させ、医師の診療能力を通信回線で届けることはできます。

移動診療車は、病院という固定された場所を中心に考えてきた地域医療を、患者の生活圏を中心とする医療へ変えていく仕組みの一つなのです。

参考

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 進化するオンライン診療 看護師立ち会い、検査や処置

日本経済新聞 2026年8月22日 朝刊 駅で受診可能に

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