「株式は長期的に預金より高い収益が期待できる」とよく言われます。
実際、長い期間で見ると、多くの国で株式の運用成績は預金や国債を上回ってきました。
では、なぜ株式は高い収益が期待できるのでしょうか。
その答えとなる考え方が「リスクプレミアム」です。
投資で期待できる収益の背景を理解するうえで、最も重要な概念の一つです。
リスクプレミアムとは
リスクプレミアムとは、リスクを引き受ける見返りとして期待される追加的な収益のことです。
例えば、元本保証のある預金と、価格が変動する株式が同じ利回りなら、多くの人は安全な預金を選ぶでしょう。
そのため、株式へ投資してもらうには、預金より高い収益が期待できる必要があります。
この「上乗せされる期待収益」がリスクプレミアムです。
つまり、高い利益が期待できるのは、高いリスクを引き受けているからなのです。
リスクとリターンは表裏一体
投資の世界には、「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」という考え方があります。
一般的に、価格変動が大きい資産ほど、高い収益が期待されます。
一方で、安全性の高い資産は、大きな利益を期待することはできません。
もちろん、リスクが高いから必ず高い利益が得られるわけではありません。
あくまでも、「長期的には高い収益が期待される」という考え方です。
そのため、短期では大きな損失を被ることもあります。
株式リスクプレミアムとは
リスクプレミアムの中でも代表的なのが「株式リスクプレミアム」です。
これは、株式が国債などの安全資産をどれだけ上回る収益を期待できるかを示す考え方です。
例えば、安全資産の利回りが2%で、株式の期待収益率が7%なら、株式リスクプレミアムは5%になります。
投資家は、この追加的な収益を期待して株式へ投資します。
ただし、この数字は将来を保証するものではなく、経済環境や市場心理によって変化します。
リスクプレミアムはなぜ変わるのか
リスクプレミアムは一定ではありません。
景気が安定している時期には、投資家は積極的にリスクを取るため、リスクプレミアムは小さくなる傾向があります。
反対に、金融危機や景気後退局面では、安全資産を求める動きが強まり、株式へ投資するためにはより高い収益が求められます。
この結果、リスクプレミアムは大きくなります。
つまり、投資家心理もリスクプレミアムを左右する重要な要素なのです。
AI相場でも意識される考え方
AI関連企業への投資が拡大する現在でも、リスクプレミアムは重要な視点です。
将来の利益成長が期待される企業ほど、高い株価が付く傾向があります。
しかし、その期待が大きくなり過ぎると、投資家が受け取れるリスクプレミアムは小さくなることがあります。
期待だけで株価が上昇し続ければ、将来得られる利益が十分でなくなる可能性があるからです。
投資では、「成長性」だけでなく、「その価格に見合う収益が期待できるか」を考えることが重要です。
長期投資ではリスクプレミアムが味方になる
株式市場は短期的には大きく変動します。
しかし、長期間にわたって投資を続けることで、リスクプレミアムを受け取りやすくなると考えられています。
そのため、多くの年金基金や機関投資家は、短期的な値動きよりも長期的な期待収益を重視しています。
もちろん、将来も過去と同じ結果になる保証はありません。
それでも、長期投資という考え方は、リスクプレミアムを活用する代表的な方法となっています。
高い収益には理由がある
投資初心者は、「利回りが高い」という言葉だけで投資先を選びたくなることがあります。
しかし、高い収益が期待できる商品には、それ相応のリスクがあります。
逆に、「絶対に安全で高利回り」という商品があれば、それは慎重に確認する必要があります。
投資では、「なぜ高い収益が期待できるのか」という理由を理解することが、失敗を防ぐ第一歩になります。
結論
リスクプレミアムとは、投資家がリスクを引き受ける見返りとして期待する追加的な収益のことです。株式が預金や国債より高い収益を期待できるのは、価格変動というリスクを負っているためです。ただし、高い収益が保証されているわけではありません。投資では、期待収益だけを見るのではなく、その裏側にあるリスクを理解し、長期的な視点で資産形成を進めることが重要です。
参考
ゼイヴィ・ボディ、ロバート・C・マートン著『ファイナンス』
バートン・マルキール著『ウォール街のランダム・ウォーカー』
日本経済新聞 2026年7月31日 朝刊 エコノミスト360°視点「強欲か恐怖か、揺れる投資戦略」