事業承継税制というと、「後継者へ株式を承継するための制度」というイメージを持つ方が多いでしょう。
しかし近年、中小企業庁では、事業承継を「会社を残すための制度」から、「地域社会を支える企業を育てるための制度」へ発展させようという議論が進められています。
その中で注目されているキーワードが「地域貢献」です。
今回は、地域貢献と事業承継税制の関係について考えてみます。
中小企業は地域経済の中心である
日本には数多くの中小企業があります。
その多くは地域に根差し、
地域の人を雇用し、
地域の企業と取引し、
地域住民の生活を支えています。
地方では、一社の廃業が地域経済へ与える影響は決して小さくありません。
取引先が減少し、雇用が失われ、地域全体の活力が低下することもあります。
だからこそ、中小企業の事業承継は一企業だけの問題ではなく、地域全体の課題として考えられるようになってきたのです。
会社が存続するだけでは十分ではない
これまでの事業承継では、「会社を存続させること」が大きな目標でした。
もちろん、それは今でも重要です。
しかし、会社が存続していても、
売上が減少し続ける。
人材が確保できない。
地域とのつながりが弱くなる。
こうした状態では、地域経済への貢献は難しくなります。
そのため、これからは「会社が成長しながら地域へ貢献すること」がより重視される方向へ進んでいます。
地域貢献とは何を意味するのか
地域貢献という言葉を聞くと、寄付やボランティア活動を思い浮かべる方もいるかもしれません。
しかし、中小企業にとって最も大きな地域貢献は、本業を通じて地域を支えることです。
例えば、
地域で雇用を維持する。
地域企業との取引を継続する。
地元の若者を育成する。
地域の課題を解決する商品やサービスを提供する。
こうした活動は、地域社会にとって大きな価値があります。
会社が健全に成長すること自体が、地域貢献につながるのです。
制度も地域への貢献を重視し始めている
中小企業庁が公表した今後の制度検討資料では、生産性向上だけでなく、地域への貢献を制度へどう反映させるかについても議論されています。
一方で、
地域貢献をどのように評価するのか。
業種による違いをどう考えるのか。
地域に必要な企業をどう支援するのか。
など、慎重な検討が必要であることも示されています。
つまり、今後の制度では、「税制」だけではなく、「企業の社会的役割」も重視される可能性があるということです。
後継者には地域を見る視点が求められる
これからの後継者には、会社の利益だけではなく、地域全体を見る視点も必要になります。
例えば、
地域の人材不足をどう解決するか。
地域企業とどのように連携するか。
地域ブランドをどう育てるか。
こうした視点を持つ企業ほど、地域から必要とされる存在になります。
地域から信頼される会社は、従業員の採用や金融機関との関係、取引先との信頼構築にも良い影響を与えるでしょう。
地域貢献は会社の競争力にもなる
近年は、価格だけで競争する時代ではありません。
「地域になくてはならない会社」であることが、大きな競争力になります。
地域とのつながりが強い企業は、
優秀な人材が集まりやすい。
地元企業との連携が進む。
行政や金融機関との信頼も深まる。
こうした好循環が生まれます。
つまり、地域貢献は社会貢献活動ではなく、会社の持続的な成長戦略でもあるのです。
結論
事業承継税制は、今後さらに「会社を残す制度」から「地域を支える会社を育てる制度」へと発展していく可能性があります。
これからの後継者には、利益を追求するだけではなく、地域社会へどのような価値を提供できるかという視点も求められるでしょう。
事業承継とは、経営者が交代することではありません。
会社が地域に必要とされ続ける存在へ成長していくことです。
その積み重ねが、会社の未来だけでなく、地域の未来も支えていくことにつながるのではないでしょうか。
参考
北陸税理士会「事業承継税制(特例版)における実務上の論点整理」
中小企業庁「今後の検討の方向性について」