企業は商品そのものだけで競争する時代から、「買い物の体験」そのもので競争する時代へと変わりつつあります。
同じ商品でも、「商品を知る」「比較する」「購入する」「利用する」「再び購入する」という一連の流れが快適であれば、その企業を選び続ける人は増えていきます。
このような顧客の行動全体を一つの旅に見立てて考える手法が「カスタマージャーニー」です。
近年はAIや顧客データの活用が進み、一人ひとりに合わせた顧客体験を設計するための重要な考え方として注目されています。
今回は、カスタマージャーニーとは何か、その考え方や活用方法について分かりやすく解説します。
カスタマージャーニーとは何か
カスタマージャーニーとは、利用者が商品やサービスを知ってから購入し、その後も利用を続けるまでの一連の体験を時系列で整理し、分析する考え方です。
「ジャーニー」とは「旅」という意味があります。
例えば、ある商品を購入する場合でも、
・SNSで商品を知る。
・口コミを調べる。
・公式サイトを見る。
・店舗で実物を確認する。
・ネットで購入する。
・商品を使用する。
・気に入れば再購入する。
というように、多くの行動を経ています。
企業は、この一連の流れを理解することで、どの場面で顧客が困っているのか、何を求めているのかを把握しやすくなります。
なぜ重要なのか
以前は、「どうすれば商品が売れるか」がマーケティングの中心でした。
しかし現在は、「どうすれば満足して利用し続けてもらえるか」がより重要になっています。
新しい利用者を獲得するだけでなく、既存の利用者との長い関係を築くことが企業の成長につながるためです。
そのため、購入という一場面だけではなく、商品を知る前から購入後までを含めた体験全体を考えることが求められています。
顧客との接点は増えている
インターネットやスマートフォンの普及により、企業と利用者の接点は大きく増えました。
例えば、
・テレビCM。
・SNS。
・動画配信サービス。
・検索サイト。
・ネット通販。
・実店舗。
・アプリ。
・メール。
以前であれば店舗だけだった接点が、現在では数多く存在します。
そのため、それぞれの場面で一貫したサービスや情報を提供することが、顧客満足度を高めるポイントになります。
AIとデータ分析が設計を支える
カスタマージャーニーは、以前はアンケートや担当者の経験を基に作成されることが一般的でした。
現在では、AIとデータ分析によって、より実態に近い顧客行動を把握できるようになっています。
例えば、
どの広告を見て商品を知ったのか。
どのページで購入をやめたのか。
どのタイミングで再購入したのか。
どのサービスを利用すると満足度が高まるのか。
こうしたデータを分析することで、顧客体験を継続的に改善できます。
PayPayとセブンの連携でも重要になる
PayPayとセブン&アイ・ホールディングスが顧客データを連携することで、カスタマージャーニーをより詳しく把握できる可能性があります。
例えば、
アプリでクーポンを確認する。
店舗で商品を購入する。
PayPayで決済する。
ポイントを利用する。
次回の来店で新たな提案を受ける。
こうした一連の流れを分析することで、利用者にとって使いやすいサービスや、より魅力的な提案につなげられると期待されています。
顧客視点を忘れないことが重要
データが充実しても、企業の都合だけでサービスを設計してしまえば、利用者の満足にはつながりません。
例えば、
手続きが複雑である。
通知が多すぎる。
ポイント制度が分かりにくい。
こうした小さな不満が積み重なると、利用者は離れてしまいます。
カスタマージャーニーでは、「企業が何を伝えたいか」ではなく、「利用者がどのように感じるか」という視点で考えることが何より重要です。
結論
カスタマージャーニーとは、利用者が商品やサービスを知ってから購入し、その後も利用を続けるまでの体験全体を分析・設計する考え方です。
AIやデータ分析の発展により、企業は顧客の行動をより詳しく把握し、一人ひとりに合わせたサービスを提供できるようになっています。
しかし、データを集めること自体が目的ではありません。
そのデータを活用して、利用者にとって分かりやすく、便利で、心地よい体験を提供することが重要です。
これからの小売業では、「何を売るか」だけではなく、「どのような体験を提供するか」が企業価値を左右する大きな要素になっていくでしょう。
参考
日本経済新聞(2026年7月24日朝刊)
PayPayとセブン&アイ、顧客データ1億件統合 最大級のポイント経済圏
セブン、決済利用者に狙い PayPayと顧客データ統合 購買分析・ポイント還元巧みに