租税法律主義とは何か 税法はなぜ文言どおりに解釈されるのか

税理士
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税金は私たちの財産に直接影響を与えるものです。そのため、「税務署が妥当だと思えば課税できる」という仕組みでは、国民の権利は守られません。

2026年、外国財団を利用した資産運用を巡る東京高裁判決では、国税当局の課税処分が「租税法律主義」に反すると判断され、大きな注目を集めました。

この判決は単なる富裕層の節税事件ではありません。「税金は法律に書かれている範囲でしか課すことはできない」という、日本の税制の根本原則を改めて示した事例でもあります。

今回は、租税法律主義の考え方と、その重要性について分かりやすく解説します。

租税法律主義とは何か

日本国憲法第84条には、

「新たに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする」

と定められています。

これが「租税法律主義」です。

つまり、

・どのような税金を課すのか
・誰に課税するのか
・税率はいくらなのか
・いつ納税義務が生じるのか

これらはすべて法律によって定められていなければなりません。

行政機関が独自の判断で課税範囲を広げることは許されないのです。

なぜ税法は厳しく解釈されるのか

税法は「侵害規範」と呼ばれることがあります。

これは税金が国民の財産権を制限する法律だからです。

例えば刑法も自由を制限する法律であるため、条文は厳格に解釈されます。

税法も同じです。

「たぶんこういう趣旨だから」

「実質的には同じだから」

という理由だけで課税範囲を広げることは認められません。

税法では原則として、法律の文言どおりに解釈する「文理解釈」が最優先されます。

今回争われたポイント

今回の事件では、海外財団を利用した資産運用が問題となりました。

資産家はリヒテンシュタイン財団を設立し、その財団がバハマ法人を所有していました。

当時の外国子会社合算税制では、

「株式などを直接又は間接に保有する」

ことが課税要件となっていました。

国税当局は

「財団を実質的に支配しているのだから、実質的には株式を保有しているのと同じだ」

と判断しました。

一方、高裁は

「実質的な支配は認められるが、法律が求める資本関係とは異なる」

と判断しました。

つまり、

支配していること

株式を保有していること

は法律上まったく別の概念であると整理したのです。

高裁が重視した「文理解釈」

東京高裁は非常に明確な考え方を示しました。

租税法律主義では、

法律に書かれていないものまで広げて課税してはいけない

ということです。

もし今回のような租税回避を防ぎたいのであれば、

法律を改正して対応すべきであり、

裁判所や税務署が条文を広く解釈して補うべきではない

と判断しました。

実際、このような問題を受けて、2017年度税制改正では外国子会社合算税制が見直され、形式的な株式保有がなくても実質支配があれば課税対象となるよう制度が改正されています。

つまり、高裁は

「改正後なら課税できる。しかし改正前の法律では課税できない」

という線引きを行ったのです。

実質課税との違い

税務では「実質で判断する」という言葉を耳にすることがあります。

しかし、これは何でも実質で判断できるという意味ではありません。

例えば、

契約書だけ形式的に作成して実際は別の取引である

名義だけ他人にして実際の所有者が異なる

このようなケースでは実態を重視します。

一方で、

法律が定めていない課税要件まで実質論で広げることはできません。

今回の判決は、この違いを明確に示したものともいえます。

税制改正が果たす役割

税法は社会の変化に合わせて毎年改正されています。

新しい節税スキームが登場すれば、

その穴をふさぐ形で法改正が行われます。

これは租税法律主義と矛盾しません。

むしろ、

法律で新たにルールを定めてから適用する

という手順こそが法治国家の原則なのです。

行政が法律を超えて課税するのではなく、

国会で法律を改正する。

この順序が守られているからこそ、税制への信頼が維持されます。

結論

今回の東京高裁判決は、租税回避を容認した判決というよりも、「法律に書かれていない課税は認められない」という租税法律主義を改めて確認した判決といえます。

税務では「実質」を重視する場面もありますが、それは法律の範囲内で認められるものです。法律の文言を超えて課税範囲を広げることはできません。

税制には公平性も重要ですが、それ以上に法的安定性も欠かせません。もし制度に不備があるのであれば、行政の解釈で補うのではなく、国会で法律を改正して対応する。この原則こそが、納税者の権利を守り、公平な税制を支える土台となっているのです。

参考

日本経済新聞 2026年7月20日 朝刊
国税VS資産家、高裁で逆転 バハマなど舞台の節税、追徴課税は「違法」 法律の厳密解釈で明暗

日本経済新聞 2026年7月20日 朝刊
一審や国税解釈を批判

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