2026年度税制改正では、「年収178万円の壁」への見直しとともに、新たな所得控除制度として「特定親族特別控除」が創設されました。
この制度は、大学生年代の子どもがアルバイト収入を増やしても、親の税負担が急激に増えないようにすることを目的としています。
これまで学生本人や保護者は「年収の壁」を意識して働く時間を調整するケースが少なくありませんでした。新制度は、こうした「働き控え」を解消し、人手不足への対応にもつなげることが期待されています。
この記事では、特定親族特別控除の創設背景や対象者、控除額の仕組みについて解説します。
特定親族特別控除とは何か
特定親族特別控除とは、一定の年齢に該当する親族が一定額まで所得を得ても、扶養する人が所得控除を受けられる制度です。
名称に「大学生」と付いていることがありますが、税法上は大学へ在学していることが要件ではありません。
対象となるのは、生計を一にする19歳以上23歳未満の親族であり、年齢などの法定要件を満たすかどうかで判断されます。
そのため、大学へ進学していない人や専門学校に通う人でも、要件を満たせば対象となる場合があります。
制度創設の背景
この制度が創設された背景には、人手不足と物価上昇があります。
近年は最低賃金が上昇し、大学生年代のアルバイト収入も増える傾向にあります。
しかし、従来の制度では一定額を超えて働くと親の扶養控除が受けられなくなるため、多くの学生が勤務時間を調整していました。
その結果、人材不足に悩む企業では、働きたい学生が十分に働けないという課題が生じていました。
そこで、学生年代が安心して働けるよう、新たな所得控除制度として特定親族特別控除が創設されました。
対象となる親族
対象となるのは、次の要件を満たす親族です。
第一に、納税者と生計を一にしていることです。
第二に、19歳以上23歳未満であることです。
第三に、所得要件を満たしていることです。
この制度は「大学生年代」と説明されることが多いものの、大学へ在学していること自体は要件ではありません。
あくまで年齢と所得などの法定要件によって判定されます。
控除額の仕組み
特定親族特別控除では、給与収入のみの場合、年収159万円までは満額の控除を受けることができます。
その後は収入が増えるにつれて控除額が段階的に減少し、年収197万円を超えると控除は受けられなくなります。
従来は「150万円の壁」と呼ばれていた基準が159万円へ引き上げられたことで、大学生年代は以前より多く働くことが可能になりました。
年末調整で注意すること
企業の年末調整では、この新制度への対応が重要になります。
従業員から提出される申告書だけで判断するのではなく、対象となる親族の年齢や年間収入見込みを確認する必要があります。
また、新制度であるため、従業員自身が制度を十分理解していないケースも考えられます。
そのため、企業では制度の内容を丁寧に説明し、必要に応じて個別に確認を行うことが望まれます。
制度が期待される効果
特定親族特別控除は、学生本人だけでなく企業や社会全体にもメリットがあります。
学生は年収を過度に気にせず働きやすくなり、企業は人材確保がしやすくなります。
さらに、労働参加の促進によって人手不足の緩和にもつながることが期待されています。
この制度は、「年収の壁」問題への対応策の一つとして創設された重要な制度といえるでしょう。
結論
特定親族特別控除は、19歳以上23歳未満の親族を対象に創設された新しい所得控除制度です。
大学生年代がアルバイト収入を増やしても、扶養する人の税負担が急激に増えないよう配慮された制度であり、「働き控え」の解消を目的としています。
2026年度税制改正では、満額控除の対象となる給与収入が159万円まで引き上げられ、従来より柔軟に働ける環境が整えられました。
企業の年末調整では新制度への対応が必要になるため、対象者や所得要件を正しく理解して実務に反映することが重要です。
参考
企業実務 2026年8月号(2026年8月)「160万円から178万円へ!『年収の壁』の変化と“源泉所得税”の実務対応」 石井秀治 著