老人ホームは何年分の資金を準備すればよいのか 5年で2800万円から考える老後資金編

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老人ホームへの入居を考えるとき、最も難しい問題の一つが何年分の費用を準備すればよいのかということです。

東京都内の有料老人ホームでは、2026年1月時点の入居時費用の中央値が1001万円、月額費用の中央値が29万7820円となりました。

この水準の施設で5年間暮らした場合、単純計算では2787万9200円が必要になります。

約2800万円です。

しかし、老人ホームへの入居期間が必ず5年間で終わるとは限りません。

3年間で別の施設へ移る人もいれば、10年以上生活する人もいます。

老人ホームの資金計画では、平均的な入居期間だけを考えるのではなく、長生きした場合でも資金が尽きないように複数の期間を想定する必要があります。

老人ホームの入居期間は事前に分からない

老人ホームに入居するとき、自分がそこで何年間暮らすことになるのかを正確に予測することはできません。

入居時の年齢によって違います。

健康状態によっても違います。

要介護度や持病の有無によっても変わります。

さらに、入居後に別の施設や病院へ移る可能性もあります。

一方で、健康状態が安定し、想定していたより長く老人ホームで生活する場合もあります。

つまり、老人ホームの資金計画には大きな不確実性があります。

5年間暮らすつもりで資金を準備しても、実際には10年間生活する可能性があります。

この期間の違いが、必要な老後資金を大きく変えます。

まず入居一時金を考える

老人ホームの費用は、大きく入居時に必要なお金と入居後に必要なお金に分けて考えると分かりやすくなります。

入居時に必要となる代表的な費用が入居一時金です。

東京都内の有料老人ホームでは、その中央値が1001万円となっています。

この1001万円は、入居した時点でまとまって必要になる可能性があるお金です。

年金から少しずつ支払うことはできません。

基本的には預貯金や金融資産、自宅の売却代金などから準備する必要があります。

そのため、老人ホームへの入居を考える場合には、まず初期費用としていくら確保しておくのかを考える必要があります。

次に毎月の費用を考える

入居一時金を支払えば、その後の生活費が不要になるわけではありません。

東京都内の月額費用の中央値は29万7820円です。

年間にすると357万3840円です。

単純計算では、5年間で1786万9200円になります。

これに入居時費用1001万円を加えると2787万9200円です。

約2800万円になります。

さらに介護保険の自己負担、医療費、日用品などが別途必要になることがあります。

したがって、2800万円という数字も老人ホーム生活に必要となるすべての費用を表しているわけではありません。

実際の負担はさらに大きくなる可能性があります。

10年間なら約4600万円になる

老人ホームへの入居期間が10年間になったらどうでしょうか。

月額29万7820円を10年間支払うと、単純計算で3573万8400円になります。

ここに入居時費用1001万円を加えると4574万8400円です。

約4600万円になります。

5年間なら約2800万円。

10年間なら約4600万円。

入居期間が5年間延びるだけで、約1800万円増えます。

毎月の費用が大きいため、入居期間が長くなるほど必要資金も急速に増えていきます。

これが老人ホームにおける長生きリスクの一つです。

すべてを預貯金で準備する必要はない

ここまでの数字を見ると、老人ホームに入るには4000万円や5000万円の預貯金が必要なのかと思うかもしれません。

しかし、老人ホームの総費用をすべて入居時点の預貯金で準備する必要があるわけではありません。

入居後も年金収入があります。

例えば月額費用が30万円で、毎月20万円の年金収入があれば、預貯金から取り崩す必要があるのは単純計算で月10万円です。

年間では120万円です。

10年間なら1200万円です。

つまり、重要なのは老人ホームの総費用そのものではなく、年金などの継続的な収入を差し引いた後に、金融資産からいくら補う必要があるのかです。

年金でまかなえる金額を確認する

老人ホームの資金計画を立てるときには、自分が毎月いくら年金を受け取れるのかを確認することが重要です。

例えば老人ホームで毎月35万円必要になるとします。

年金が月25万円なら不足額は10万円です。

年金が月15万円なら不足額は20万円です。

同じ老人ホームに入っても、年金額によって必要な金融資産は大きく変わります。

不足額が月10万円なら10年間で1200万円です。

月20万円なら10年間で2400万円です。

この差は1200万円になります。

そのため、老人ホームの資金計画では施設の料金表だけを見るのではなく、自分の年金額と組み合わせて考える必要があります。

夫婦の場合はさらに複雑になる

夫婦の老後資金を考える場合には、さらに注意が必要です。

夫婦が同時に老人ホームへ入るとは限りません。

一人が老人ホームへ入り、もう一人が自宅で生活する期間が発生することがあります。

この場合、老人ホームの費用と自宅の生活費を同時に負担することになります。

住宅ローンが残っている場合もあります。

固定資産税やマンションの管理費、修繕積立金なども必要です。

その後、もう一人も老人ホームへ入居すれば、二人分の施設費用が発生する可能性があります。

夫婦の場合には、一人分の老人ホーム費用だけで資金計画を立てないことが重要です。

長生きするほど資金不足が大きくなる

老人ホームでは、長生きすること自体が資金計画上のリスクになります。

もちろん長生きすることは喜ばしいことです。

しかし、毎月30万円前後の費用が継続するのであれば、生活期間が延びるほど必要なお金も増えます。

例えば毎月の資金不足が15万円だったとします。

5年間なら900万円です。

10年間なら1800万円です。

15年間なら2700万円です。

入居時に十分な金融資産があっても、長期間取り崩しを続ければ残高は減少します。

問題は、何歳まで生きるか分からない段階で、資産をどの程度の速度で取り崩すかということです。

5年だけではなく10年や15年も試算する

老人ホームの資金計画では、一つの入居期間だけで計算しないことが重要です。

例えば5年間。

10年間。

15年間。

このように複数のケースを作ります。

それぞれについて、入居一時金、月額費用、介護費用、医療費などを見積もります。

そこから年金収入を差し引きます。

その結果、金融資産からいくら取り崩す必要があるのかを確認します。

複数の期間を試算すれば、どの程度まで長生きしても資産を維持できるのかが見えてきます。

平均的な期間だけで計算するより、資金不足になるリスクを把握しやすくなります。

月額費用の値上がりも考える

もう一つ考えなければならないのが、老人ホームの料金が将来も現在と同じとは限らないことです。

東京都内の有料老人ホームでは、月額費用の中央値が2018年1月から2026年1月までの8年間で15%上昇しました。

老人ホームでは食材費がかかります。

電気やガスなどの光熱費もかかります。

さらに多くの介護職員を確保する必要があります。

物価や賃金が上昇すれば、こうした運営コストも増えます。

その結果、入居後に月額費用が値上げされる可能性があります。

10年や15年の資金計画を考えるのであれば、現在の料金がずっと続くという前提だけで計算するのは注意が必要です。

余裕資金を残しておくことも重要

老人ホームへの入居時に、保有する金融資産のほとんどを前払金として使ってしまうことにも注意が必要です。

入居後には予想外の支出が発生することがあります。

医療費が増える可能性があります。

介護状態が変化することもあります。

別の老人ホームへ住み替える必要が生じる場合もあります。

家族に必要なお金が発生することもあります。

そのため、老人ホームに入居できるぎりぎりの資金計画ではなく、一定の余裕資金を手元に残しておくことが重要です。

入居できるかではなく、入居後も安心して生活を続けられるかという視点が必要になります。

結論

老人ホームの資金を何年分準備すればよいのかについて、すべての人に共通する正解はありません。

入居する年齢。

健康状態。

要介護度。

年金額。

保有資産。

施設の料金。

これらによって必要資金は大きく変わります。

東京都内の有料老人ホームの中央値を使った単純計算では、入居時費用と月額費用を合わせて5年間で約2800万円、10年間なら約4600万円になります。

ただし、そのすべてを預貯金で準備する必要があるわけではありません。

重要なのは、毎月の費用から年金などの継続収入を差し引き、金融資産からいくら取り崩す必要があるのかを計算することです。

そして5年間だけではなく、10年間、15年間と長生きした場合も試算します。

老人ホームの資金計画で最も避けなければならないのは、生きている途中でお金が足りなくなることです。

終のすみかを選ぶということは、施設を選ぶだけではありません。

そこで人生の最後まで暮らし続けられるだけの資金をどう確保するのか。

長生きする可能性まで含めて考えることが、老後の安心につながります。

参考

日本経済新聞 2026年8月19日朝刊 終のすみかの現実(上)老人ホーム 手届かぬ東京 入居費1000万円、4割上昇

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