相続税対策として不動産を購入する方法は、昔から広く知られています。
確かに、不動産は現金や預貯金と比べて相続税評価額が低くなるケースが多く、一定の節税効果が期待できることは事実です。
しかし、令和8年度税制改正では、相続直前に取得した貸付用不動産の評価方法が見直され、これまでのような単純な節税対策は通用しにくくなりました。
これからは、「相続税が安くなるから買う」という発想だけでは、大きなリスクを抱えることになりかねません。
今回は、不動産を活用した相続対策を検討する際に、ぜひ押さえておきたいポイントを解説します。
節税だけを目的に購入しない
最も重要なのは、不動産を「節税商品」と考えないことです。
税制は社会や経済の変化に応じて改正されます。
実際、今回の税制改正では、市場価格と相続税評価額の大きな乖離を利用した節税手法に対して見直しが行われました。
つまり、税制だけを前提にした資産運用は、制度改正によって効果が失われる可能性があります。
一方で、不動産そのものの価値は、税制が変わっても残ります。
だからこそ、購入する目的を
「節税」
ではなく、
「資産形成」
に置くことが大切です。
収益性を確認する
賃貸マンションやアパートを購入するのであれば、収益性の確認は欠かせません。
例えば、
- 家賃収入は安定しているか
- 空室率は高くないか
- 修繕費は将来どれくらい必要か
- 管理会社は信頼できるか
などを確認する必要があります。
相続税が減っても、毎年赤字が続くような物件では、本末転倒です。
長期的に安定した収益を生み出すことが、不動産投資の本来の目的であることを忘れてはいけません。
借入金にも注意する
不動産購入では借入金を利用するケースが多くあります。
借入金は相続税計算上、債務控除の対象になります。
しかし、
「借入を増やせば相続税が減る」
という考え方だけで多額の借入を行うことは危険です。
金利が上昇すれば返済負担は増えます。
空室が続けば家賃収入も減少します。
さらに、相続後に相続人が返済を引き継ぐことも考えなければなりません。
借入は節税のためではなく、資金計画全体の中で適切に活用するものです。
出口戦略まで考える
不動産は購入時だけではなく、売却時まで考えておく必要があります。
例えば、
- 将来売却しやすい立地か
- 人口減少の影響はないか
- 建物の老朽化は進まないか
- 次の買い手が見つかりやすいか
なども重要な判断材料です。
相続人が不動産を引き継いだものの、売りたくても売れないというケースは少なくありません。
「買うこと」よりも、「将来どう引き継ぐか」を考えることが、相続対策では非常に重要です。
家族全体の資産バランスを見る
相続対策では、不動産だけに資産を集中させることにも注意が必要です。
不動産は分割しにくく、現金化にも時間がかかります。
そのため、
- 預貯金
- 有価証券
- 保険
- 不動産
などをバランスよく保有することが望ましいでしょう。
特に相続税の納税資金や、遺産分割のための現金を確保しておくことは非常に重要です。
「評価額は下がったが、納税する現金がない」という状況は避けなければなりません。
税制改正は今後も続く
今回の改正は、不動産だけに限った話ではありません。
近年の税制改正には共通した流れがあります。
それは、
「制度を利用した過度な節税は見直す」
という方向性です。
今後も新たな節税スキームが登場すれば、税制改正によって対応される可能性があります。
だからこそ、短期的な節税効果ではなく、長期的な資産価値を重視した資産形成がますます重要になるでしょう。
結論
相続税対策として不動産を購入すること自体は、今後も有効な選択肢の一つです。
しかし、その目的が「節税だけ」であるならば、制度改正によって期待した効果が得られなくなる可能性があります。
これからの相続対策では、収益性や資産価値、将来の承継まで含めて総合的に判断することが欠かせません。
不動産は税金を減らすために買うものではなく、家族の資産を守り、次世代へ円滑に引き継ぐための大切な財産として考えることが、これからの時代には求められるのではないでしょうか。
参考
令和8年度税制改正の実務ポイント 第3 資産課税・住宅税制(2026年4月6日講義資料)