仕事の切り出しとは何か 業務を分解するとシニアを採用しやすくなる理由編

人生100年時代
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企業が人手不足に直面すると、まず新しい社員を一人採用しようと考えることがあります。

しかし、一つの求人に多くの仕事を詰め込んでしまうと、すべてを担当できる人材を見つけることが難しくなります。

営業もできる。

資料も作れる。

顧客対応もできる。

パソコンも使える。

フルタイムで働ける。

こうした条件をすべて満たす人を探していれば、人手不足の中ではなかなか採用できません。

そこで重要になるのが仕事の切り出しです。

一人が担当している仕事を細かく分解し、その中から特定の人に任せられる業務を取り出します。

仕事を一人分という単位ではなく、業務という単位で考え直すことで、短時間勤務のシニアなど、これまで採用対象になりにくかった人材を活用できる可能性があります。

仕事の切り出しとは何か

仕事の切り出しとは、一人の社員が担当している複数の業務を分解し、その一部を別の人が担当できる形にすることです。

例えば営業担当者が、

新規顧客への営業

既存顧客への訪問

見積書作成

顧客データ入力

問い合わせ対応

会議資料作成

若手社員の指導

まで担当しているとします。

これらをすべて一人の仕事として考えれば、

営業職を一人採用する

という求人になります。

しかし、業務を分解すれば違う方法が見えてきます。

顧客データ入力や資料作成を別の人へ任せる。

若手社員の指導を経験豊富なシニアへ任せる。

新規営業は若い営業担当者が行う。

このように仕事を組み替えることができます。

一人分の仕事という考え方を見直す

企業では、

この仕事は営業担当者の仕事

この仕事は経理担当者の仕事

と職種単位で考えることがあります。

しかし実際の一日は、多くの異なる業務の組み合わせでできています。

例えば経理担当者でも、

伝票処理

請求書確認

入金確認

決算

予算管理

経営者への説明

監査対応

など、難易度の異なる仕事を担当しています。

すべてを一人に任せる必要があるとは限りません。

定型業務は別の担当者やシステムへ移す。

高度な判断が必要な業務だけ経験者へ任せる。

このように考えれば、

経理担当者一人

ではなく、

必要な業務を誰が担当するか

という発想に変わります。

シニアの経験を一部分だけ利用できる

仕事の切り出しは、シニア雇用と相性のよい方法です。

長年働いてきたシニアには豊富な経験があります。

しかし、その人が以前担当していた仕事を丸ごと任せる必要はありません。

例えば営業管理職経験者なら、

若手営業社員の育成

重要顧客への同行

難しい商談への助言

営業会議への参加

など、経験が特に価値を持つ仕事だけを担当してもらうことができます。

経理経験者なら、

決算の確認

資金繰りへの助言

若手経理担当者への指導

業務改善

などを切り出せます。

週5日フルタイムでなくても、週2日や週3日の勤務で価値を提供できる可能性があります。

若手社員との役割分担ができる

シニアを採用するとき、

若い社員と同じ仕事をしてもらう

と考える必要はありません。

世代によって得意な仕事が違う場合があります。

例えば若手社員が、

新しいデジタルツールを使う

現場を動き回る

新規顧客を開拓する

といった仕事を担当します。

シニアが、

顧客との難しい交渉

トラブルへの対応

若手社員への助言

専門的な判断

を担当します。

仕事を切り出すことで、それぞれの強みを組み合わせることができます。

シニアが若い社員の代わりになるのではなく、若い社員が十分に経験していない部分を補う役割を持つのです。

若手社員が本来の仕事に集中できる

仕事の切り出しには、既存社員の負担を減らす効果もあります。

例えば専門職の社員が、

資料整理

データ入力

会議準備

定型的な問い合わせ対応

などに多くの時間を使っている場合があります。

これらを別の人へ切り出せば、専門職は本来の仕事に集中できます。

反対に、高度な経験が必要な一部の業務をシニアへ切り出し、若手社員が通常業務に集中する方法もあります。

人手不足対策では、

何人足りないのか

だけを見るのではなく、

誰がどの仕事に時間を使っているのか

を見ることが重要です。

業務の組み合わせを変えるだけで、組織全体の生産性が上がる場合があります。

短時間勤務を導入しやすくなる

仕事の切り出しは、短時間勤務を導入するためにも重要です。

一日8時間分の仕事をそのまま一日4時間勤務の人へ任せることはできません。

そこで、

一日4時間で完結する仕事

をつくる必要があります。

例えば、

午前中に請求書を確認する

午後だけ問い合わせ対応をする

週2日若手社員を指導する

月末だけ決算補助をする

といった仕事です。

業務を時間や役割で切り分ければ、フルタイムで働けないシニアでも担当できるようになります。

短時間勤務を制度として用意するだけでなく、短時間で完結できる仕事を用意することが必要なのです。

専門経験だけを活用する方法もある

シニアには、長年の仕事で培った高度な専門能力を持つ人がいます。

しかし中小企業では、その専門家を一人フルタイムで雇用するほどの仕事量がない場合があります。

例えば、

法務

経理

人事

品質管理

技術指導

営業支援

などです。

必要な業務だけを切り出せば、

週1日

週2日

月数回

といった形で経験を活用できる可能性があります。

企業側は必要な専門能力を確保できます。

シニア側もフルタイム勤務をせずに経験を生かせます。

仕事を切り出すことによって、企業の需要とシニアの働き方を結びつけることができます。

AIに任せる仕事も切り出す

仕事の切り出しは、人間同士の役割分担だけではありません。

AIや業務システムとの役割分担にも利用できます。

例えば事務業務なら、

情報検索

文章の下書き

データ整理

議事録作成

定型的な問い合わせ対応

などをAIへ任せられる可能性があります。

すると人間は、

AIの回答を確認する

例外的な問題に対応する

顧客と調整する

最終判断をする

といった仕事に集中できます。

シニアが長年の経験を持っている場合、AIが作成した内容を確認する役割を担当することも考えられます。

人間とAIの間でも、仕事を切り分ける発想が重要になるのです。

仕事を切り出すには業務の見える化が必要になる

仕事の切り出しを行うためには、まず現在の仕事を把握する必要があります。

誰が。

何を。

どのくらいの時間をかけて。

どの程度の難易度で。

どのくらいの頻度で。

行っているのかを整理します。

そのうえで、

専門知識が必要な仕事

定型的な仕事

身体的な負担が大きい仕事

経験が必要な仕事

短時間でもできる仕事

AIや機械に任せられる仕事

などに分類します。

業務を見える化しなければ、どこを切り出せるのか分かりません。

仕事の切り出しは、人事施策であると同時に業務改善でもあるのです。

切り出しすぎると問題も起こる

仕事を細かく分ければよいというわけではありません。

業務を細分化しすぎると、

担当者間の引き継ぎが増える

責任の所在が分かりにくくなる

全体像を理解する人がいなくなる

情報共有に時間がかかる

といった問題が起こることがあります。

例えば顧客対応を複数人で細かく分けすぎると、顧客が何度も同じ説明をしなければならなくなるかもしれません。

そのため、

どこまで一つの仕事として担当させるか

という設計が重要になります。

切り出せるから切り出すのではなく、組織全体の生産性が高まるかを考える必要があります。

求人票も仕事の切り出しに合わせて変える

仕事を切り出したら、求人の出し方も変える必要があります。

例えば、

事務全般

という求人では、具体的な仕事内容が分かりません。

それより、

午前中の請求書確認

若手社員への営業指導

週3日の顧客問い合わせ対応

など、担当する業務を具体的にします。

仕事内容が明確になれば、求職者も、

自分ならできる

と判断しやすくなります。

特にシニアの場合、以前と同じ職種名でなくても、自分の経験を生かせる仕事だと分かれば応募する可能性があります。

職種名ではなく、具体的な仕事を示すことが重要です。

人手不足企業ほど仕事の再設計が必要になる

人手不足になると企業は、

人を増やさなければならない

と考えます。

しかし、その前に、

今の仕事の組み合わせは本当に合理的なのか

を考える必要があります。

専門家が定型作業をしている。

若手社員が経験不足のまま難しい判断をしている。

シニアがフルタイムでなければ採用できない。

こうした状態があるなら、仕事を組み替える余地があります。

人手不足時代には、

人を探して仕事に当てはめる

だけではなく、

今いる人や採用できる人に合わせて仕事を組み替える

ことが重要になります。

結論

仕事の切り出しとは、一人の社員が担当している仕事を細かく分解し、その一部を別の人が担当できる形にすることです。

営業職一人。

経理職一人。

事務職一人。

という単位で人材を探すのではなく、その仕事の中にどのような業務があるのかを分析します。

そうすると、

シニアの経験を生かせる仕事

若手社員に任せる仕事

短時間勤務でもできる仕事

AIやシステムに任せられる仕事

を分けることができます。

特にシニア雇用では、以前と同じ仕事を丸ごと担当してもらう必要はありません。

長年の経験が最も価値を持つ部分だけを切り出せば、週数日や短時間でも企業に貢献できる可能性があります。

企業にとっても、フルタイムで何でもできる一人を探すより、必要な能力を持つ複数の人を組み合わせた方が人手不足を解消できる場合があります。

人口減少が進む日本では、企業が理想的な人材を待ち続けるだけでは採用が難しくなります。

人を仕事に合わせるだけではなく、仕事を分解して人に合わせる。

仕事の切り出しは、シニアの経験を生かしながら人手不足を解消するための重要な方法になっていくでしょう。

参考

日本経済新聞 2026年8月19日朝刊 老いるハローワークとAI

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