生前贈与はなぜ今でも有効なのか 財産移転編

税理士
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「相続税対策として生前贈与はもう意味がない。」

近年、このような話を耳にすることが増えました。

その背景には、相続開始前の贈与を相続財産へ加算する期間が延長されたことや、相続時精算課税制度の改正があります。

確かに制度は大きく変わりました。しかし、それは「生前贈与が使えなくなった」という意味ではありません。

むしろ令和時代は、これまで以上に計画的な生前贈与が重要になっています。

今回は、生前贈与が今でも有効といわれる理由について考えてみます。

生前贈与の目的は相続財産を減らすことだけではない

生前贈与というと、多くの人は「相続税を減らすため」と考えます。

もちろん、それは大切な目的の一つです。

しかし、生前贈与にはそれ以外にも大きな意味があります。

例えば、

子どもの住宅取得を支援する。

孫の教育費を援助する。

事業承継を円滑に進める。

高齢になってからの財産管理を簡素化する。

このように、生きているうちに財産を必要な人へ移すこと自体が、生前贈与の大きな価値なのです。

財産は時間をかけて移転するほど効果が高い

生前贈与の最大の特徴は、「時間を味方につけられること」です。

例えば、毎年少しずつ財産を移転すれば、一度に大きな財産を承継する場合よりも柔軟な資産承継が可能になります。

また、将来値上がりが期待される資産を早めに贈与すれば、その後の値上がり分は受贈者の財産になります。

つまり、将来の資産増加分まで相続財産から切り離せる可能性があります。

これは、生前贈与ならではのメリットです。

贈与契約は双方の意思があって初めて成立する

贈与は、一方が「あげる」と言うだけでは成立しません。

贈る人と受け取る人の双方が合意して初めて成立する契約です。

講義資料でも、贈与契約は民法上の契約であり、書面がなくても成立する一方、書面がない場合には贈与の事実が不明確になり、税務上の問題が生じる可能性があるため、贈与契約書を作成することの重要性が説明されています。

さらに、必要に応じて確定日付を取得することも有効な方法として紹介されています。

このことからも、生前贈与は「お金を渡した」だけではなく、「契約として成立していること」が重要であることが分かります。

制度改正後も生前贈与は選択肢である

近年の税制改正では、相続開始前の一定期間の贈与について、相続財産へ加算する仕組みが見直されました。

これだけを見ると、生前贈与のメリットがなくなったように感じるかもしれません。

しかし、実際にはそうではありません。

相続まで十分な期間がある人。

将来成長が期待できる資産を持っている人。

収益を生む資産を保有している人。

このようなケースでは、生前贈与の効果は依然として大きいと考えられます。

制度が変わったからやめるのではなく、自分に合った方法を選ぶことが大切です。

贈与する財産にも工夫が必要

何を贈与するかによっても、将来の効果は変わります。

現金だけではありません。

株式。

投資信託。

収益不動産。

自社株。

それぞれに特徴があります。

例えば、配当を生み続ける株式を早めに贈与すれば、その後の配当収入も受贈者のものになります。

また、将来値上がりする可能性が高い資産を早めに移転できれば、その値上がり分も相続財産には含まれません。

生前贈与は、「いくら贈るか」だけではなく、「何を贈るか」も重要なのです。

家族とのコミュニケーションにもつながる

生前贈与には、もう一つ大きな意味があります。

それは、家族で資産承継について話し合うきっかけになることです。

誰に何を引き継ぐのか。

なぜその財産を渡すのか。

将来どのように活用してほしいのか。

こうした話し合いを生前から行うことで、相続発生後の誤解や争いを減らすことにもつながります。

相続対策は税金だけではありません。

家族の理解を深めることも、大切な目的の一つです。

焦らず計画的に進めることが成功の鍵

生前贈与は、一度に大きな成果を求める制度ではありません。

数年、あるいは十年以上かけて少しずつ財産を移転することで、その効果が積み重なっていきます。

だからこそ、「まだ元気だから大丈夫」と考えて先送りするのではなく、早めに準備を始めることが重要です。

時間は、どんな節税策よりも強力な味方になります。

結論

生前贈与は、税制改正によって姿を変えましたが、その価値が失われたわけではありません。

相続財産を減らすだけではなく、資産の成長分を移転し、家族への支援を早めに実現し、円滑な資産承継につなげることができる制度です。

令和時代の相続対策では、「制度が使えるかどうか」だけではなく、「いつ始めるか」「何を贈与するか」「どのような目的で行うか」がこれまで以上に重要になります。

生前贈与は、相続税対策という枠を超え、家族の未来を考えるための長期的な資産承継戦略として活用していくことが求められているのです。

参考

東京地方税理士会 令和の資産家の相続税対策 近年の税制改正をふまえて 江本尚浩 講義資料

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