付加価値額はどのような順番で計算するのか 計算構造編

税理士
水色 シンプル イラスト ビジネス 解説 はてなブログアイキャッチのコピー - 1

外形標準課税を学ぶ人が最初に戸惑うのは、付加価値額という言葉です。

報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料など、さまざまな数字が登場します。

さらに雇用安定控除額まで加わるため、全体の流れが分からなくなることも少なくありません。

しかし付加価値額の計算は、実は一定の順序に従って組み立てられています。

順番を理解すれば、複雑に見える計算も整理して考えられるようになります。

今回は外形標準課税の中心となる付加価値額の計算構造について解説します。

付加価値額とは何か

付加価値額とは、企業が事業活動を通じて新たに生み出した価値を数値化したものです。

企業は人を雇い、資金を調達し、建物や土地を利用して事業を行います。

そして商品やサービスを提供することで利益を生み出します。

外形標準課税では、こうした企業活動の規模を把握するために付加価値額という考え方を採用しています。

単純な利益だけではなく、人件費や賃借料なども含めて企業の経済活動全体を評価しているのです。

計算の出発点は収益配分額

付加価値額の計算は収益配分額から始まります。

収益配分額は次の3つで構成されます。

報酬給与額

純支払利子

純支払賃借料

これまでのシリーズで解説してきた項目です。

講義資料の事例では、

報酬給与額 19億9,787万7,000円

純支払利子 486万5,000円

純支払賃借料 7,905万6,000円

となっています。

これらを合計した金額が収益配分額になります。

収益配分額は誰に配分されたかを見る

収益配分額という名前には意味があります。

企業が稼いだ価値はさまざまな相手へ配分されます。

従業員には給与として支払われます。

金融機関には利息として支払われます。

地主や家主には賃借料として支払われます。

つまり企業が生み出した価値が、どこへ配分されたのかを示しているのです。

付加価値額の考え方を理解する上で重要な視点です。

単年度損益を加算する理由

収益配分額だけでは企業が生み出した価値の全てを表せません。

なぜなら利益が含まれていないからです。

そこで単年度損益を加算します。

講義資料では、法人税の所得金額等を基礎として算定した単年度損益が18億5,148万8,945円となっています。

企業が生み出した価値は、

従業員へ配分された部分

債権者へ配分された部分

地主へ配分された部分

企業内部に残った利益

の合計であるという考え方です。

付加価値額の計算式

講義資料では、

収益配分額20億8,179万8,000円

プラス

単年度損益18億5,148万8,945円

という計算を行っています。

その結果、

39億3,328万6,945円

が付加価値額となります。

これが外形標準課税における企業の経済活動規模を表す基本的な数値です。

なぜ雇用安定控除があるのか

ここで終わりではありません。

外形標準課税には雇用安定控除額という制度があります。

講義資料では、

報酬給与額

-収益配分額×70%

によって算定しています。

その結果、

5億4,061万8,400円

の雇用安定控除額が計算されています。

これは雇用を重視する企業への配慮という政策的な意味を持っています。

最終的な課税標準額

最終的な付加価値割の課税標準額は、

付加価値額

マイナス

雇用安定控除額

によって求められます。

講義資料では、

39億3,328万6,945円

5億4,061万8,400円

33億9,266万8,545円

となっています。

さらに千円未満切捨てを行い、課税標準額が確定します。

税理士が理解すべき本質

付加価値額の計算を見ていると、外形標準課税が利益課税とは全く異なる制度であることが分かります。

利益だけを見ているわけではありません。

人件費

利息

賃借料

利益

を総合的に見ています。

つまり企業がどれだけの経済活動を行ったのかを評価しているのです。

税理士が制度の本質を理解することで、単なる申告書作成から一歩進んだ説明ができるようになります。

結論

付加価値額は、収益配分額と単年度損益を合計して計算されます。

その後、雇用安定控除額を差し引くことで最終的な課税標準額が決まります。

計算式だけを見ると複雑ですが、「企業が生み出した価値を測る」という考え方で整理すると理解しやすくなります。

外形標準課税の中心はまさにこの付加価値額にあります。

次回は、この計算の中でも特に重要な「雇用安定控除額はなぜ設けられているのか」について詳しく解説します。

参考

近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」

タイトルとURLをコピーしました