NPO法人の活動は一つとは限りません。
例えば、
子ども支援事業
高齢者支援事業
相談事業
研修事業
地域活性化事業
など、複数の事業を同時に行っている団体も少なくありません。
そのため、
法人全体では黒字
法人全体では赤字
という情報だけでは実態が見えないことがあります。
そこで重要になるのが「事業別損益」の考え方です。
今回は、NPO法人会計における事業別損益の役割について解説します。
法人全体の数字だけでは見えないもの
例えばNPO法人全体では100万円の黒字だったとします。
一見すると問題はなさそうです。
しかし詳しく見ると、
子ども支援事業 200万円の赤字
研修事業 300万円の黒字
という場合もあります。
この場合、全体数字だけでは子ども支援事業の課題は見えてきません。
経営判断を行うためには、事業ごとの状況を把握する必要があります。
事業別損益とは何か
事業別損益とは、事業ごとに収益と費用を集計し、収支状況を把握する仕組みです。
例えば、
A事業
B事業
C事業
ごとに、
収益
人件費
旅費交通費
委託費
その他経費
を集計します。
これにより、それぞれの事業がどのような成果を上げているのかが分かります。
寄付者への説明責任
NPO法人では寄付金を受けて活動することがあります。
寄付者は、
「自分の寄付がどの事業に使われたのか」
を知りたいと考えています。
例えば、
子ども食堂支援
災害支援
奨学金事業
など、目的を指定した寄付もあります。
事業別損益を開示することで、寄付金が適切に活用されていることを説明できます。
これは社会的信頼の向上にもつながります。
助成金管理にも役立つ
助成金には用途が指定されていることが少なくありません。
例えば、
地域福祉事業限定
環境保全活動限定
子育て支援限定
などです。
助成団体は、
助成金が適切に使われたか
事業成果が出ているか
を確認します。
事業別損益を作成することで、その説明が容易になります。
赤字事業が悪いとは限らない
ここで注意したいのは、赤字事業が必ずしも悪いわけではないということです。
NPO法人の目的は利益ではありません。
例えば、
生活困窮者支援
災害復興支援
障害者支援
などは、そもそも収益を上げにくい事業です。
赤字であっても社会的価値が高い場合があります。
重要なのは、
なぜ赤字なのか
その赤字をどう支えるのか
を理解することです。
黒字事業の役割も重要
一方で、黒字事業には重要な役割があります。
例えば、
研修事業
出版事業
受託事業
講師派遣事業
などです。
これらの事業で得た収益によって、赤字になりやすい公益事業を支えることができます。
NPO法人では、
収益事業が公益事業を支える
という構造がよく見られます。
事業別損益は、その仕組みを理解するためにも重要です。
共通経費の配分が課題になる
事業別損益を作成する際に難しいのが共通経費です。
例えば、
事務所家賃
通信費
事務職員給与
などは複数事業で利用されています。
そのため、
利用時間
利用人数
利用面積
など合理的な基準で配分する必要があります。
税理士の判断力が問われる場面です。
経営判断に直結する資料
事業別損益を見ることで、
どの事業を拡大するか
どの事業を見直すか
どこに人材を配置するか
を判断できます。
活動計算書だけでは見えない経営課題が見えてくるのです。
その意味で、事業別損益は経営管理資料として非常に価値があります。
税理士の支援領域は広がる
税理士は決算書を作るだけではありません。
事業別損益を活用し、
収益構造分析
資金配分
事業評価
将来計画
を支援できます。
NPO法人の顧問業務では、こうした経営支援の重要性がますます高まっています。
人生100年時代と社会課題解決
人生100年時代には、高齢化や地域課題への対応がますます必要になります。
NPO法人の役割は今後さらに大きくなるでしょう。
その中で重要なのは、
良い活動を続けること
だけではなく、
継続できる仕組みを持つこと
です。
事業別損益は、その持続可能性を判断するための重要な道具になります。
結論
事業別損益は、NPO法人の活動を事業ごとに分析するための重要な管理資料です。
法人全体の収支だけでは見えない課題や成果を把握することができ、寄付者や助成団体への説明責任にも役立ちます。
また、収益事業と公益事業の関係を理解し、持続可能な運営を実現するためにも欠かせません。
NPO法人会計は単なる記録ではなく、社会的使命を継続するための経営ツールでもあるのです。
次回は、「NPO法人はなぜ活動計算書だけでは評価できないのか 財務分析編」について解説したいと思います。
参考
東京税理士会目黒支部
「NPO法人の会計について」 税理士 脇坂誠也
補助資料「NPO法人の会計について」