NPO法人の決算書を見る際、多くの人は活動計算書に注目します。
黒字なのか。
赤字なのか。
寄付金はいくら集まったのか。
確かに重要な情報です。
しかし、それだけでNPO法人の健全性を判断することはできません。
企業でも損益計算書だけで経営状態を判断できないのと同じです。
NPO法人にも財務の全体像を見る視点が必要になります。
今回は、NPO法人を正しく評価するための財務分析について考えてみたいと思います。
黒字だから安心とは限らない
例えば活動計算書で100万円の黒字が出ていたとします。
一見すると順調な団体に見えます。
しかし貸借対照表を見ると、
現金残高がほとんどない
借入金が多い
未払金が増えている
という場合があります。
このような状態では資金繰りが厳しく、将来の継続性に不安が残ります。
活動計算書だけでは見えない問題が存在するのです。
貸借対照表を見る習慣を持つ
NPO法人を分析する際には貸借対照表が欠かせません。
特に確認したいのは、
現金預金
未収金
借入金
正味財産
です。
活動が活発でも資金が不足していれば継続は困難になります。
逆に一時的な赤字でも十分な正味財産があれば問題ない場合もあります。
財務分析ではストックの視点が重要になります。
正味財産の推移が重要
NPO法人では利益ではなく正味財産の増減が重要です。
正味財産は、
資産から負債を差し引いた残り
です。
数年間の推移を見ることで、
財務体質が強化されているのか
弱体化しているのか
が分かります。
単年度の結果だけで判断するのは危険です。
継続的な推移を見ることが大切です。
現金残高は命綱である
NPO法人の倒産原因の多くは資金不足です。
活動が評価されていても、
寄付金の入金が遅れる
助成金の交付が遅れる
委託料の回収が遅れる
といった理由で資金繰りが悪化することがあります。
そのため現金預金残高は重要な指標になります。
利益よりも現金が大切な場面は少なくありません。
寄付依存度も確認する
財源構造も分析のポイントです。
例えば、
寄付金80%
事業収益10%
会費10%
という団体もあります。
一方で、
事業収益70%
寄付金20%
会費10%
という団体もあります。
どちらが良い悪いではありません。
しかし財源の偏りが大きい場合はリスクも高まります。
財務分析では収入構造も確認する必要があります。
事業費比率だけでは判断できない
NPO法人では事業費比率がよく注目されます。
確かに重要な指標です。
しかし事業費比率が高いから優秀とは限りません。
管理費が極端に少ない場合、
内部統制不足
人材育成不足
情報管理不足
などの問題を抱えている可能性があります。
数字だけでなく、その背景を見ることが重要です。
財務分析は未来を見るためのもの
財務分析の目的は過去の評価だけではありません。
未来を考えることです。
このままの収入構造で継続できるか。
寄付金が減少したらどうなるか。
助成金が終了したらどうなるか。
こうした視点が必要になります。
財務分析は経営計画の出発点でもあるのです。
税理士の価値が最も発揮される場面
決算書作成はAIや会計ソフトでも対応できる時代になっています。
しかし財務分析は違います。
数字の背景を読み、
課題を見つけ、
改善策を提案する。
ここに税理士の価値があります。
特にNPO法人では、利益だけでは測れない組織だからこそ専門家の助言が重要になります。
人生100年時代のNPO法人
人生100年時代には社会課題がさらに多様化します。
高齢者支援
孤独対策
地域コミュニティ再生
終活支援
相続支援
など、NPO法人の活躍領域は広がっていくでしょう。
その中で求められるのは、良い活動だけではなく持続可能な活動です。
財務分析はその持続可能性を支える重要な道具になります。
結論
NPO法人は活動計算書だけでは評価できません。
貸借対照表、財源構造、正味財産の推移、資金繰り状況などを総合的に分析する必要があります。
黒字だから安心とは限らず、赤字だから危険とも限りません。
大切なのは、将来も活動を継続できる財務基盤を持っているかどうかです。
財務分析とは過去を振り返る作業ではなく、未来の活動を支えるための羅針盤なのです。
次回は、「NPO法人にガバナンスが求められるのはなぜか 信頼構築編」について解説したいと思います。
参考
東京税理士会目黒支部
「NPO法人の会計について」 税理士 脇坂誠也
補助資料「NPO法人の会計について」