マイホームの購入は、多くの人にとって人生最大の買い物です。その際、多くの人が住宅ローンを利用しますが、金融機関から提示された「借りられる金額」をそのまま借りてしまうことには注意が必要です。
金融機関が貸してくれる金額と、自分たちが無理なく返済できる金額は必ずしも一致しません。
近年は住宅価格の上昇や超長期住宅ローンの普及により、高額な借り入れがしやすくなっています。しかし、住宅ローンは数十年にわたって家計に影響を与える契約です。
今回は、「借りられる額」と「返せる額」の違いについて考え、住宅購入で後悔しないための家計管理の考え方をご紹介します。
金融機関が見るのは現在の返済能力
住宅ローンの審査では、金融機関はさまざまな項目を確認します。
例えば、
・年収
・勤務先
・勤続年数
・年齢
・他の借入状況
・信用情報
などです。
これらをもとに、「現在の収入で返済できるか」を判断します。
つまり、金融機関が評価しているのは、現時点での返済能力です。
しかし、住宅ローンは35年から50年という長期間に及びます。その間には、家族構成や働き方、健康状態など、多くの変化が起こる可能性があります。
現在の収入だけを基準に借入額を決めることには限界があるのです。
人生には予想できない支出が数多くある
住宅ローンを返済していく間には、さまざまなライフイベントが待っています。
例えば、
・子どもの誕生
・教育費の増加
・車の買い替え
・親の介護
・転職
・病気やけが
・住宅の修繕費
などです。
住宅を購入した後も、固定資産税や火災保険、マンションであれば管理費や修繕積立金など、継続的な支出が発生します。
住宅ローンだけを見て家計を考えるのではなく、人生全体の支出を見据えることが重要です。
家計に余裕があることは大きな安心につながる
住宅ローンの返済額を家計いっぱいまで設定してしまうと、少しの収入減少でも生活が苦しくなります。
一方で、毎月の返済額に余裕があれば、
・急な出費に対応できる
・教育費を計画的に準備できる
・資産形成を続けられる
・転職や独立という選択肢も持てる
など、人生の自由度が大きく高まります。
家計管理では、「返済できること」よりも、「余裕を持って返済できること」が大切なのです。
返済比率だけでは判断できない
住宅ローンでは、「年収に対する返済負担率」が一つの目安とされています。
しかし、同じ年収でも家計の状況は家庭によって大きく異なります。
例えば、
・子どもの人数
・共働きかどうか
・車を所有しているか
・親の介護負担
・教育方針
・老後資金の準備状況
によって、使えるお金は変わります。
そのため、一般的な返済比率だけで借入額を決めるのではなく、自分たちの家計に合った返済計画を立てる必要があります。
住宅ローンと資産形成は両立させるべき
住宅ローンを最優先にすると、老後資金の準備が後回しになることがあります。
一方で、住宅ローンだけでなく、
・生活防衛資金
・新NISA
・iDeCo
・教育資金
なども同時に考えることが重要です。
住宅は大切な資産ですが、それだけが資産ではありません。
金融資産を持つことで、万一の出来事にも対応しやすくなります。
住宅ローンを返済しながら資産形成を続けることが、長期的な家計の安定につながります。
将来の働き方まで考えて借入額を決める
人生100年時代では、働き方も多様化しています。
定年延長や再雇用、副業、独立など、働き方は人それぞれです。
住宅ローンは、その働き方の自由を奪うものであってはいけません。
返済負担が重すぎると、
「収入が下がる転職はできない」
「体調が悪くても仕事を辞められない」
という状況になりかねません。
住宅ローンは人生を豊かにするための手段であり、人生を縛るものではないのです。
住宅購入は安心を買うという考え方
家を購入する目的は、安心して暮らせる住まいを手に入れることです。
もし住宅ローンの返済に追われる毎日になれば、本来得られるはずだった安心は失われてしまいます。
少し予算を抑えた住宅を選ぶことや、頭金を増やして借入額を減らすことも、立派な選択肢です。
住宅の広さや設備だけでなく、将来の安心まで含めて住まいを選ぶことが、満足度の高い住宅購入につながります。
結論
住宅ローンを組むときに最も重要なのは、「いくら借りられるか」ではなく、「いくらなら安心して返し続けられるか」という視点です。
金融機関の審査は現在の返済能力を基準にしていますが、実際の返済は数十年にわたり、人生にはさまざまな変化が訪れます。その変化に対応できる余裕を持った借入額を選ぶことが、家計を守る最大のポイントです。
住宅は人生を豊かにするための大切な資産です。しかし、その住宅が家計を圧迫してしまっては本末転倒です。
「借りられる額」ではなく、「返せる額」を基準に考えること。それが、人生100年時代の住宅購入で後悔しないための、最も大切な家計管理の考え方ではないでしょうか。
参考
日本経済新聞(2026年7月4日 朝刊)
住宅ローン、「超長期」拡大 総利息多く、家計にリスク