税理士は人的資本経営をどう支援するべきか 経営支援編

税理士

人材不足が深刻化し、働き方が大きく変わる時代を迎えています。

企業は、採用だけでなく、社員の定着や育成、健康づくりまで含めた「人的資本経営」に取り組むことが求められています。

こうした変化の中で、税理士の役割も変わり始めています。

これまでの税理士は、税務申告や決算書の作成を中心に企業を支えてきました。

もちろん、その役割は今後も重要です。

しかし、それだけでは経営者が直面する課題を十分に解決できない時代になっています。

これからの税理士には、数字を通じて企業の未来を支える経営パートナーとしての役割が期待されています。

試算表は人への投資を映す経営資料である

毎月作成する試算表には、多くの経営情報が含まれています。

採用費の増減。

教育研修費の推移。

福利厚生費への投資。

残業代の変化。

外注費の増加。

これらの数字を個別に見るだけでは、本当の経営課題は見えてきません。

人への投資がどのような成果につながっているのかを読み解くことが重要です。

試算表は過去の業績を確認する資料ではなく、人的資本経営の成果を確認し、次の経営判断につなげる資料として活用することができます。

数字を経営の言葉へ翻訳する

経営者は数字だけでは行動を変えられません。

例えば、福利厚生費が増えていても、それが社員の定着率向上につながっているのであれば、単なる費用ではなく将来への投資と考えることができます。

教育費が増えていても、生産性や利益率が改善していれば、その投資には大きな意味があります。

税理士の役割は、数字を説明することではありません。

数字の背景を読み解き、経営者が意思決定できるように伝えることです。

数字を経営の言葉へ翻訳することが、これからの税理士に求められる価値になります。

人的資本への投資を見える化する

人的資本経営では、「人への投資」が成果を生んでいるかを継続的に確認することが重要です。

例えば、

採用費と離職率の推移。

教育研修費と生産性の変化。

福利厚生費と定着率。

残業時間と利益率。

有給休暇取得率と欠勤率。

こうした指標を毎月確認することで、経営者は投資の効果を把握できます。

税理士は、財務データと人材に関するデータを結び付け、経営判断に役立つ情報を提供することができます。

AI時代だからこそ税理士の価値は高まる

生成AIの普及によって、会計処理や税務申告の効率化はさらに進んでいきます。

しかし、AIは数字を集計することはできても、経営者の悩みや組織の課題を理解し、一緒に解決策を考えることはできません。

社員への投資をどのように進めるべきか。

福利厚生をどう見直すべきか。

教育へどれだけ投資すべきか。

こうした経営判断には、人と人との対話が欠かせません。

AIを活用しながら、経営者に寄り添い、数字をもとに未来を一緒に考えることこそ、これからの税理士に求められる役割です。

税理士は企業の未来を支える伴走者になる

税理士は毎月、経営者と継続的に向き合う数少ない専門家です。

その強みを生かせば、税務相談だけでなく、人材育成や福利厚生、健康経営、働き方改革などについても継続的に助言できます。

経営者が安心して相談できる存在になること。

数字から課題を見つけ、改善策を一緒に考えること。

企業の未来を長期的な視点で支えること。

それが、人的資本経営時代に求められる税理士の姿ではないでしょうか。

結論

人的資本経営は、人をコストではなく企業価値を生み出す資本として考える経営です。

その実践には、採用、教育、福利厚生、健康経営、働き方改革など、多くの取り組みが必要になります。

税理士は、それらを数字で見える化し、経営者が適切な判断を行えるよう支援できる専門家です。

AI時代が進むほど、税務処理だけではない税理士の価値が問われます。

数字を経営の言葉へ翻訳し、人への投資が企業の未来をどう変えるのかを経営者とともに考え続けることが、これからの税理士に求められる最も重要な役割ではないでしょうか。

参考

日本経済新聞 2026年6月28日 朝刊

国家公務員に「無給休暇」 理由問わず、時間単位可能 私生活と両立で離職防ぐ

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