日本では築40年以上のマンションが急速に増えています。
一方で、住民の高齢化や空き家の増加、管理組合の機能低下など、新たな課題も深刻になっています。
こうした状況を受けて、区分所有法をはじめとするマンション関連制度の見直しが進められています。
法律の改正は難しく感じられるかもしれませんが、その目的は「マンションを管理しやすくし、住み続けられる環境を整えること」にあります。
今回は、区分所有法改正の背景と、マンション管理が今後どのように変わっていくのかについて考えてみます。
区分所有法とは何か
区分所有法とは、マンションのように一つの建物を複数の人が所有する場合のルールを定めた法律です。
例えば、
- 管理組合の運営
- 総会の開催
- 共用部分の管理
- 管理規約
- 建て替え
などについて基本的なルールを定めています。
マンションで安心して暮らせるのは、この法律によって権利と義務が整理されているからです。
なぜ改正が必要になったのか
区分所有法が制定された当時と比べ、日本のマンションを取り巻く環境は大きく変化しました。
例えば、
- 高齢化
- 人口減少
- 空き住戸の増加
- 相続による所有者不明
- 管理組合の担い手不足
など、新たな問題が次々と生まれています。
従来の制度では、重要な決定を行うために多くの区分所有者の賛成が必要となり、必要な修繕や再生が進まないケースも少なくありませんでした。
こうした課題に対応するため、制度の見直しが進められています。
合意形成を進めやすくする
改正の大きな目的の一つは、管理組合の意思決定を円滑にすることです。
マンションでは、
- 大規模修繕
- 管理規約の変更
- 建物の再生
- 建て替え
など重要な事項について総会で決議を行います。
しかし、区分所有者の高齢化や相続などによって、連絡が取れない所有者や意思表示が難しい所有者が増えています。
その結果、必要な工事や管理が進まない事例も見られるようになりました。
改正では、こうした実情を踏まえ、円滑な意思決定ができるよう制度の整備が進められています。
老朽化マンションへの対応
老朽化マンションの増加も改正の大きな背景です。
建物が古くなると、
- 耐震性能
- 給排水設備
- バリアフリー対応
など、多くの課題が生じます。
しかし、建て替えや大規模改修には区分所有者全体の合意が必要です。
そのため、必要性が明らかでも手続きが進まず、管理不全に陥るマンションもあります。
制度改正では、こうしたマンションの再生を後押しする仕組みづくりも重要なテーマとなっています。
管理組合の責任はさらに重くなる
制度が整備されても、実際にマンションを運営するのは管理組合です。
そのため、
- 長期修繕計画
- 修繕積立金
- 管理会社との契約
- 理事会運営
などを適切に行う責任は変わりません。
法律は管理を支援する道具であって、管理そのものを代わりに行ってくれるわけではないのです。
第三者管理方式も広がる可能性
理事のなり手不足が続く中、専門家が管理を担う第三者管理方式も広がり始めています。
区分所有法の見直しと合わせて、
- 管理の専門化
- 管理の透明性
- ガバナンスの強化
が求められる時代になっています。
管理会社やマンション管理士などの専門家を活用しながらも、区分所有者が適切に監督する仕組みづくりが今後ますます重要になるでしょう。
「所有する責任」が問われる時代へ
マンションは「購入して終わり」の資産ではありません。
所有している限り、
- 管理費
- 修繕積立金
- 総会への参加
- 管理組合への協力
といった責任があります。
人口減少や高齢化が進む日本では、管理を他人任せにすることが難しくなっています。
これからは、「所有する責任」を区分所有者一人ひとりが意識することが求められるでしょう。
将来の資産価値にも影響する
管理体制がしっかりしているマンションは、
- 修繕が計画的に行われる
- 建物の安全性が維持される
- 売却時の評価も安定しやすい
という特徴があります。
一方で、管理不全が続けば、建物の老朽化だけでなく資産価値も大きく低下する可能性があります。
制度改正は、単なる法律の変更ではありません。
マンションという共同資産を将来世代へ引き継ぐための土台づくりでもあるのです。
結論
区分所有法改正の目的は、老朽化マンションの増加や管理組合の高齢化など、時代の変化に対応できる仕組みを整えることにあります。管理や修繕、再生を進めやすくする制度が整備されても、その効果を生かせるかどうかは区分所有者の意識と管理組合の運営にかかっています。
これからのマンション管理では、「住む人」だけではなく、「共同資産を守る所有者」としての視点がますます重要になります。制度改正をきっかけに、自分のマンションの管理状況や将来計画を見直してみることが、資産価値を守る第一歩になるのではないでしょうか。
参考
日本経済新聞 2026年7月20日 朝刊
マンション不都合な真実 あえぐ管理組合(上)切り捨てられる小型物件
日本経済新聞 2026年7月20日 朝刊
マンションの管理組合 高齢化、理事のなり手不足(きょうのことば)
法務省
区分所有法等の改正に関する公表資料