老後資金づくりでは、「株式か、それとも預金か」という二択で考えられることが少なくありません。しかし、本来の資産運用では株式・債券・現金を組み合わせることが基本です。
最近では、政府・与野党が個人による国債購入を促進する制度を検討しているという報道がありました。背景には、日本銀行が国債購入を減らしていく中で、新たな買い手として個人に期待する事情があります。
一方で、私たち個人投資家は「政府が勧めているから安心」と考えるのではなく、自分自身の資産形成という視点から冷静に判断する必要があります。
今回は、人生100年時代における国債の役割について考えてみます。
なぜ今、個人向け国債が注目されているのか
日本銀行は長年にわたり大量の国債を購入してきました。
しかし金融政策の正常化に伴い、その購入額は徐々に縮小されています。
その結果、政府としては新たな安定した買い手を増やす必要があります。
そこで注目されているのが個人投資家です。
自民党では相続税の優遇措置、国民民主党ではNISA対象への追加など、さまざまな制度改正案が議論されています。
つまり、国債は単なる金融商品ではなく、日本の財政運営とも深く関係する存在になっているのです。
国債は本当に安全資産なのか
国債は「元本保証」という安心感があります。
日本政府が発行する債券であり、個人向け国債では最低金利も保証されています。
価格変動を気にする必要が少ないため、高齢者にも人気があります。
しかし、「安全」と「利益が出る」は別の話です。
インフレ率より金利が低ければ、お金の価値は実質的に目減りします。
例えば物価が毎年3%上昇し、国債利回りが1%なら、実質的には毎年2%ずつ資産価値が減少していくことになります。
名目上は元本が守られていても、購買力は低下する可能性があるのです。
株式と債券は対立ではなく組み合わせるもの
資産運用では「株か国債か」という考え方ではありません。
重要なのはバランスです。
株式は長期的な資産成長を期待できます。
一方、国債は価格変動を抑え、資産全体の安定性を高める役割があります。
年齢や家族構成、退職時期によって適切な割合は変わります。
若い世代なら株式比率を高める選択もあります。
一方、退職後は生活資金を守るため、債券比率を増やす考え方も合理的です。
世界中の年金基金や機関投資家が株式と債券を組み合わせているのも、この考え方に基づいています。
NISA対象になれば何が変わるのか
現在、NISAでは株式や投資信託などが非課税対象となっています。
国債が対象に加われば、利子に対する税負担を軽減できる可能性があります。
ただし、NISAは本来「貯蓄から投資へ」を促す制度として創設されました。
そのため、元本保証である国債を対象とすることには慎重な意見もあります。
制度が変更されるかどうかは今後の議論次第ですが、投資家にとって選択肢が広がることは間違いありません。
税理士だから伝えたい資産形成の考え方
税理士は税金だけを見る仕事ではありません。
人生100年時代では、お客様の資産全体を長期的な視点で考える伴走者としての役割が求められています。
退職金をどう運用するか。
年金受給まで資産をどう守るか。
相続対策と資産運用をどう両立させるか。
こうした相談では、株式・債券・現金・保険・不動産などを総合的に考える視点が欠かせません。
国債もその選択肢の一つとして理解しておくことが重要です。
結論
国債は「安全だから買う」「政府が勧めているから買う」という商品ではありません。
資産全体のバランスを整え、長期的に安心して生活するための一つの選択肢です。
人生100年時代では、大きく増やす資産と、確実に守る資産の両方を持つことが重要になります。
株式だけでも、預金だけでもなく、それぞれの役割を理解して組み合わせることが、豊かな老後への近道です。
制度改正の議論に注目しながら、自分自身に合った資産配分を考える機会にしてみてはいかがでしょうか。
参考
日本経済新聞(2026年6月28日 朝刊)
国債 個人購入促進を議論 自民、相続税を減税 国民民主はNISA対象に 日銀減額で「受け皿」期待