相続税や法人税の話題では、「節税」「租税回避」「脱税」という言葉がよく使われます。しかし、これらは似ているようで意味は大きく異なります。
近年、国税庁が資産管理会社や貸付用不動産を利用した非上場株式の評価方法の見直しを進めている背景にも、「租税回避」があります。
今回は、節税・租税回避・脱税の違いや、国税庁の考え方、最近の制度見直しについて解説します。
節税・租税回避・脱税の違い
これら三つの言葉は混同されがちですが、それぞれ意味が異なります。
節税とは、法律や税制で認められている制度を適正に利用して税負担を軽減することです。
例えば、相続時精算課税制度や小規模宅地等の特例、各種税額控除などを活用することは、代表的な節税といえます。
一方、租税回避とは、法律の文言には反していないものの、制度が本来想定していない方法を利用して税負担を不当に軽減しようとする行為を指します。
形式上は適法であっても、制度の趣旨を逸脱している場合には、制度改正や通達改正の対象となることがあります。
さらに、脱税とは、所得や財産を隠したり、架空経費を計上したりして税金を免れる違法行為です。
脱税には重加算税や刑事罰が科される可能性があります。
国税庁が問題視する租税回避
国税庁は、近年、制度を利用した過度な節税策に対する対応を強化しています。
例えば、借入金で貸付用不動産を取得し、その評価方法を利用して相続税評価額を大きく引き下げる手法や、資産管理会社を利用して非上場株式の評価額を圧縮するスキームなどが問題視されています。
これらは、当時のルールに従って行われていたとしても、本来の制度目的から外れた利用方法であるとして、見直しが検討されています。
制度は社会経済の変化に応じて改正されるため、過去に認められていた手法が将来もそのまま認められるとは限りません。
最近の見直し事例
近年は、税制の公平性を確保するため、さまざまな見直しが行われています。
代表的なものとして、マンションの相続税評価方法の見直しがあります。
市場価格と相続税評価額の大きな乖離を利用した相続対策が広がったことから、評価方法が改正されました。
また、令和8年度税制改正大綱では、一定の貸付用不動産について、取得後5年以内は通常の取引価額を基礎とした評価を行う方向性が示されました。
さらに、国税庁の有識者会議では、資産管理会社を利用した非上場株式の評価方法についても見直しが議論されています。
このように、制度の趣旨を超えた節税策には、順次対応が進められています。
節税は長期的な視点が重要
税負担を軽減したいと考えること自体は自然なことです。
しかし、短期的な節税効果だけを追い求めると、制度改正によって期待した効果が失われることがあります。
また、過度な節税を目的とした資産取得は、多額の借入金や管理コストなど、新たな経営リスクを生むこともあります。
本来の相続対策は、税金だけでなく、資産管理や事業承継、家族間の円滑な財産承継まで含めて考えることが重要です。
税制の趣旨を理解しながら制度を適切に活用することが、長期的には最も安定した対策につながります。
社会情勢に応じて税制は変わる
税制は一度決まれば永久に変わらないものではありません。
経済環境や社会情勢、納税者の行動などを踏まえ、必要に応じて見直されます。
近年は、相続税評価を利用したスキームへの対応が相次いでおり、今後も新たな改正が行われる可能性があります。
そのため、「今は認められているから安心」と考えるのではなく、制度改正の動向を継続的に確認する姿勢が大切です。
結論
節税は法律で認められた制度を適切に活用する行為ですが、租税回避は制度の趣旨を逸脱した方法によって税負担を軽減しようとする点で異なります。
また、脱税は法律に違反する行為であり、節税や租税回避とは明確に区別されます。
近年、国税庁は貸付用不動産や非上場株式の評価方法など、租税回避につながる制度の見直しを進めています。
相続対策や事業承継を進める際には、目先の税負担だけでなく、制度の趣旨や将来の改正も踏まえた長期的な視点で取り組むことが重要です。
参考
税のしるべ
2026年8月3日
「法人が不動産を購入した後の株式の評価方法を見直しへ、『3年しばり』に短いの声」