非上場株評価改正で不動産管理会社はどうなるのか 資産保有型会社への影響編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

非上場株の新しい相続税評価ルール案では、会社の簿価純資産と今後5年間で見込まれる収益力を基礎として株価を計算する方向が示されています。

この見直しで特に影響が注目されるのが、不動産管理会社や資産保有型会社です。

不動産管理会社は、土地や建物、賃貸マンション、店舗、駐車場などを保有し、賃料収入を得ることを主な事業としています。

一般の事業会社と比べると従業員数は少なくても、多額の不動産を保有していることがあります。

そのため、売上高や従業員数だけを見れば小規模でも、貸借対照表上の純資産は非常に大きいという会社が珍しくありません。

新ルールで簿価純資産が重要になるのであれば、不動産管理会社の自社株評価にも大きな影響が出る可能性があります。

不動産管理会社とは何か

不動産管理会社とは、土地や建物などの不動産を法人で保有し、その賃料収入や管理収入を得る会社です。

たとえば、

賃貸マンションを所有する会社

オフィスビルを保有する会社

店舗や倉庫を賃貸する会社

駐車場を運営する会社

などがあります。

家族が所有していた不動産を法人へ集約し、家族会社として運営しているケースもあります。

相続対策や資産管理のために設立された会社もあります。

こうした会社では、事業の中心が商品販売や製造ではなく、資産そのものから収益を得る点が特徴です。

不動産が会社資産の大部分を占める

一般の事業会社では、現預金や売掛金、在庫、設備など、さまざまな資産を持っています。

一方、不動産管理会社では、貸借対照表の資産の大部分を土地や建物が占めることがあります。

たとえば、

土地5億円

建物3億円

現預金1億円

その他資産5000万円

といった構成です。

この会社に借入金が4億円あれば、単純化すれば純資産は5億5000万円です。

従業員が数人しかいなくても、非常に大きな純資産を持つことがあります。

不動産と簿価純資産の関係

新ルール案では、会社の直前期末の簿価純資産が重要になる方向です。

ここで、不動産管理会社特有の問題が出てきます。

不動産は、取得した時期によって簿価と現在の価値が大きく異なることがあります。

たとえば30年前に1億円で取得した土地が、現在は5億円の市場価値を持っていたとします。

土地は通常、建物のように減価償却しないため、帳簿上では取得価額を基礎とした金額が残っています。

この場合、

簿価は1億円

現在価値は5億円

という大きな差があります。

新ルールで簿価純資産を利用する場合、この差をどう扱うのかが非常に重要になります。

簿価を使えば不動産会社が有利とは限らない

簿価が低い不動産を多く持っている会社では、

新制度なら評価額が大幅に下がるのではないか

と考えたくなるかもしれません。

しかし、現時点ではそのように断定できません。

今回の制度見直しの目的には、非上場株を会社の経済実態に即して公平に評価することがあります。

実際には5億円の価値がある土地を1億円としてしか評価しないのであれば、会社の経済価値を十分に反映できない可能性があります。

そのため、新制度で不動産の含み益をどのように扱うのか、資産保有型会社に特別な調整を設けるのかなどが重要な論点になります。

現行制度では不動産の評価替えが重要になる

現在の純資産価額方式では、会社の不動産を単純な帳簿価額のまま使うわけではありません。

土地や建物などを相続税評価額などに置き換えて会社の純資産を計算します。

そのため、土地に大きな含み益があれば、その影響が自社株評価額に反映されます。

つまり、現行制度では不動産会社の株価を評価する際、

帳簿上いくらか

ではなく、

税務上現在いくらの価値があるか

が重要になります。

新制度が簿価純資産を基礎とする場合、この現行方式との違いが不動産管理会社に大きな影響を与える可能性があります。

借入金があると純資産は小さくなる

不動産管理会社では、不動産を借入金で取得していることが多くあります。

たとえば10億円の不動産を8億円の借入金で購入したとします。

単純化すれば、取得直後は資産10億円に対して負債8億円なので、純資産への影響は2億円程度です。

このため、借入金が多い時期には純資産は小さくなります。

しかし、その後賃料収入から借入金を返済していけば負債が減ります。

不動産は残ったままなので、純資産は増えていきます。

つまり、借入金返済が進むほど自社株評価額が上がる可能性があります。

借金があるから株価が低い状態は永久には続かない

不動産を使った相続対策では、借入金の存在が注目されることがあります。

確かに、多額の借入金があれば負債が増え、純資産は小さくなります。

しかし、借入金は通常返済していきます。

20年、30年と返済が進めば、負債は減少します。

一方、不動産が会社に残っていれば、会社の純資産は増えていきます。

その結果、

不動産取得直後は株価が低い

数十年後には株価が高くなる

ということもあり得ます。

事業承継を考える際には、現在の株価だけでなく将来の借入金残高まで見る必要があります。

賃料収入は収益力にも反映される

不動産管理会社では、純資産だけでなく収益力も重要になります。

賃貸マンションやオフィスビルから安定した賃料収入を得ている会社では、毎年一定の利益が出ます。

新ルール案で過去5年間の平均利益などから収益力を評価するのであれば、安定して利益を出している不動産管理会社では、その利益も株価を押し上げる可能性があります。

つまり、

不動産という大きな資産

賃料という継続的な利益

の両方が評価に影響する可能性があります。

空室率が高い会社では収益力が低くなる

一方、同じ不動産管理会社でも収益力には大きな差があります。

満室に近い状態が続くマンション。

空室が多いアパート。

都心の優良オフィスビル。

地方でテナントが減っている商業施設。

同じ簿価の不動産を持っていても、収益力は異なります。

新ルールで利益を評価に取り込めば、こうした違いを株価へ反映しやすくなります。

資産額だけで会社価値を判断しない点は、新制度の大きな特徴です。

修繕費などで利益が年によって変わる

不動産会社では、大規模修繕などによって利益が大きく変動することがあります。

たとえば通常は年間3000万円の利益を出していても、外壁や屋上の大規模修繕を行った年には利益が大幅に減ることがあります。

もし直前1年間だけで収益力を判断すれば、その年度だけ株価が大きく低下する可能性があります。

しかし、新ルール案では過去5年間の平均利益などを参考にする方向が示されています。

そのため、大規模修繕が1年あっただけでは収益力が極端に低くならない可能性があります。

これは不動産管理会社にとって重要なポイントです。

従来の相続対策として不動産管理会社が使われることがある

不動産管理会社は、事業目的だけでなく相続対策の一環として利用されることもあります。

個人が直接不動産を保有するのではなく、法人で保有する。

家族を役員や従業員とする。

会社株式という形で資産を承継する。

こうした方法には、所得税、法人税、相続税、資産管理など複数の目的があります。

非上場株評価の仕組みも、その設計に影響してきました。

しかし、新ルールによって会社株式の評価方法が変われば、従来の相続対策の前提も変わる可能性があります。

法人化すれば相続財産が消えるわけではない

不動産を法人に移すと、個人は直接その不動産を持たなくなります。

しかし、その代わりに法人の株式を持つことになります。

つまり、

個人保有の土地や建物

不動産を持つ会社の株式

に形を変えるだけです。

会社に高い経済価値があれば、その価値は株式に反映されます。

新ルールで純資産と収益力を重視するのであれば、

法人化したから資産価値が見えなくなる

という考え方はより通用しにくくなる可能性があります。

不動産の取得を増やせばよいとも限らない

自社株評価を意識して、不動産購入を検討するケースもあります。

しかし、新ルールで簿価純資産と収益力の両方を見るのであれば、単純に不動産を増やせば株価が下がるとは限りません。

借入金を使って購入した直後は純資産への影響が限定的でも、その後返済が進めば純資産は増えます。

さらに賃料収入によって利益が積み上がれば、収益力も高くなります。

短期的な評価額だけではなく、長期的な会社価値の変化を見る必要があります。

不動産管理会社は新制度の詳細確認が特に重要

不動産管理会社では、一般の事業会社以上に新制度の詳細が重要になります。

確認したいのは、

簿価不動産をどのように扱うのか

含み益をどこまで考慮するのか

借入金をどう反映するのか

賃料収入をどの利益で評価するのか

大規模修繕など一時的な損益をどう扱うのか

資産保有型会社に特別なルールを設けるのか

といった点です。

制度の骨格だけを見て有利不利を決めるのは危険です。

相続対策と不動産経営を分けて考える必要がある

不動産管理会社を経営する目的は、本来、不動産から安定した収益を得ることです。

空室を減らす。

賃料を維持する。

修繕を適切に行う。

借入金を返済する。

優良な物件へ投資する。

こうした経営が会社価値を高めます。

相続税評価を下げることだけを目的に経営判断を変えると、不動産経営そのものが悪化する可能性があります。

税務と経営を分けて考えながら、全体として最適な事業承継を設計することが重要です。

結論

不動産管理会社とは、土地や建物などの資産を保有し、賃料収入などを得る会社です。

従業員数や売上高が小さくても、多額の不動産を持っているため純資産が大きい場合があります。

新しい非上場株評価ルール案では、会社の簿価純資産と今後5年間で見込まれる収益力を基礎として評価する方向が示されています。

そのため、不動産管理会社では、

保有不動産による純資産

賃料収入による収益力

の両方が自社株評価に影響する可能性があります。

借入金が多ければ純資産は小さくなりますが、返済が進めば負債が減り、株価が上がる可能性があります。

また、古くから保有する不動産では簿価と現在価値に大きな差があるため、その含み益を新制度でどのように扱うのかも重要です。

不動産管理会社を利用してきた従来の相続対策が、そのまま新制度でも有効とは限りません。

今後は、法人化や不動産保有という形だけを見るのではなく、会社が実際にどれだけの純資産を持ち、どれだけの利益を生み出しているのかが、より重要になる可能性があります。

参考

日本経済新聞 2026年8月20日 朝刊 非上場株の評価、新ルール案 中小・零細で相続税減

日本経済新聞 2026年8月20日 朝刊 非上場株の相続税、大規模・高収益なら負担増 国税庁案

日本経済新聞 2026年8月20日 朝刊 非上場株の算定方法 企業規模に応じ3方式

タイトルとURLをコピーしました