相続税の計算において、最も実務的な難易度が高いのが「財産の評価」です。同じ財産であっても評価方法によって金額が大きく変わることがあり、その結果、税額にも直接影響を及ぼします。
本稿では、相続税における評価の基本的な考え方と、主要な財産の評価方法の枠組みを整理します。
相続税における評価の原則
相続税における財産評価の基本は「時価主義」です。
ここでいう時価とは、単なる市場価格ではなく、「不特定多数の当事者間で自由に取引された場合に成立すると認められる価額」とされます。
また、評価時点は原則として相続開始時(被相続人の死亡時)です。
この2点が、すべての評価の出発点となります。
なぜ評価が統一されていないのか
理論上はすべての財産を時価で評価すればよいはずですが、実務では統一的な市場価格が存在しない財産も多くあります。
例えば、
- 土地は個別性が高い
- 非上場株式には市場価格がない
このような理由から、相続税では評価通達に基づく「標準化された評価方法」が用いられています。
土地の評価方法
土地の評価は、相続税実務の中でも最も重要な分野です。
主な評価方法は次の2つです。
路線価方式
市街地においては、道路ごとに設定された路線価を基に評価します。
土地の面積や形状、接道状況などを考慮して補正を行い、評価額を算定します。
倍率方式
路線価が設定されていない地域では、固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて評価します。
土地評価の特徴
土地評価は、次の要素により大きく変動します。
- 立地
- 形状
- 利用状況
したがって、形式的な面積だけでなく、個別事情の反映が重要となります。
建物の評価
建物は、原則として固定資産税評価額に基づいて評価されます。
市場価格とは乖離する場合もありますが、評価の統一性と簡便性が重視されています。
株式の評価
株式の評価は、上場株式と非上場株式で大きく異なります。
上場株式
上場株式は、市場価格を基礎として評価されます。
具体的には、一定期間の株価の平均などを用いる方法が採られています。
非上場株式
非上場株式は市場価格が存在しないため、次のような方法で評価されます。
- 類似業種比準方式
- 純資産価額方式
会社の規模や性質によって評価方法が異なり、複雑な計算が必要となります。
評価と税負担の関係
財産評価は単なる計算ではなく、税負担に直結する重要な要素です。
評価額が高くなれば税額は増加し、低くなれば税額は減少します。
そのため、評価方法の選択や適用は、実務上の重要な判断領域となります。
実務上の重要ポイント
財産評価においては、次の点が重要です。
- 評価時点を正確に把握する
- 評価通達に基づいて計算する
- 個別事情を適切に反映する
- 評価の妥当性を説明できるようにする
特に、税務調査においては評価の合理性が問われるため、根拠の整理が不可欠です。
結論
相続税における財産評価は、
- 時価主義を基本としつつ
- 実務上は標準化された方法を用いる
という二層構造で成り立っています。
評価は税額を決定する最も重要な要素の一つであり、その理解は相続税実務の核心部分といえます。
したがって、評価の仕組みを正しく理解し、適切に適用することが、適正な申告と税負担の判断において不可欠です。
参考
・税務大学校 相続税法(基礎編)令和8年度版