外形標準課税の実務を初めて担当した人の多くが驚くのが申告書の複雑さです。
法人税の申告書に慣れている税理士や経理担当者であっても、法人事業税や法人住民税の申告書を前にすると、その様式の多さに戸惑うことがあります。
特に外形標準課税対象法人では、所得割だけではなく付加価値割や資本割の計算も必要になるため、申告書の作成量が一気に増えます。
しかし、第六号様式全体の構造を理解すると、それぞれの別表がどのようにつながっているのかが見えてきます。
今回は外形標準課税の申告書全体の流れを解説します。
第六号様式とは何か
外形標準課税対象法人が提出する中心的な申告書が第六号様式です。
この様式には法人事業税、特別法人事業税、法人住民税の計算結果が集約されます。
法人税の確定申告書が国税の申告書であるのに対し、第六号様式は地方税の申告書です。
そのため提出先は税務署ではなく都道府県となります。
外形標準課税対象法人では、この第六号様式が地方税申告の中心的な役割を果たします。
なぜ別表が多いのか
第六号様式が複雑に見える最大の理由は、多数の別表が存在するためです。
所得割だけであれば法人税の所得金額を基礎に計算できます。
しかし外形標準課税では次のような計算が必要になります。
報酬給与額の計算
純支払利子の計算
純支払賃借料の計算
付加価値額の計算
資本金等の額の計算
分割基準の計算
それぞれの計算結果を別表で集計し、最終的に第六号様式へ転記する仕組みになっています。
つまり、別表は税額計算のための作業用シートのような存在なのです。
申告書作成はどこから始めるのか
初心者がよく陥る失敗は、第六号様式から作成しようとすることです。
実際には逆の順番で進めます。
まず法人税申告書から所得金額を確認します。
次に報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料を計算します。
その後、付加価値額や資本金等の額を算出します。
さらに分割基準を計算し、各都道府県へ按分します。
最後に第六号様式へ集約して税額を確定します。
家を建てるときに基礎工事から始めるのと同じで、申告書も土台となる別表から作成するのが正しい順序です。
法人事業税と特別法人事業税の関係
申告書を見ていると、法人事業税と特別法人事業税が並んで記載されています。
名前が似ているため混同しやすい項目です。
特別法人事業税は法人事業税を基礎として計算される国税的な性格を持つ税目です。
実際の計算では、まず法人事業税額を求め、その税額を基礎として特別法人事業税を算出します。
そのため法人事業税の計算を誤ると、特別法人事業税も連動して誤ることになります。
実務では両者をセットで考える必要があります。
法人住民税とのつながり
法人住民税も第六号様式の中で重要な位置を占めています。
法人住民税の法人税割は、法人税額を基礎として計算されます。
また均等割は資本金や従業者数などによって決定されます。
つまり法人住民税は法人税と地方税の両方の情報を利用して計算される税目なのです。
外形標準課税の申告では、法人事業税だけでなく法人住民税まで含めて全体像を把握しなければなりません。
税理士が最初に確認すべき項目
申告書作成を始める前に確認すべき項目があります。
事業年度
資本金の額
資本金等の額
事業所所在地
従業者数
法人税の所得金額
法人税額
これらの情報がそろわなければ、後続の計算を進めることはできません。
ベテラン税理士ほど、まず基本情報の確認から始めます。
申告実務では計算能力だけでなく、事前準備の正確さが重要なのです。
結論
第六号様式は複雑に見えますが、実際には各別表の計算結果を集約するための総合申告書です。
報酬給与額、純支払利子、純支払賃借料、付加価値額、資本金等の額、分割基準という流れを理解すると全体像が見えてきます。
外形標準課税の実務では、いきなり税額計算を行うのではなく、どの別表から作成するのかという順序の理解が重要です。
次回は付加価値割の中心となる「報酬給与額」の計算について詳しく解説します。
参考
近畿税理士会「税法実務講座(法人税)事業税の外形標準課税対象法人の申告の基礎③ 外形標準課税対象法人の申告書作成の基礎」