相続は、遺産分割協議や相続登記など、多くの手続きが必要になります。
しかし、そもそも相続は「いつ始まる」のかを正しく理解している人は意外に多くありません。
相続開始の時点は、さまざまな法律上の権利や義務が生じる重要なタイミングです。
相続放棄や限定承認の期限も、この相続開始を基準として考えられます。
今回は、相続開始の基本的な考え方について解説します。
相続は被相続人の死亡によって始まる
民法では、相続は被相続人の死亡によって開始すると定められています。
つまり、亡くなった瞬間に相続が始まります。
遺産分割協議や家庭裁判所での手続きが終わってから相続が始まるわけではありません。
死亡という事実そのものが、相続開始のきっかけになります。
その時点で、相続人となる人や相続財産も法律上確定することになります。
相続開始と同時に権利や義務が引き継がれる
相続が開始すると、被相続人が持っていた財産だけでなく、法律上引き継がれる権利や義務も相続人へ承継されます。
例えば、
- 預貯金
- 不動産
- 株式
- 貸付金
- 借入金
などは、相続開始と同時に相続人へ承継されます。
もちろん、その後に遺産分割協議を行い、誰がどの財産を取得するかを決めることになりますが、法律上の相続そのものは死亡時点で始まっているのです。
相続開始が基準となる制度は多い
相続開始の時点は、多くの制度の基準になります。
例えば、
- 相続放棄の熟慮期間
- 限定承認の申述期間
- 遺留分侵害額請求の期間
- 相続税の申告期限
などは、相続開始や相続開始を知った時を起点として計算されます。
そのため、相続開始の日を正しく把握しておくことは、各種手続きを期限内に進めるうえでも非常に重要です。
行方不明者では失踪宣告が関係することもある
通常は死亡によって相続が始まります。
しかし、長期間行方不明となっている場合には、家庭裁判所の失踪宣告によって法律上死亡したものとみなされることがあります。
この場合には、法律で定められた死亡時点を基準として相続が開始します。
このような制度は利用される場面が多いわけではありませんが、災害や事故など特殊な事情では重要な意味を持つことがあります。
相続開始後は早めの準備が重要
相続が始まると、多くの手続きには期限があります。
例えば、
- 財産調査
- 相続人の確認
- 相続放棄の検討
- 遺言書の有無の確認
などは、できるだけ早く進めることが望まれます。
特に借金があるかどうか分からない場合には、三か月という熟慮期間を意識しながら判断しなければなりません。
相続開始は法律上のスタートであると同時に、相続人にとってさまざまな判断が始まる時点でもあるのです。
結論
相続は、被相続人が死亡した時点で法律上当然に開始します。
その瞬間から、相続人や相続財産が確定し、多くの権利や義務が相続人へ承継されます。
また、相続放棄や限定承認、遺留分侵害額請求など、多くの制度は相続開始を基準として期限が定められています。
相続開始の意味を正しく理解することは、その後の相続手続きを適切に進めるための出発点となる重要な知識といえるでしょう。
参考
日本税理士会連合会 令和7年度全国統一研修会「相続法概説」(早川眞一郎)